1992年、世界保健機関の10ヵ国を対象とする研究報告は、2年後の転帰について、貧困国は3分の2近くが良好な転帰、3分の1強が慢性化、富裕国は37%が良好な転帰、59%が慢性化と報告している[187]。抗精神病薬の使用率は、貧困国が16%、富裕国が61%であり、使用率が3%のインドのアグラが最も良好、使用率が最も高いモスクワが最も悪かった[187]。
2007年、マーティン・ハロウの研究[注釈 33]は、15年後の転帰について、抗精神病薬なしは40%が回復、44%が良好な転帰、16%が一様に不良、抗精神病薬ありは5%が回復、46%が良好な転帰、49%が一様に不良と報告している[188]。 どの年齢でも発症するが、特に思春期から青年期において、自立した生活を開始したころに発症することが多い[8]。男性と比較して女性は平均発症年齢が遅く、閉経後にも小さな発症のピークがある。 .mw-parser-output .legend{page-break-inside:avoid;break-inside:avoid-column}.mw-parser-output .legend-color{display:inline-block;min-width:1.5em;height:1.5em;margin:1px 0;text-align:center;border:1px solid black;background-color:transparent;color:black}.mw-parser-output .legend-text{} データなし 185年未満 185年から197年 197年から207年 207年から218年 218年から229年 229年から240年 240年から251年 251年から262年 262年から273年 273年から284年 284年から295年 295年を超える 生涯発病率は約0.85%(120人に1人)であり、まれな病気ではない[8]。アメリカ合衆国では、生涯罹患率は約1%[189]で年間発症者数は10万人当たり1,000人[190]、カナダにおける12か月有病率は男性・女性ともに0.61%[191]であった。5歳から18歳の児童青年においては、有病率は0.4%[192]、イギリスの精神病院に入院する10歳から18歳のうち、24.5%は統合失調症であった[192]。研究対象となった地域・人種などにより罹患率に差があるが、診断基準によっても左右され、その意味は明確ではない[193]。アイルランドでの地方間における罹患率の差も議論の対象となっている。 統合失調症患者の死亡率は、一般人口の約2倍以上とされる[194]。 患者の生涯自殺率は10%以上で、これは一般人口の12倍の値であり[12]、およそ5%が自殺を完遂する[195]。特に初発後・退院後に多く、初発退院後1年間の自殺率は一般人口に比べて100倍になっているという報告がある[196]。患者が喫煙者の場合も、自殺企図の危険は有意に高くなる[197]。陽性症状が強い時期に、幻聴から逃れたり妄想のために自殺をする患者もいるが、陰性症状しか見られない段階でも思考の短絡化[注釈 34]によって、少しの不安でも耐えられずに、自殺してしまうこともある。 統合失調症患者の生命予後(平均余命)は一般人口と比べると悪く、死因の大部分は心血管系疾患によるものと言われる[198]。統合失調症患者は心疾患や窒息による不慮の突然死が多く、突然死のリスクは健常者と比較して統合失調症患者全体で4.9倍、入院療養中の統合失調症患者では6.7倍であるとされる[199]。特に、メタボリックシンドロームは心血管系疾患および心血管系疾患死のリスクを上げ、原因として生活習慣、抗精神病薬による治療[注釈 35][注釈 36]、統合失調症の自体の影響などがある[198]。突然死リスクを減らすために対応可能な6つのリスクファクター(喫煙、高血圧、高血糖、運動不足、肥満、高脂血症)への取り組みが、発病早期から求められる[201]。 統合失調症患者の合併症で、特に多いのは抑うつと薬物乱用である[194]。患者の少なくとも25%は常時抑うつであり、また米国患者ではアルコール依存症は30%以上、麻薬は25%以上、喫煙率は50%以上であった[194]。 統合失調症患者はがんによる死亡率が低いことが知られている。デンマークで1980年まで行われた研究では、がん発生率は健常者との比較により男性で67%、女性で92%であった。男性統合失調症患者の肺がんは高い喫煙率にもかかわらず、健常者の38%であった。統合失調症治療に使われる向精神薬が抗腫瘍効果をもつためであるとされている[202]。また、統合失調症患者は関節リウマチに罹患しにくいことが知られており[203]、最近の研究によれば、およそ4倍程度罹患しにくいとされる[204]。 19世紀のドイツの精神科医エミール・クレペリンが複数の脳疾患を統一的な脳疾患カテゴリーとしてまとめ、早発性痴呆症を提唱した。1911年、スイスの精神科医オイゲン・ブロイラーが症状群の性質から、著書『早発性痴呆症あるいは精神分裂病群の集団』(『Dementia Praecox oder Gruppe der Schizophrenien』)の中でSchizophreniaを造語し定義した[9]。ブロイラーによれば、当該疾患の特徴は「精神機能の特徴的な分裂(Spaltung der verschiedensten psychischen Funktionen)」であるとし、Schizo(分裂)、Phrenia(精神病)と呼称した。ここでいう精神機能とは、当時流行した連合主義心理学(en:Associationism
疫学
罹患率・有病率など2004年の100,000人あたりの統合失調症の障害調整生命年
「メンタルヘルス#各国の精神保健」も参照
死亡率
合併症の疫学
歴史スキゾフレニア (Schizophrenia) という用語を創設したオイゲン・ブロイラー (1857-1939)
年表「精神保健の歴史」も参照
古代ギリシアから統合失調症が存在したという説がある[205]。
1852年、フランスのベネディクト・モレルが、統合失調症を初めて公式に記述し、Demence precoce(「早発性痴呆」)と呼称した。
1871年、ドイツのエヴァルト・ヘッカー
1874年、ドイツのカール・カールバウム(英語版) が「緊張病」[注釈 38]を著す。
1899年、ドイツのエミール・クレペリンが Dementia Praecox(「早発性痴呆」)を著し、破瓜病、緊張病に妄想病を加えてまとめる。
1911年、スイスのオイゲン・ブロイラーは、必ずしも若年時に発症するとは限らず、また必ずしも痴呆に到るとは限らず、この病気の本性は観念連合の弛緩にあるとして Dementia Praecox を Schizophrenie と改名し疾患概念を変えた。
1935年以降、日本では公式には1975年まで多くの人がロボトミー(大脳の外科手術)を受けた。