統合失調症
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生物学的指標は存在せず[78]、現在の診断は患者の心理症候に依存している[25]。精神科の病気の診断に最も重視される方法は、患者の体験を言葉で語ってもらうことによる問診である[79]が、同時に他の疾患との鑑別のため、各種の血液検査や生理検査が行われる。長時間に渡る問診と共に、エビデンスすなわち科学的な根拠を基とする判断の上で、精神科医は正確な統合失調症の症状を診断しなければならない。精神医学は数字で測れる指標は少ないが、主要な精神疾患については症状や経過の詳細がわかれば通常の診断能力を持つ精神科医にとって、正確に診断することは困難なものではなく、誤診も一般に思われているよりはるかに少ないとしている[80]
診断基準

ICD-10での診断基準[81]DSM-IV-TRでの診断基準[81]


(1) 下記の症状が、1カ月以上続いてみられる。次のうち1項目以上(明白でなければ2項目以上)

(a) 考想反響、考想吹入、考想奪取、考想伝播、自他の境界が敏感で曖昧になる境界障害

(b) 他者から支配され、影響され、服従させられているという妄想で、身体、手足の動き、思考、行為、感覚に関連していること、および妄想知覚

(c) 患者の行動を注釈し続ける幻声

(d) 不適切でまったくありえないような持続的妄想


(2) あるいは、次の2項目以上

(a) あらゆるタイプの頑固な幻覚:浮動性または未完成の妄想や優格観念(感情に強く裏づけられた観念で、その人の思考や行動を持続的に支配するもの)を伴っていたり、数週または数カ月以上、毎日続くことがある。

(b) 思考連合の途絶や改ざん(滅裂思考、的はずれ会話、新語造成)

(c) 緊張病性の行動(興奮、蝋屈症、拒絶症、緘黙症、昏迷など)

(d) 陰性症状(著しい無感情、会話の貧困、感情反応の鈍化・不調和、通常は社会的引きこもりや社会的活動の低下を伴う):うつ病や神経遮断薬によらないことが明瞭なもの。

(e) 人格行動にみられる明らかな、持続性の質的変化(関心の喪失、無目的、無為、社会的な引きこもり)



(A) 以下の2つ以上が各1か月以上(治療が成功した場合は短い)いつも存在する。
妄想

幻覚

解体した会話

ひどく解体した行動(例:不適切な服装、頻繁に泣く)、または、緊張病性の行動

陰性症状


社会的または職業的機能の低下

(B) 障害の始まり以降の期間の大部分で、仕事、対人関係、自己管理などの面で1つ以上の機能のレベルが病前に獲得していた水準より著しく低下している(または、小児期や青年期の発症の場合、期待される対人的、学業的、職業的水準にまで達しない)。

(C) 障害の持続的な徴候が少なくとも6カ月間存在する。この6カ月の期間には、基準Aを満たす各症状(すなわち、活動期の症状)は少なくとも1カ月(または、治療が成功した場合はより短い期間)存在しなければならないが、前駆期または残遺期の症状の存在する期間を含んでもよい。これらの前駆期または残遺期の期間では、障害の徴候は陰性症状のみか、もしくは基準Aにあげられた症状の2つまたはそれ以上が弱められた形(例:奇妙な信念、異常な知覚体験)で表されることがある。

(D) 統合失調感情障害と、「抑うつ障害または双極性障害、精神病性の特徴を伴う」が以下の理由で除外されていること
活動期の症状と同時に、抑うつエピソード、躁病エピソードが発症していない

活動期の症状中に気分エピソードが発症していた場合、その持続期間の合計は、疾病の活動期および残遺期の持続期間の合計の半分に満たない。


(E) その障害は、物質(例:乱用薬物、医薬品)または他の医学的疾患の生理学的作用によるものではない。

(F) 自閉スペクトラム症や小児期発症のコミュニケーション症の病歴があれば、統合失調症の追加診断は、顕著な幻覚や妄想が、その他の統合失調症の診断の必須症状に加えて少なくとも1カ月(または、治療が成功した場合はより短い)存在する場合にのみ与えられる。


