統合失調症
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幻覚 (Hallucination) とは、実在しない知覚情報を体験する症状[42][43]。以下のものがある。

幻聴 (auditory hallucination):聴覚の幻覚[注釈 13]

幻視 (visual hallucination):視覚性の幻覚

幻嗅 (olfactory hallucination):嗅覚の幻覚

幻味 (gustatory hallucination):味覚の幻覚

体感幻覚 (cenesthesic hallucination):体性感覚の幻覚

統合失調症では幻聴が多くみられる一方[43]、幻視は極めてまれである[44]。幻聴は、人によっては親切・丁寧であることもあるが、多くの場合はしばしば悪言の内容を持つ[43]

幻覚を体験する本人は、外部から知覚情報が入っていると感じるため、実際に知覚を発生する人物や発生源が存在すると考えやすく[43]、これらの幻覚の症状を説明するために、患者は妄想を形成しているのである。幻嗅、幻味などは被毒妄想に結びつくことがある。また、患者が嫌がらせや迫害を受けているなどと訴える例もある[43]

統合失調症以外の疾患(せん妄てんかんナルコレプシー気分障害認知症など)、あるいは特殊な状況(断眠、感覚遮断薬物中毒など)におかれた健常者でも幻覚がみられることがある[44]

体感症(英語版):体感幻覚に類似するが、その異常感が常態ではみられない奇妙な性状のものであることをよくわきまえている点で、他のさまざまな体感幻覚とは異なる。

知覚過敏:音や匂いに敏感になる。光がとても眩しく感じる。

知覚変容発作:発作的な視覚的な変容を特徴とし、患者自身が発作であると認識していることが多い[46]。抗精神病薬の副作用からくる。

自我意識の障害当事者の自宅

自己と他者を区別することの障害である。自生思考や作為体験など、思考や行動における能動感と自他境界感の喪失がみられる。一説に自己モニタリング機能(英語版)の障害と言われている[47]。すなわち、自己モニタリング機能が正常に作動している人であれば、空想時などに自己の脳の中で生じる内的な発声を外部からの音声だと知覚することはないが、この機能が障害されている場合、外部からの音声だと知覚して幻聴が生じることになる。音声に限らず、内的な思考を他者の考えと捉えると考想伝播につながり、さらには「考えが盗聴される」などという被害妄想、関係妄想につながることになる。

考想操作(思考操作):他人の考えが入ってくると感じる。世の中には自分を容易に操作できる者がいる、心理的に操られている、と感じる。進むと、テレパシーで操作されていると感じる。

考想奪取(思考奪取):自分の考えが他人に奪われていると感じる。自分の考えが何らかの力により奪われていると感じる。世の中には自らの考えがヒントになり、もっといい考えを出すものもいると感じる。進むと、脳に直接力がおよび考えが奪われていると感じる。

考想伝播(思考伝播):自分の考えが他人に伝わっていると感じる。世の中には洞察力の優れたものがいると感じる。その人に対して敏感になっている。進むとテレパシーを発信していると感じる。

自生思考(思考即迫):常に頭の中に何らかの思考があり、うつ病患者の症例に多い「観念奔逸」と似て、思考がどんどん湧いてくる、思考が自らの意志でもっても抑えられない特有な思考の苦痛な異常状態をいう。これは、統合失調症の陽性症状の中でも最も深刻で重要な精神症状であるとされる。程度が重い患者では、頭の中が不自然な思考の熱状態で気がめいり、頭の中がとても騒がしく落ち着かないと訴え思えるような心理状態になる。

考想察知(思考察知):自分の考えは他人に知られていると感じる。世の中には自分の考えを言動から読めるものがいると感じる。進むと、自分は考えを知られてしまう特別な存在と感じる。自らのプライドを高く実際を認められずに、被害的にとらえてしまう。進むと、考想が自己と他者との間でテレパシーのように交信できるようになったと考え、波長が一致していると感じる。

強迫思考:自生思考と類似して、ある考えを考えないと気が済まない、考えたくもない、あってはならない考えが不自然に浮かび上がり、他人に考えさせられていると感じられるような尋常ではない状態をいう。中には、読書をする際に、「この部分を何回読まないと頭に記憶されない、覚えられない」といった内容の不合理な思考が瞬間的および随伴的に浮かぶ「文字強迫」などの症状が表面化されることもある。統合失調症の患者の中には、こうした強迫性障害[注釈 14]を発病当初から慢性的に同時に併せ持つ型の人もいるとされる。

