統計
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スマートフォン位置情報サービスや通信記録を利用して個人の地理的な動きや人々の接触状況を把握するもの、電子マネークレジットカードによる取引を記録するもの、ソーシャル・ネットワーキング・サービスでの行動履歴を追跡するものなどがある。[17]

すでに存在する統計を利用、加工して作る二次的な統計のことを加工統計または二次統計という。種々の経済統計をもとにした経済指標や国民経済計算などがこれにあたる。これに対して、加工統計のもとになる、直接の調査や業務記録の集計による統計は、一次統計と呼ばれる。[補論]第一義統計/第二義統計と一次統計/二次統計はそれぞれ別の基準による分類なので、混同してはならない。たとえば業務統計は第二義統計であり、かつ一次統計である。(松井博『公的統計の体系と見方』[12] pp. 11-12参照。)
全数と標本

対象となる集団の個体(個人、企業、各種団体など)のすべてから情報を得て作成する統計を全数統計と呼ぶ。これに対し、一部の個体だけを抽出した標本についての情報から全体(母集団)の統計量を推定するのが標本統計である。前者は大規模で時間と費用がかかることから、経常的に実施することはできない。それに対して、後者は小さい規模で済むので、時間と費用の点で有利であり、たいていの統計は後者の方法で作られる。とはいうものの、代表性のある標本を抽出して精確な推定をおこなうには、相当の技術力を備えた人材と彼らを適切に配置した組織が必要であり、そうした人材と組織を育てて維持するにはやはり時間と費用が必要である。

全数統計をセンサス (census) と呼ぶことが多い。ただし、注意が必要なのは、この語はもともとラテン語から派生して全数人口調査すなわち「国勢調査」を指していたのがその後に意味を拡張してきたものであり、文脈によって異なる範囲を指して使われるということである。大規模な標本調査を「センサス」と呼ぶ場合[18]もあり、これはしばしば誤りとして指弾される[12]。全数を対象とする業務統計あるいはレジスターベースの統計を「センサス」と呼ぶかどうかも、議論になりうる。

標本統計の場合、その規模が相対的に大きいか小さいかによって、とられる方法がずいぶんちがうことになる。

また、一部の属性の個体(たとえば小規模な企業など)を排除しても結果がたいして影響を受けないとの見込みがある場合、これらの個体をのぞいた調査をおこなうことがある。このような調査を裾切調査と呼ぶ。
経常調査と周期調査

一回きりの統計もあるが、多くの統計は、時間による変動をみるために、同一の内容で測定時点を変えて繰り返し作成される。統計を作成するための調査を毎月とか毎年とかいった短い期間で繰り返す場合を経常調査、数年などの長い期間を空けての繰り返しである場合を周期調査ということがある[12]
公的統計

政府その他の公的機関が作成する統計を公的統計という。強制力をもって情報収集をおこない、その結果によって、その社会の現実の姿の正確な認識をあたえるという公共財的な性質を持つ。対象者からの協力がえやすく、作成過程の透明性が確保されているなどの理由で、高い信頼性と権威をえていることが多い。また、連続性を考慮した統計作成がなされることが多いために時系列的な分析に適しており、定期性、速報性にも優れる。

一方で、社会の変化への対応は鈍い。調査項目の改正などには時間がかかり、新規調査を新しく始めることは簡単にはできない。特に新たな分野に対しては調査の遅れや、調査しても対象の捕捉が満足にできないなど、不十分なものにもなりやすい。
統計作成機構

各国の公的統計のシステムは、各国の歴史的な事情に応じて発達してきたため、その内容には幅広いバリエーションがみられる。

各国中央政府での統計を作成・管理する仕組み(中央統計機構)をみると、各部署がその担当業務に関連する統計を作成するかたちで統計作成を分担している場合がある。このような公的統計システムを分散型と呼ぶ。一方で、統計専門の部署(「中央統計局」などの名前で呼ばれる)がその国の公的統計のほとんどを自ら作成する場合もある。このような統計システムは集中型である。[12]

米国日本は分散型で英国フランスドイツカナダなどは集中型だ、とよくいわれる。もっとも、各部署が完全にばらばらに統計を作っているとか、逆に中央統計局がすべての統計を取り仕切っているというような国は実在しない。「分散型」「集中型」はいわば理念型であって、実際に存在する各国の統計作成機構がこのような2類型にわかれているわけではなく、中央統計局への集中度が相対的に高いか低いかということによって連続的に分布していると考えたほうがよい。[19]

