細胞
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彼の時代は英名も定まっておらず、cellに相当する生物の構成単位はbladder(小嚢)やbubble(小胞)などとも呼ばれていた[18]。他に当時、植物解剖学の大家であったマルチェロ・マルピーギは、ラテン語でutriculi(皮でできた小瓶)と呼んでいた[18]。榕菴は1833年刊行の日本初の植物学入門書『理学入門植學啓原』において、Utriculi(植物細胞)と脚注している[18]。これらのことから、榕菴は、植物体は細かい嚢(胞)状の最小単位で構成されていると考え、「細胞」と造語したと考えられている[18]
細胞の数

多細胞生物の細胞数はによって異なる。人体には約37兆個(3.72×1013)の細胞があり(2013年)[19]、そのうち約800億個はが占めていると推定されている[20]。Hattonらによる最近の研究では(2023年)、人体の細胞数を約30兆個(男性で約36兆個、女性で約28兆個[21])と推定し、臓器ごとの細胞数を報告している[21]
細胞の種類

細胞は、を持つ真核細胞と、核は持たないが核様体領域を持つ原核細胞に大別される。原核生物は単細胞生物であるのに対し、真核生物は単細胞生物か多細胞生物のどちらかである[22]
原核細胞詳細は「原核生物」を参照典型的な原核細胞の構造

原核生物(げんかくせいぶつ、: Prokaryote)には、生命の3つ(英語版)のドメインのうち、細菌と古細菌の2つが含まれる。原核細胞は地球上で最初の生命体であり、細胞シグナル伝達などの重要な生物学的プロセスを持つことが特徴である。これは、真核細胞よりも単純で小さく、や膜結合細胞小器官を持たない。原核細胞のDNAは、細胞質に直接接触した単一の環状染色体(英語版)から構成されている。細胞質内の核領域は核様体と呼ばれる。ほとんどの原核生物は、直径0.5?2.0 μmと、すべての生物の中で最も小さい[11][要ページ番号]。

原核細胞は3つの領域から構成される。

細胞表層:細胞は細胞表層(英語版)(細胞エンベロープ)という領域に包まれている。この細胞表層は、一般的に細胞壁で覆われた細胞膜からなり、細菌の種類によってはさらに莢膜と呼ばれる第三の層で覆われている。ほとんどの原核生物は細胞壁と細胞膜の両方を持つが、マイコプラズマ属(細菌)やテルモプラズマ属(古細菌)のように細胞膜の層しか持たない種もある。表層は細胞に剛性を与え、細胞内部を環境から分離し、保護フィルターの役割を果たす。細菌の細胞壁はペプチドグリカンでできており、外力に対するさらなる障壁として機能する。また、低張環境(英語版)での浸透圧による細胞の膨張や破裂(細胞溶解(英語版))を防ぐ。一部の真核細胞(植物細胞真菌細胞)にも細胞壁がある。

細胞質領域: 細胞内には細胞質領域があり、そこにはゲノム(DNA)、リボソーム、およびさまざまな種類の封入体が含まれている[3]。遺伝物質は細胞質の内側を自由に移動することができる。原核生物は、プラスミドと呼ばれる染色体外DNAエレメントを持つことがあり、これは通常は環状である。直鎖状の細菌プラスミドは、ライム病を引き起こすライム病ボレリア(英語版)(Borrelia burgdorferi)に代表されるボレリア属(Borrelia)を含むスピロヘータ属 (en:英語版) 細菌のいくつかの種で同定されている[23]。細胞核は形成されず、DNA核様体として折り畳まれている。プラスミドは、抗生物質耐性遺伝子などの付加的な遺伝子をコード化している。

べん毛/性線毛: 外見上、一部の原核生物は、細胞表面からべん毛(鞭毛[注釈 1]、べんもう、flagellum、複:flagella)や性繊毛(せいせんもう、pilus、複:pili)が突き出ている。これらはタンパク質でできた構造で、細胞間の移動と交信を促進する。

細菌の形状詳細は「細菌#形状・サイズ」を参照

細胞形態(cell morphology)とも呼ばれる細胞の形状は、細胞骨格の配置と動作から形成されると考えられている[26]。細胞形態の研究における多くの進歩は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)のような単純な細菌の研究からもたらされた[27]。さまざまな細胞の形状が発見され、記述されてきたが、細胞がどのようにして、またなぜさまざまな形状を形成するのかは、まだほとんど解明されていない。確認されている細胞の形状は、桿菌、球菌、スピロヘータなどである[27]。球菌は円形、桿菌は細長い棒状、スピロヘータはらせん状である[26]
真核細胞詳細は「真核生物」を参照典型的な動物細胞の模式図:(1)核小体(仁)、(2)細胞核、(3)リボソーム、(4)小胞、(5)粗面小胞体、(6)ゴルジ体、(7)微小管、(8)滑面小胞体、(9)ミトコンドリア、(10)液胞、(11)細胞質基質、(12)リソソーム、(13)中心体典型的な植物細胞の模式図: 動物細胞との違いは、濃い緑色で描かれている細胞壁(Cell wall)、紺色で示されている液胞(vacuole)、筋の入った緑色の紡錘形に見える葉緑体(Chloroplast)、核の左横に描かれた小さな球体である白色体(Leukoplast)のほか、細胞質分裂の後にも細胞壁の表面に残り、隣接する細胞と原形質を連絡する通路となる原形質連絡(Plasmodesmata)などである。

植物動物真菌類粘菌類原生動物、そして藻類はすべて真核生物(しんかくせいぶつ、: Eukaryote)である。これらの細胞の幅は一般的な原核生物の約15倍で、体積は1,000倍にもなることがある。原核生物と比較した場合の真核生物の主な特徴は、区画化(英語版)、すなわち特定の活動を行う膜結合細胞小器官(区画)の存在である。その中でもっとも重要なものは細胞核(核)であり、細胞のDNAを収容する細胞小器官である[3]。この核が「真の核」(: true kernel (nucleus))を意味する真核生物という名前の由来である。そのほかに次のような違いがある。

細胞膜の機能は原核生物のそれと似ているが、その構造には若干の違いがある。細胞壁はあってもなくてもよい。

真核生物のDNAは、染色体と呼ばれる1本またはそれ以上の直鎖分子に組織化され、ヒストンタンパク質と結合している。染色体DNAはすべて、膜によって細胞質と隔てられた細胞核に保存されている[3]。DNAは、ミトコンドリアのような真核細胞小器官の中にも存在することがある。

多くの真核細胞は一次繊毛(英語版)で繊毛化されている。一次繊毛は、化学感覚、機械感覚(英語版)、温度感覚 (en:英語版) において重要な役割を果たしている。それぞれの繊毛は、「さまざまな細胞シグナル伝達経路を調整し、時には繊毛運動あるいは細胞の分裂や分化にシグナル伝達を結びつける、感覚細胞アンテナと見なすことができる[28]」。

運動性の真核生物は、運動毛(英語版)や鞭毛を使って移動することができる。針葉樹類被子植物には運動細胞は存在しない[要出典]。真核生物の鞭毛は、原核生物のべん毛よりも複雑で[29]、細胞骨格の一種である微小管がタンパク質繊維で結びついたものである[30]


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