統合失調症
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集中能力の喪失:テレビを視聴したり、新聞記事を読むことが困難となる[43]

思考内容の障害(妄想)

妄想 (Delusions) とは、客観的に見て物理的にありえないことを事実だと完全に信じていること[42][43]。以下のように分類される。

被害妄想:「近所の住民に嫌がらせをされる」「通行人がすれ違いざまに自分に悪口を言う」「自分の体臭を他人が悪臭だと感じている」などと思い込む[43]

関係妄想:周囲の出来事を全て自分に関係付けて考える。「あれは悪意の仄(ほの)めかしだ」「自分がある行動をするたびに他人が攻撃をしてくる」などと思い込む。

注察妄想:常に誰かに見張られていると思い込む[43]。「近隣住民が常に自分を見張っている」「盗聴器で盗聴されている」「思考盗聴されている」「カメラで監視されている」などと思い込む[44]

追跡妄想:誰かに追われていると思い込む[43]

微小妄想:自分を実際より低く評価し、劣っていると思い込む[45]

心気妄想:重い体の病気にかかっていると思い込む[45]

罪業妄想:過去に大きな罪を犯したと思い込む[45]

貧困妄想:経済的に困っていると思い込む[45]

誇大妄想:自分は実際の状態よりも、遥かに裕福だ、偉大だ、などと思い込む。

宗教妄想:自分は神だ、などと思い込む。

嫉妬妄想:配偶者や恋人が不貞を行っていると思い込む。

恋愛妄想:異性に愛されていると思い込む。仕事で接する相手(自分の元を訪れるクライアントなど)が、好意を持っていると思い込む場合もある。

血統妄想:自分は貴人の隠し子だ、などと思い込む。

家族否認妄想:自分の家族は本当の家族ではないと思い込む。

被毒妄想:飲食物に毒が入っていると思い込む[43]

物理的被影響妄想:ビーム光線で攻撃されている、などと思いこむ。

妄想気分:周りで、何かただ事でないことが起きている感じがする、などと思いこむ。世界が全体的に不吉であったり悪意に満ちているなどと感じる。

世界没落体験:妄想気分の一つで、世界が今にも破滅するような感じがする、などと思いこむ。

一人の統合失調症患者においてこれら全てが見られることはまれで、1種類から数種類の妄想が見られることが多い。これらの妄想症状は突発的に起こることもあれば、数週間をかけて形成されていくこともある[43]

関連語に妄想着想(妄想を思いつくこと)、妄想知覚(知覚入力を、自らの妄想に合わせた文脈で認知すること)がある。また、妄想に質的に似ているが、程度が軽く患者自身もその非合理性にわずかに気づいているものを「 - 念慮」という。

統合失調症以外の疾患に伴って妄想がみられることもある。クレペリンは双極性障害(躁うつ病)の特徴として迫害妄想をあげており、双極性障害でないことが診断に重要である。
知覚の障害幻視のイメージ

幻覚 (Hallucination) とは、実在しない知覚情報を体験する症状[42][43]。以下のものがある。

幻聴 (auditory hallucination):聴覚の幻覚[注釈 13]

幻視 (visual hallucination):視覚性の幻覚

幻嗅 (olfactory hallucination):嗅覚の幻覚

幻味 (gustatory hallucination):味覚の幻覚

体感幻覚 (cenesthesic hallucination):体性感覚の幻覚

統合失調症では幻聴が多くみられる一方[43]、幻視は極めてまれである[44]。幻聴は、人によっては親切・丁寧であることもあるが、多くの場合はしばしば悪言の内容を持つ[43]

幻覚を体験する本人は、外部から知覚情報が入っていると感じるため、実際に知覚を発生する人物や発生源が存在すると考えやすく[43]、これらの幻覚の症状を説明するために、患者は妄想を形成しているのである。幻嗅、幻味などは被毒妄想に結びつくことがある。また、患者が嫌がらせや迫害を受けているなどと訴える例もある[43]

統合失調症以外の疾患(せん妄てんかんナルコレプシー気分障害認知症など)、あるいは特殊な状況(断眠、感覚遮断薬物中毒など)におかれた健常者でも幻覚がみられることがある[44]

