細胞分裂の最終段階が細胞質分裂(英: cytokinesis)である。この段階では、有糸分裂または減数分裂の最後にある細胞質の分裂が起こる。分離は不可逆的で、2つの娘細胞が作られる。細胞分裂は細胞の運命を決定する上で重要な役割を果たしている。その結果、運命決定分子の量や濃度が全く異なる不均等な娘細胞につながる原因となる[32]。
動物では、細胞質分裂は収縮環の形成と、その後の分割で終了する。しかし植物では、その過程が異なる。まず細胞板が形成され、次に2つの娘細胞の間に細胞壁が発達する[要出典]。
分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)では、細胞質分裂はG1期に起こる[33]。 細胞周期にはチェックポイントがあり、細胞は成長段階をさらに進行させたり止めたりすることができる。その一つはG1期のG1/Sチェックポイントで、目的は適切な細胞サイズとDNAの損傷を調べることである。二番目はG2期のG2/Mチェックポイントで、細胞サイズとDNAの複製を調べる。最後のチェックポイントは中期にあり、染色体が有糸分裂紡錘体に正しく結合しているかを確かめる[34]。 各チェックポイントは、サイクリンとサイクリン依存性キナーゼというタンパク質によって制御される。間期はサイクリン量の増加にともなって進行する。サイクリンの量が増えるにつれ、サイクリン依存性キナーゼとサイクリンの結合が増し、細胞を間期へとさらに誘導する。サイクリンが頂点に達すると、このシステムによって細胞は間期から、有糸分裂、減数分裂、細胞質分裂が起こるM期へ移行する[35]。M期に入る細胞が通過しなければならない移行チェックポイントのうち、最も重要なのはG1/S移行チェックポイントである。もし細胞がこのチェックポイントを通過できなければ、細胞周期から抜けることになる[36]。 DNA損傷は細胞周期のさまざまな時点で検出され、修復される。G1/Sチェックポイント、G2/Mチェックポイント、および中期と後期の間のチェックポイントはすべて、DNA損傷を監視し、さまざまなサイクリン-CDK複合体
真核生物のチェックポイント詳細は「細胞周期チェックポイント」および「DNA修復」を参照
細胞周期チェックポイント
DNA損傷の修復
具体的には、DNA損傷があると、ATMキナーゼおよびATRキナーゼが活性化され、さまざまなチェックポイントキナーゼの活性化が促される[38]。これらのチェックポイントキナーゼはp53をリン酸化し、p53はDNA修復に関連する多くの酵素の産生を促す[39]。活性化されたp53は、p21タンパク質もアップレギュレートし、さまざまなサイクリン-CDK複合体を阻害する。これらのサイクリン-CDK複合体は、転写因子のE2Fファミリーに結合する腫瘍抑制因子である網膜芽細胞腫タンパク質(Rbタンパク質)をリン酸化する。このRbタンパク質の結合により、細胞が早期にS期に移行することはなくなるが、サイクリン-CDK複合体によってリン酸化されないとこのタンパク質は残存し、細胞は細胞周期のG1期で停止状態となる[40]。
DNAが損傷を受けた細胞は、BADがリン酸化されBcl2から解離するAktシグナル伝達経路を変化させることで、アポトーシスを阻害することができる。AktまたはBcl2の機能喪失変異によってこの経路が変化した場合、損傷を受けたDNAを持つ細胞はアポトーシスを受けざるを得なくなる[41]。DNA損傷を修復できない場合、活性化されたp53はアポトーシスによる細胞死を誘導することができる。これは、p53アポトーシスアップレギュレート調節因子
(英語版)(英: p53 upregulated modulator of apoptosis、PUMA)を活性化することで可能になる。PUMAは、抗アポトーシスBcl-2ファミリーメンバーを阻害することにより、アポトーシスを速やかに誘導するアポトーシス促進タンパク質である[42]。多細胞生物では、細胞分裂によって老化した細胞を置き換える。しかし動物によっては、細胞分裂が最終的に停止する仕組みを持つものもある。ヒトの場合、平均52回の分裂後にこれが起こり、ヘイフリック限界として知られている。