下位分類下位分類のフローチャート

分類はICD-10により[82][83][注釈 16]、「妄想型」「破瓜型」「緊張型」の3つが代表的である[84]
妄想型統合失調症 (ICD-10 F20.0 Paranoid schizophrenia)
連合障害や自閉などの基礎症状が目立たず妄想・幻覚が症状の中心である。統合失調症はかつて早発性痴呆症と呼ばれていたように早発(思春期から青年期)することが多いが、当該亜型は30代以降の比較的遅い発症が特徴的であるとされる。薬物療法に比較的感応的とされるが、抗精神病薬の服薬をしても精神症状がとれず慢性的に持続する症例もある。
破瓜型統合失調症 (ICD-10 F20.1 Disorganized schizophrenia)
破瓜型(Hebephrenia)[注釈 17]は思春期や青年期に好発とされる。感情や意志の鈍麻が主症状で慢性に経過し、人格荒廃に陥りやすい[85]。今日では破瓜型は社会的・精神医学的な発達の結果として、比較的軽症な程度ですみ、人格のまとまりを保持する症例が報告されるようになってきている。アメリカ精神医学では、破瓜型のことを「解体型(Disorganized)」と呼んでいる。
緊張型統合失調症 (ICD-10 F20.2 Catatonia schizophrenia)
筋肉の硬直症状が特異的で興奮・昏迷などの症状を呈する。陽性症状時には不自然な姿勢で静止したまま不動となったり、逆に無目的の動作を繰り返したりする。近年では比較的その発症数は減少したと言われる場合がある。
型分類困難な統合失調症 (ICD-10 F20.3 Undifferentiated schizophrenia)
一般的な基準を満たしてはいるが、妄想型、破瓜型、緊張型のどの亜型にも当てはまらないか、二つ以上の亜型の特徴を示す状態。
統合失調症後抑うつ (ICD-10 F20.4 Post-schizophrenic depression)
急性期の後に出現することが多く、自殺などを招くことがある。急性期を脱した20%から50%に出現する[86]。治療法は、うつ病にほぼ準じる。
残遺型統合失調症 (ICD-10 F20.5 Residual schizophrenia)
陰性症状が1年以上持続したもの。陽性症状はないかあっても弱い。他の病型の後に見られる急性期症状が消失した後の安定した状態である。
単純型統合失調症 (ICD-10 F20.6 Simple schizophrenia)
連合障害、自閉などの基礎症状が主要な症状で、妄想・幻覚はないかわずかである。破瓜型の亜型に含めるケースもあるが、破瓜型に比べ内省的で病識の欠如がまれであるとされる。
その他の統合失調症 (ICD-10 F20.8 Other schizophrenia)
その他の統合失調症は医療診断を示すために使用することができない。その他の統合失調症には、F20.81(Schizophreniform disorder)とF20.89(Other schizophrenia)の2種のコードが含まれる[87]。遅発性統合失調症、体感症性統合失調症、統合失調様状態、急性統合失調症性エピソードの4つの下位分類がある[88]。短期統合失調症様障害(F23.2)は除外される[89]

この節の加筆が望まれています。

統合失調症,詳細不明 (ICD-10 F20.9 Schizophrenia, unspecified)
統合失調症、特定不能のもの。モレル・クレペリン病、統合失調症の2つの下位分類がある[90]

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経過分類

第5桁の数字(F20.XYのY)は、経過分類に用いる[91]

第5桁の数字経過
0持続性
1エピソード性[注釈 18]の経過で進行性の欠陥をともなうもの
2エピソード性の経過で固定した欠陥をともなうもの
3エピソード性の経過で寛解しているもの
4不完全寛解
5完全寛解
8その他
9観察期間が1年未満
出典:[91]

先進事例

先進的な医療、研究事例として統合失調症の判別に光トポグラフィー脳SPECTなどの装置による画像診断をおこなうことがある[93][94][95]
鑑別疾患

以下の疾患を除外する[81]

てんかん

中枢神経系腫 (特に前頭葉・大脳辺縁系)

中枢神経系外傷

中枢神経系感染(特にマラリアや他の寄生虫性疾患、神経梅毒ヘルペス脳炎

脳血管発作

そのほかの中枢神経系疾患(白質萎縮、ハンチントン病ウィルソン病全身性エリテマトーデスなど)

急性一過性の精神病

情動障害

妄想性障害

統合失調感情障害気分障害

物質乱用、投薬による症状、一般身体疾患

広汎性発達障害[注釈 19]

前述におけるプレパルス抑制およびびっくり病、さらには糖尿病低血糖症と差異を見出さなければならない。抗NMDA受容体抗体脳炎も2007年に提唱された比較的新しく発見された疾患であるが、NMDA受容体機能低下による統合失調症と共通病態と考えられるため、鑑別が必要である[97]


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