まず、細胞内の共生という現象はさほど特殊なものではない。原生生物においても共生の事例は数多い。藻類を細胞内共生させる繊毛虫や刺胞動物もある。超鞭毛虫に於いて、一部の鞭毛が実はスピロヘータの共生しているものであった例も知られる。
他方、葉緑体やミトコンドリアは他の細胞器官と異なって、それぞれが分裂によって半自律的に増殖し、しかも独自の遺伝子を持っていることが知られている。そのため、葉緑体やミトコンドリアによって生じる生物の形質には、メンデル遺伝に従わない例がある(細胞質遺伝)。また、葉緑体自身がDNAを持っているので、それを元に蛋白質合成をするためのリボソームも葉緑体に独自のものがある。しかも、塩基配列の比較により、リボゾームRNAが細胞本体のものと異なり細菌(真正細菌)のそれに近いことも知られるようになったため、いよいよこれが本来は独自の生物であると考えられるようになったのである。
また、Carsonella ruddiiのように現在進行形で細胞内小器官化しつつあると思われる微生物も発見されたことなどもあり、細胞内共生説はほぼ定説化している。 その後、細胞内共生説は、ほぼ定説とされている。もちろん、変わった部分もある。まず、鞭毛については共生起源の可能性は否定された。他方、ペルオキシソームが新たに共生起源である可能性が示唆されている。また、真核生物の本体は真正細菌より古細菌に共通する点が多く、古細菌に近い生物に真正細菌が細胞内共生したのが真核生物の起源だとする考えが有力である。 そして、原生生物の中では、新たな形での細胞内共生の例が多数発見された。藻類の葉緑体は、高等植物のものと比べて、複雑な形のものが多く、それらの中には、二重膜ではなく、三重、四重の膜に包まれたもの、あるいはその中にはっきりとした核のような構造を持つものがある。これらが、細胞内に葉緑体を持つ真核単細胞生物を、別の真核生物が取り込んだことから生じたものだということがわかってきた。すなわち、細胞内共生体を持つ細胞を、細胞内共生(二次共生)させているわけである(→二次植物)。なお一部の藻類、原生生物はさらに細胞内共生を繰り返して成立したといわれている。
その後の展開
脚注^ “ "Ueber die Entwicklung der Chlorophyllkorner und Farbkorper" [On the development of chlorophyll granules and colored bodies [part 1 of 4]]. Botanische Zeitung (in German).
^ Martin, William; Kowallik, Klaus (1999-08-01). “Annotated English translation of Mereschkowsky's 1905 paper ‘Uber Natur und Ursprung der Chromatophoren imPflanzenreiche’”
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石川統『細胞内共生』,(1985),UP バイオロジーシリーズ(東京大学出版会)