経済的不平等
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もはや中国国内の格差は、アメリカを追い越しラテンアメリカのレベルにまで近づきつつある」と指摘している[15]

資産格差

2014年1月20日、国際非政府組織(NGO)オックスファムは、世界で貧富の差が拡大し、最富裕層85人の資産総額が下層の35億人分(世界人口の半分)に相当するほど悪化したとの報告書を発表している[16]。また、同報告書はデータを得た26カ国のうちの24カ国で、全国民の収入に占める上位1%の最富裕層の割合が約30年前に比べて増加したと指摘している[16]。同報告書はアメリカでは、下層の90%は経済的に苦しくなったが、上位1%の最富裕層は2009-2012年の成長による利益の95%をかき集めたとしている[16]

2014年10月17日、クレディ・スイスが富豪による富の独占状況についての研究報告を発表し、2014年現在、富豪による富の独占が最も進行している国家はロシアであるとしている[17]。所得上位10%人口の資産が総資産に占める割合は、1位ロシア84.8%、2位トルコ77.7%、3位香港77.5%、4位インドネシア77.2%、5位フィリピン76%、6位タイ75%、7位アメリカ74.6%、8位インド74%となったとしている[17]。また、富の分配が最も進んでいる国家はベルギーであるとしている[17]。所得上位10%人口の資産が総資産に占める割合は、ベルギー47.2%、日本48.5%となったとしており、富の独占率が50%を下回ったのは調査国中、ベルギーと日本の2カ国のみであったとしている[17]。中国については所得上位10%人口の資産が総資産に占める割合は、2000年には48.6%であったが、2014年には64%にまで上昇しており、中国は過去14年間で、最も富の独占が進んだ国家となったとしている[17]

2015年1月19日、国際支援団体オックスファムは、世界の人口の1%の富裕層がもつ資産の総額が、2016年までに残りの99%の人口の資産の総額と同程度になるという推計を発表した[18]。また、オックスファムは世界の富裕層上位80人の資産総額は、貧困層35億人の資産総額に匹敵するとしている[18]
中国

中国人民銀行・西南財経大学が共同設立した中国家計金融調査・研究センターが発表した「中国家計金融調査報告」によると、都市と農村の資産格差は、平均値で10.2倍・中央値で1.7倍となっており、都市家計資産の平均値と中央値の格差は31.4倍となっているにもなっている[19]。上位10%の収入・資産が全体に占める割合をみると、家計収入は57.0%、金融資産は61.0%、非金融資産は88.7%、総資産は84.6%となっている[19]

2014年2月23日、中国の四川省成都の西南財経大の研究機関は、中国の裕福な世帯の上位10%が、全国の総資産の63.9%を保有しているとの報告書を発表している[20]。報告書によると、上位1%の富豪世帯の平均年収は115万2千元(約1900万円)に上る(2012年の中国の労働者・職員の年間平均賃金は約4万8千元)[20]
原因と影響
歴史

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原始時代に農業(農耕)が始まると収穫物の蓄積が可能になり、経済的不平等が生じ始めた。2017年に科学雑誌『ネイチャー』に投稿された論文によると、約1万1000年前以降の、世界各地にある約60の文明について遺跡の住居面積を比較したところ、など飼いならしたユーラシア大陸などでは格差が広がり続けたのに対して、家畜となる大型動物がいなかった南北アメリカ大陸では2500年程度で格差拡大が止まったと分析されている[21][22]

その後も、国家などの集団・権力の形成と支配、交易や商業、居住地の条件や技術進歩の違いなどにより、経済的不平等は継続・拡大した。貧しさや不平等への不満はしばしば、日本の一揆を含む民衆の反乱革命の原因となった。このため為政者は民間の富を税などとして集める一方で、現代に至るまで、経済的不平等が極端に拡大しないよう配慮を迫られてきた。
現代

経済的不平等が生じる原因は様々である。原因について OECDレポート Divided we Stand: Why Inequality Keeps Risingの結論では、加盟22カ国に於いては、その成り行き任せや政策による影響によって、富豪と貧困の両極端化が強化される方向に進んでいると述べている(OECD 2011-12-05)[6]

最も大きな要因は賃金の差である("The single most important driver has been greater inequality in wages and salaries (OECD 2011-12-05).[6])。原因の多くは相互に関連性を持っている。

経済的不平等の要素には、「賃金・収入の大きな違い(熟練労働者は他より収入が多い)[23]」「富の偏在(wealth concentration)[24]」「労働市場[6] (グローバル化[25]・技術の変化・政策変化[6])」「逆進的課税[26] と税制の穴やタックスヘイブン[27]」「教育費の増大(Higher education bubble)[28]」「コンピュータ化と技術革新[25]」「人種による不平等[29]」「男女差[30]」「縁故社会[31]」などが挙げられる。

経済学者の伊藤修は、貧富の差を生み出す要因として、1)生まれた時点での富、2)素質、3)運、4)努力、の4つを挙げている[32]。伊藤は「『努力が富は生む』『努力の差が貧富の差』という命題は間違いであり、富が本人にすべて帰属しているという根拠はない」と指摘している[33]

経済学者の大竹文雄は「所得の重要な部分を占める賃金の格差が生じる主な原因は、生産性の差である。個人間の生産性の差は生まれつきの才能・教育・努力・運が人によって異なるため生じる」と指摘している[34]。また大竹は「努力水準が他人には観測できないため人々に努力を促す手段として賃金格差が発生している。つまり、人々にインセンティブをもたらす手段として賃金格差が存在する」と指摘している[35]

経済的不平等が発生し、定着する理由には個人的要素と社会的要素がある。

大竹文雄は「競争に対する態度の違いや、競争で実力を発揮できるかどうかは、経済的な格差につながる。また、社会全体の生産性に影響を与える可能性が高い」と指摘している[36]

経済学者の田中秀臣は「非正規雇用は所得が不安定であり、その不安定さは様々な影響をもたらす。例えば両親が非正規雇用で所得が不安定であると、子供たちも同じように所得が不安定な一生を送る可能性があり、一部の実証研究はそのことを示唆している」と指摘している[37]

コロンビア大学のカリー教授によると、貧困家庭の子どもが貧困となり、そのまた子どもも貧困になるという貧困の連鎖の原因は遺伝ではなく、栄養状態が悪い妊婦が低体重児を出産→子どもが育っても健康状態は悪い、低所得→低所得の親となり、また低体重児を出産、という経路をたどるためであるとしている[38]

大竹文雄は「アメリカの研究によれば、親の所得階級による子どもの数学の学力差は、6歳の時点ですでに現れ、その学力差はその後も拡大を続けるとされている。ただし、就学前に教育を受けていた場合、学校教育による援助は大きな効果がある」と指摘している[39]
労働市場

現代の市場経済において経済的不平等は、賃金が労働市場によって決定される事に起因するものが大多数である。他の原因としては、各業種について需要と供給のバランスの不一致もあるが、これは少数である。現実の市場は、一般に効率的であると仮定するのは困難である。それは、ほぼ全ての市場に何かしらの不完全競争(情報の偏在・教育やスキルアップ機会の不平等・その他多々の不完全条件など)が存在しているためである。そのため政府はこの市場の失敗を是正する大きな潜在的役割があるとされている[40]

純粋な資本主義的生産形式(たとえば専門機関や労働組合は労働者数を規制しない等)では、労働者の所得は、労働組合や労働者自身によってではなく、市場によって決定される。つまり同一労働同一賃金が成立している状況では、労働は市場に於ける技能スキルの価格であると見なされており、それによって価格の不平等が起こる。


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