作為体験:自分が外部の力によって考えさせられたり、支配されたりするように感じる[48]

離人症

行動や思考の変化

行動が無秩序かつ予測不可能となる[43]

興奮:妄想などにより有頂天になっている[43]。意味もなく叫ぶ[43]。また自分が神か神に近きものまたは天才と思い一種の極限状況にある場合もある。

昏迷:意識障害なしに何の言動もなく、外部からの刺激や要求にさえ反応しない状態。表情や姿態が冷たく硬質な上、周囲との接触を拒絶反抗的であったり(拒絶症)、終始無言であったり(無言症)、不自然な同じ姿勢をいつまでも続ける(常同姿態〈カタレプシー〉)[49]

拒食

陰性症状

陰性症状 (Negative symptoms) とは、エネルギーの低下からおこる症状で、おおよそ消耗期に生じる。無表情、感情的アパシー、活動低下、会話の鈍化、社会的ひきこもり自傷行為などがある[8][43][50]

陰性症状は、初回発症エピソードから数年以上継続しうる[43]。患者はこれらの陰性エピソードのために、家族や友人との関係にトラブルを招きやすい[43]
感情の障害

感情鈍麻:感情が平板化し、外部に現れない。

疎通性の障害:他人との心の通じあいがない。

カタレプシー:受動的にとらされた姿勢をとりつづける。

緘黙:まったく口をきかない。

拒絶:面会を拒否する。

自閉:自己の内界に閉じ込もる。

思考の障害

常同的思考:無意味な思考にこだわり続けている。興味の対象が少数に限定されている。

抽象的思考の困難:物事を分類したり一般化することが困難である。問題解決においてかたくなで自己中心的となる。

意志・欲望の障害

自発性の低下:自分ひとりでは何もしようとせず、家事や身の回りのことにも自発性がない。

意欲低下:頭ではわかっていても行動に移せず、行動に移しても長続きしない。

無関心:世の中のこと、家族や友人のことなどにも無関心でよく知らない。

引きこもり:外出意欲が低下する
[43]

その他の症状

認知機能障害:統合失調症の中核をなす基礎的な障害である。クレペリンやブロイラーなどの当該疾患の定義の時代(1900年ごろ)より、統合失調症に特異的な症状群として最も注目されていた。認知機能とは、記憶力・集中力注意などの基本的な知的能力から、計画・思考・判断・実行・問題解決などの複雑な知的能力をいう。認知機能が障害されるため、社会活動全般に支障を来たす。疾患概念より障害概念に近いものとして理解されている。この障害ゆえに、作業能力の低下、臨機応変な対処の困難、経験に基づく問題解決の困難、新しい環境に慣れにくいことがあり、また、発達障害患者の代表的な症状の一つとされるディスレクシア(読字障害、難読症)と似ている。判断力・理解力・注意力の低下・散漫さから、本・文章・文字を理解して目で追って黙読したり、記憶・暗記したりすることが困難になる。しばしば、読書が普通にできない。本・文章・文字を読んだ時に、そこに書かれている内容が一見し、ちらりと目で認知はできるが、本を読んでも全く頭に内容が入ってこない。味わい咀嚼しながら理解・認識ができないなどと訴えるなど、社会生活上多くの困難を伴い、長期のリハビリテーションが必要となる。統合失調症が、慢性の脳細胞の機能性疾患・障害であると言われるのはこのためである。

感情の障害:不安感、緊張感、焦燥感、挑戦的行動[51]が生じる。自分には解決するのが非常に難しい問題が沢山あるなどの理由から、抑うつ、不安になっていることもある。抑うつは現状、将来を悲観するという場合や病名から来る自分のイメージ、他者である健常者や同じ心の病を持つ者との比較からくる場合がある。一般的に、統合失調症の患者の中には、理性および感情面で、敏感と鈍感の共存状態に陥る例が多く認められると言われる。何でもできる気分になる、万能感がある、お金遣いが荒くなる、睡眠時間が少なくなる、躁状態になることがある。

不眠:統合失調症では83%が不眠症状をきたし、再発の兆候として最も見られる症状である[52]。統合失調症では、脳形態の持続的変化とともに睡眠にもノンレム睡眠の欠如といった変化が生じ、不眠治療は難渋しやすい[52]


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