統合失調症
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統合失調症では、脳形態の持続的変化とともに睡眠にもノンレム睡眠の欠如といった変化が生じ、不眠治療は難渋しやすい[52]。統合失調症の症状の一つである場合と、統合失調症とは独立した不眠症を併発している場合が考えられる[53]

パニック発作:統合失調症者はパニック障害に類似のパニック発作が起こることがある[54][55]。治療法はパニック障害に準じる[56]

連合弛緩:思考が脈絡なく飛躍する。これが進行すると「ワードサラダ」となる[57]連想が弱くなり、話の内容が度々変化してしまう。単語には連合があり、これをわかりやすく言えば、単語の意味とその関係にはグループ(連合)がある。連合弛緩は、この連合が弛緩する事で全く関係のない単語を連想してしまう。しかし、落語にあるようなダジャレは連合弛緩ではない。連合弛緩は、言葉の連想と関係を無視する場合がある。

両価性:相矛盾した心的内容を同時に持つこと[58]

独言・独笑:幻聴や妄想の世界での会話である。原因には、長年にわたる投薬の影響で、認知機能が低下するとの説もある[59]

砂糖の過剰摂取:統合失調症者は清涼飲料水を大量に飲むなど、砂糖を好むことが知られている[60]

多飲症・水中毒:過剰の水分摂取とそれにより生じる中毒[61]。著しい場合には1日に10リットル以上の水分を摂る[61]

原因fMRIやその他の脳機能イメージング技術は統合失調症患者の脳活動のイメージを表すことができる。このイメージはfMRIによってワーキングメモリの脳活動の様子を表している。詳細は「統合失調症の原因」を参照

発病メカニズムは不明であり、明確な病因は未だに確定されておらず、いずれの報告も仮説の域を出ない。仮説は何百という多岐に及ぶため、特定的な原因の究明がきわめて困難であり、今日の精神医学・脳科学の発達上の限界・壁となっている。現在の精神医学主流の仮説として、神経伝達物質ドーパミンの過不足による認知機能不全を原因とする説が有力である。

根本的な原因は不明ではあるが、遺伝と環境の複合要因と考えられている[60]。遺伝の影響度は研究によって異なるが、双子を用いた研究のメタ分析では遺伝率が81%と報告されている[62]。また、双生児法による研究によると、一卵性双生児のうちの一方が統合失調症に罹ると、もう一方も統合失調症に罹る確率は、50%であるという報告がある[63]

生物学的な因子としては、妄想および幻覚症状は脳内の神経伝達物質の化学的不均衡であるという仮説が提唱されている。主にドーパミン拮抗薬である抗精神病薬の適量の投与によって、症状の抑制が可能であるとする理論であるが、大きな成功をおさめている仮説であるとまでは言えない。

環境要因としては、心理社会的なストレスなど環境因子の相互作用が発症の発端になると予想されている。心理社会的な因子としては、「ダブルバインド」や「HEE(高い感情表出家族)」などが注目されている。家庭や学校が、歪んでいたりして、本人の意思や努力ではどうにもならないところで、不本意な想いをしていることが多く、それが発病のきっかけになっていることもよくあるという[64]

2019年、東京大学大学院医学系研究科分子細胞生物学専攻の廣川信隆特任教授らのチームが、神経細胞のキネシン分子モーターKIF3Bの異常が統合失調症の原因とみられると発表した[65]。2021年、東京都医学総合研究所などの研究グループが、思春期に砂糖を過剰摂取すると、脳の毛細血管の炎症により神経細胞のグルコースの取り込みを低下させ、統合失調症などの精神疾患の原因となる可能性を発表した[60]
検査
心理検査
PANSS
PANSS(Positive and Negative Syndrome Scale
陽性・陰性症状評価尺度[66]は、30項目の異なる精神症状につき、1点から7点までの得点をつける。最低点は30点、最高点は210点。
陽性尺度
7項目 - 妄想・概念の統合障害・幻覚による行動・興奮・誇大性・猜疑心 ・敵意
陰性尺度
7項目 - 情動の平板化・情動的ひきこもり・疎通性の障害・受動性意欲低下による社会的ひきこもり・抽象的思考の困難・会話の自発性と流暢さの欠如・常同的思考
総合精神病理評価尺度
16項目 - 不安・罪責感・緊張・衒奇症[注釈 15]と不自然な姿勢・抑うつ・運動減退・非協調性・不自然な思考内容・失見当識・注意の障害・判断力と病識の欠如・意志の障害・衝動性の調節障害・没入性・自主的な社会回避
BACS
BACS(The Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia、統合失調症認知機能簡易評価尺度)は、言語性記憶、ワーキング・メモリ(作動記憶)、運動機能、注意、言語流暢性、および遂行機能を評価する検査で構成される認知機能評価尺度である[68]
生理的検査
血液検査
血液検査は患者の血液採取をし、薬物投与による肝機能の衰えなど(ALT (GPT)など)の副作用の有無を検査するために行う。通常の場合は3か月程度の間隔で行われる。内分泌物質(ホルモン)や電解質の異常、糖尿病の形跡、低血糖症栄養失調の診断にも生かされ、より正確な診断がなされる。外部委託先にビタミンミネラル類の検査項目も追加できるが、そのような依頼は極めてまれである[69]
CT・MRI検査
CTMRI検査にて、側頭葉頭頂葉灰白質の体積の減少を認める場合がある。白質の体積は減少していない。人間間でも脳体積は少なくとも10%は異なるため、一度の体積測定で判定することはできない。脳体積の減少は長期的な話である。また、抗精神病薬が脳体積を減少させることも知られている[70][71][72][73][74][75]。「抗精神病薬#副作用」も参照
SPECTによる検査
SPECTにて、課題遂行中や会話時に通常見られる前頭前野の血流増加が少ないという報告がある。
プレパルス抑制試験
プレパルス抑制(英語版)を参照。
遺伝子検査
遺伝子性の疾患を特定するためのツールとしてDNAシークエンシングがある。
尿検査
国内の精神科において尿検査を行うことはない。ピロール尿症におけるクリプトピロールや違法薬物の使用有無を調査することができるが、臨床試験的に尿を検査することがごく稀にある。生化学研究設備があればクリプトピロールなどの化学物質を判別できるが、そのような精神科医療機関は国内には存在しない。
NIRS脳計測装置・光トポグラフィー検査
NIRS脳計測装置光トポグラフィー検査により、問診と同時に脳内の血流量を赤外線により測定する。統合失調症、うつ病双極性障害の判断材料になる可能性がある研究中の検査手法である。日本では僅かだが実施しており、最先進医療の分野である。補助診断としてデータを見るものの、信頼性は未だ低く、「高価なおもちゃ(原文ママ)」の域を出ていない[76][77]
診断・分類

生物学的指標は存在せず[78]、現在の診断は患者の心理症候に依存している[25]


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