各国の統計作成機構の特徴をつかむもう一つの観点は、中央と地方との関係である。国土がある程度以上の広さである場合、各地で統計作成の実務を担当する地方統計機構がどのように構成されており、首都におかれた中央統計機構とどのような関係にあるのかが問題になる。

ひとつの類型は、中央政府が各地に直接管轄する統計担当の部署(たとえば中央統計局の支局)を持っており、それを通じて各地での調査等をおこなう場合である(例:米国)。もうひとつは、地方政府の統計担当部署が全国調査などを請け負って実施する体制であるが、その場合、調査の内容や方法を決める権限を中央政府が独占している(例:日本)か、それとも地方政府にも発言権がある(例:ドイツ)のか、ということによるちがいが出てくることになる。[19]

また、政府の外に存在する統計家やその組織、さらに国際機関との間でどのような関係を持っているかということも、その国の公的統計の性質を決める重要な要素でありうる。[19]
公的統計の二次利用

統計は、その作成目的のために使用することが原則である。とはいえ、集めたデータ、それもできる限り「生」に近いものを他の目的での分析に使いたいという要求は、従来から存在する。安価で高性能なコンピュータが普及するにしたがって、そうした要求が強まってきた。そのなかには、政府内での政策立案から民間企業の商業利用まで、公益性とリスクを異にする種々のケースがある。一方で、統計にふくまれる個人等の秘密を保護することも重要である。とりわけ、罰則をもって強制的に情報を収集する公的統計の場合は、対象者の権利を侵害する可能性を最小にすることが特に要請される。このような制約を意識しながら、統計データを有効かつ安全に利用する方法が模索されてきた。[16]
民間統計

政府以外のさまざまな団体や企業、研究機関なども統計を作っている。政府が作成する公的統計とは異なり、情報収集にあたって強制力をともなわず、また管理機構の長期的な安定性を欠いていることが多い。一方で、何について情報を集めるかについての柔軟性が高いため、社会の変化に対する反応は早く、政府が調査しない事柄についてもいち早く数字で把握することができる。また事実上業界標準となっているような統計や、それを使用した定評ある指標のある場合も存在する。
現代的課題
社会の変化への対応
社会・経済情勢の変化のスピードが速くなってきているため、国の統計は変化への対応が遅く、業界団体の統計では詳細な分析が行えないという様に、現状の正確な把握ができなくなってきている。特に
第三次産業でこの傾向が強い。
調査対象の意識の変化への対応
近代化とともにプライバシーの意識が高まる。さらに今日では、個人情報保護の要求が急速に広まり、個人を対象とする調査がおこないづらくなってきた。そのような状況では、法的に回答の義務を課す公的統計調査においても、調査への非協力は無視できない規模になる。1980年代のドイツオランダでは、国勢調査が実施できなくなる事態が生じた[20]。企業においても、自社の情報を出したくないという防衛意識はあり、個人の調査拒否と同様の事態が生じる


日本の公的統計

日本の公的統計を支える中央統計機構は、分散の度合いが国際的にみて非常に高い[19][21]。ただし、近代化の初期から政府内に存在した統計局とその前身組織は、日本の公的統計整備において中心的な役割を果たしてきた。1946年に内閣の行政委員会として設置された統計委員会(現在の統計委員会とは別のもの)と翌年の旧統計法成立以来、70年以上を経た現在の日本の公的統計は、分散型の特徴は維持しているものの、中心を占める総務省統計局と統計委員会の比重を高めており、また統計業務の集約化を進めることで効率を高めている。

社会情勢の変化により個人情報保護の重視と統計業務の効率化徹底を目的として2007年(平成19年)に「統計法」の全部改正が行われた。新統計法(平成19年法律第五十三号)は公的統計を「国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報である」(第1条) と位置づけ直し、個人情報等の保護に留意しつつ、行政目的以外の利用もふくめ、広く活用できる環境整備を目指している。「日本の公的統計制度」および「日本の公的統計制度の歴史」を参照「統計法」、「統計委員会」、「基幹統計調査」、「統計局」、「統計センター」、「政府統計共同利用システム」、「統計学の歴史#日本で実施された統計調査」、「統計局#沿革」、および「国勢調査_(日本)#歴史」も参照
出典[脚注の使い方]^ 国立社会保障・人口問題研究所『人口統計資料集』〈人口問題研究資料 第346号〉2023年。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISSN 13475428。


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