統合失調症
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全国精神保健福祉会連合会が結成されている[104]。地方自治体は家族への相談窓口などを設置していることが多い。家族の多くが精神障害者の地域生活を支えている[105]
援助方針

統合失調症の患者の中にも病状悪化による再入院を繰り返す過程で、自分が統合失調症であることや、服薬中断が精神症状悪化につながると分かるようになっている場合もある[106][105][107][64]。いろいろなことに深刻にならずに、「病気だからそう言うこともあるんだな」と受け止めることが大事との意見がある[64]。治療の開始にあたっては、統合失調症も他の病気と同様に薬で症状をコントロールできること(特殊な病気ではないこと)を伝え、回復への見通しを持てるようにサポートする。同時に、医師や周囲の人のサポートを約束し、本人のペースを尊重しながら協同で治療に取り組んでいくことを伝え、安心感を持てるよう支援する[108]。精神科医は、理解しようとすること、少なくともサポートしようとしている姿勢が患者に伝わることが必要となる[64]

患者に妄想・妄言が含まれる場合、それを否定すると孤立感が増し症状が悪化する例が多いとされ、また、逆に肯定すると妄想を補強することになり、症状が悪化する可能性がある[109]。話を聞かない場合においても孤立感が増すため、話を根気よく聞く必要があるが、あまりに真剣に聞きすぎると、聞き手側のストレスになり、場合によっては聞き手側にうつ病などの精神疾患をもたらすことがあるため、あまりに真剣に聞くことも推奨されない。介護職の対応としては、妄想の話をしているときには、否定も肯定もせず、中立的に話を最後まで聞き、相手には真剣に聞いている態度を示しつつも、内実あまり真剣に聞かずに軽く受け流すという対応を正解としている(ただし、症例は多様であり、ケースバイケースのため専門医の指示は必須である)[109]。実際に、本当のことを訴えている場合、あるいは利害関係から病気に仕立てられるケースが実在するので注意が必要である[注釈 22]

厚生労働省ウェブサイトにおいて、患者家族に対しては「病気とそのつらさを理解する」「医療チームの一員になる」「接し方を少し工夫する」「自分自身を大切にする」ことなどを推奨しており、患者に対して非難的あるいは批判的な言動を慎み、また「原因を探すのはひとまず脇に置いて、具体的な解決策を一緒に考える、という接し方が理想的」と呼びかけている。また、心配しすぎてオロオロしないようにも勧めている[110]

精神保健福祉法生活保護などの公的扶助制度の活用や様々なアドバイスなど治療や社会復帰をすすめるために必要な社会的援助を、精神保健福祉士などが支援する。看護師と精神保健福祉士が協働する訪問看護などもある。
治療

外来治療と入院治療に分けられる。英国国立医療技術評価機構 (NICE) のガイドラインによれば、第一選択肢は経口抗精神病薬心理療法(個別認知行動療法および家族介入)の両方を行うことを提案している[111]。しかしプライマリケア医は、精神科専門医のアドバイスを得ていない限り、初回発症の段階で抗精神病薬を処方してはならないとしている[112]。薬物療法が大きな柱となるが、その他の治療法も病相の時期(急性期、慢性期など)に応じて適宜選択される。いずれにせよ、精神科医を受診、相談することが望ましい。統合失調症患者の主体的な人生や生活のゴールを達成するために、患者と医師による治療内容についての共同意思決定(SDM)が関心を高めている[113]
薬物療法非定型抗精神病薬の一つ「クエチアピン」

薬物療法によって完治することはまれであるが、対症療法にはなる。日本神経精神薬理学会が『統合失調症薬物治療ガイド』[114]を公開している[115]

抗精神病薬(日本では20数種類が使用できる)の投与が、陽性症状を中心とした症状の軽減に有効である。また、統合失調症に抑うつ症状や強迫症状を伴う場合などには抗うつ薬を、不安症状が強い場合には抗不安薬を、不眠が強い場合には睡眠薬を併用することもある。NICEは、抗精神病薬の処方は利益と副作用を考慮した上、年に一度レビューするとしている[116]

近年、従来の定型抗精神病薬と呼ばれる薬剤よりも、副作用が少なく陰性症状にも有効性が高いなどの特徴をもった非定型抗精神病薬と呼ばれる新しいタイプの薬剤であるリスペリドンペロスピロンオランザピンクエチアピンが開発され、治療の主流になりつつある。さらに、最近アリピプラゾールブロナンセリンクロザピンリスパダール・コンスタパリペリドン、アセナピン(英語版)[117]ブレクスピプラゾール[118]ルラシドン[119]が加わった。クロザピンは治療抵抗性統合失調症[注釈 23]に唯一有効な抗精神病薬であるとされる[121][注釈 24]。ただし、非定型抗精神病薬における新たな問題もあり、副作用面では、オランザピン、クエチアピンが、高血糖糖尿病肥満を誘発することがある。また医療経済面では、オランザピン、クエチアピン、アリピプラゾールなどは薬価が非常に高く設定されている。こうした見解を経て、定型抗精神病薬が再考されている。

抗精神病薬の一般的な副作用として、黒質線条体系のドーパミン拮抗作用によるパーキンソン症候群錐体外路症状アカシジア悪性症候群ムスカリン拮抗作用による便秘、口渇、眼のかすみ、ヒスタミン拮抗作用などによる眠気、体重増加など、アドレナリンα1拮抗作用による低血圧性機能障害が生じることがある[85]。抗精神病薬の治療の副作用対策として抗パーキンソン病薬の使用は、認知機能を低下させる副作用があるため、なるべく少量の使用か、使用しない傾向にある[124]

NICEは、薬剤切替時を除いて抗精神病薬を多剤投与してはならない[125]、急速大量抗精神病薬飽和療法 (Rapid Neuroleptization) は、急性エピソード時の差し迫った暴力鎮静を除いて行ってはならないと勧告している[51][125]。日本の薬物療法においては多剤大量処方という問題を抱えており、その副作用で死亡者が出るなどの事例がある[126]。抗精神病薬の換算方法としてクロルプロマジン換算があり、統合失調症においてはクロルプロマジン換算量600mg程度を理想としている[127]

統合失調症維持期の抗精神病薬治療については、継続、中止、間欠投与[注釈 25]、減量・低用量の4つの戦略がある[129]。中止については、近年各国のガイドラインは初回エピソード患者を中心に肯定的に傾いてきており、減量・低用量についても、ガイドラインは完全に否定してはいない[129]


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