体感症(英語版):体感幻覚に類似するが、その異常感が常態ではみられない奇妙な性状のものであることをよくわきまえている点で、他のさまざまな体感幻覚とは異なる。

知覚過敏:音や匂いに敏感になる。光がとても眩しく感じる。

知覚変容発作:発作的な視覚的な変容を特徴とし、患者自身が発作であると認識していることが多い[46]。抗精神病薬の副作用からくる。

自我意識の障害当事者の自宅

自己と他者を区別することの障害である。自生思考や作為体験など、思考や行動における能動感と自他境界感の喪失がみられる。一説に自己モニタリング機能(英語版)の障害と言われている[47]。すなわち、自己モニタリング機能が正常に作動している人であれば、空想時などに自己の脳の中で生じる内的な発声を外部からの音声だと知覚することはないが、この機能が障害されている場合、外部からの音声だと知覚して幻聴が生じることになる。音声に限らず、内的な思考を他者の考えと捉えると考想伝播につながり、さらには「考えが盗聴される」などという被害妄想、関係妄想につながることになる。

考想操作(思考操作):他人の考えが入ってくると感じる。世の中には自分を容易に操作できる者がいる、心理的に操られている、と感じる。進むと、テレパシーで操作されていると感じる。

考想奪取(思考奪取):自分の考えが他人に奪われていると感じる。自分の考えが何らかの力により奪われていると感じる。世の中には自らの考えがヒントになり、もっといい考えを出すものもいると感じる。進むと、脳に直接力がおよび考えが奪われていると感じる。

考想伝播(思考伝播):自分の考えが他人に伝わっていると感じる。世の中には洞察力の優れたものがいると感じる。その人に対して敏感になっている。進むとテレパシーを発信していると感じる。

自生思考(思考即迫):常に頭の中に何らかの思考があり、うつ病患者の症例に多い「観念奔逸」と似て、思考がどんどん湧いてくる、思考が自らの意志でもっても抑えられない特有な思考の苦痛な異常状態をいう。これは、統合失調症の陽性症状の中でも最も深刻で重要な精神症状であるとされる。程度が重い患者では、頭の中が不自然な思考の熱状態で気がめいり、頭の中がとても騒がしく落ち着かないと訴え思えるような心理状態になる。

考想察知(思考察知):自分の考えは他人に知られていると感じる。世の中には自分の考えを言動から読めるものがいると感じる。進むと、自分は考えを知られてしまう特別な存在と感じる。自らのプライドを高く実際を認められずに、被害的にとらえてしまう。進むと、考想が自己と他者との間でテレパシーのように交信できるようになったと考え、波長が一致していると感じる。

強迫思考:自生思考と類似して、ある考えを考えないと気が済まない、考えたくもない、あってはならない考えが不自然に浮かび上がり、他人に考えさせられていると感じられるような尋常ではない状態をいう。中には、読書をする際に、「この部分を何回読まないと頭に記憶されない、覚えられない」といった内容の不合理な思考が瞬間的および随伴的に浮かぶ「文字強迫」などの症状が表面化されることもある。統合失調症の患者の中には、こうした強迫性障害[注釈 14]を発病当初から慢性的に同時に併せ持つ型の人もいるとされる。

作為体験:自分が外部の力によって考えさせられたり、支配されたりするように感じる[48]

離人症

行動や思考の変化

行動が無秩序かつ予測不可能となる[43]

興奮:妄想などにより有頂天になっている[43]。意味もなく叫ぶ[43]。また自分が神か神に近きものまたは天才と思い一種の極限状況にある場合もある。

昏迷:意識障害なしに何の言動もなく、外部からの刺激や要求にさえ反応しない状態。表情や姿態が冷たく硬質な上、周囲との接触を拒絶反抗的であったり(拒絶症)、終始無言であったり(無言症)、不自然な同じ姿勢をいつまでも続ける(常同姿態〈カタレプシー〉)[49]

拒食

陰性症状

陰性症状 (Negative symptoms) とは、エネルギーの低下からおこる症状で、おおよそ消耗期に生じる。無表情、感情的アパシー、活動低下、会話の鈍化、社会的ひきこもり自傷行為などがある[8][43][50]


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