紫外線
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紫外線はたんぱく質を変性させるため、皮膚に紫外線が照射されるとコラーゲン繊維および弾性繊維にダメージを与えて皮膚を加齢させる。

波長の長いUVAの危険性は近年まで軽視されてきたが、皮膚の加齢、DNAへのダメージ、皮膚がんへのリスクはゼロではない。このうち特に、皮膚の加齢は、波長が長くUVBより深く皮膚の中に浸透し、皮膚の張りを保つ弾性繊維を徐々に破壊する主要因となっている。また、一度破壊された弾性繊維は回復しない。UVAはUVBと比べて、大気中での減衰が少なく、UVBの減少する冬期や朝夕でも比較的多く降り注いでいる。日焼けのうちサンバーンを引き起こすことはないがサンタンを引き起こす。日焼けサロンで照射されるのは、主にUVAである。ただし、その際に皮膚の老化を加速していることも忘れてはならない。UVAはSPFテストで測定することができない。

UVBは日焼けのうちサンバーンを引き起こす。UVCは最も波長が短く危険であるが、大気中で減衰し、ほとんど地上には届かない。UVB、UVCは、皮膚がん発現のリスクを伴う。生物のDNAは吸収スペクトルが 250nm 近辺に存在している。DNAに紫外線が照射されるとDNAを構成する原子が励起される。この励起はDNA分子を不安定にして螺旋構造を構成する「はしご」を切り離して隣接する塩基同士でチミン-チミン、シトシン-シトシン、ウラシル-ウラシル等の二量体を形成する。この二量体が遺伝子中のコドンを乱れさせ、DNA配列の不正配列、複製の中断、ギャップの生成、複製や転写のミスを発生させる。このことにより正常に遺伝子が機能しなくなった場合にがん等の突然変異を引き起こす。紫外線による突然変異は、バクテリアにおいて簡単に観察される。これは、地球環境問題でオゾンホールオゾン層の破壊が懸念される理由の1つである。ただ近年はこの常識から外れるFar-UVCと呼ばれる「人の目や肌に無害な波長域」が200~230nm、特に222nmを中心に研究されており、有人環境下での殺菌の実現の可能性が高まっている。(2020年9月よりこの波長域を使った市販製品が発売され、国立病院等を中心に2022年段階で4000か所以上で稼働している)

紫外線照射に対する生体の防御反応として、人間の体では茶色の色素メラニンを分泌して皮膚表面に沈着させる(これを「日焼け」という)ことにより、それ以上の紫外線の皮膚組織への侵入を防ぎ、より深い皮膚組織へのダメージを軽減させようとする。この分泌度は人種によって異なっているため、このことが皮膚の色の違いによる人種の区別をもたらしている。

市販の日焼け止めローション・クリームも紫外線の進入を防ぐ効果を利用している。これらの製品では、「SPF値」「PA」と呼ばれる紫外線防御効果が記載されている。SPF値は Sun Protection Factor の頭文字で、主に日焼けの原因であるUVBの遮断率を表している。SPF25の場合は、無対策の場合と比較して紫外線が1/25になり、SPF100は1/100になる。PAは protection of UVA の略で、UVAの遮断に対する効果を表している。PAは+(効果がある)、++(効果がかなりある)、+++(効果が非常にある)、++++(効果が極めて高い)の4段階で表記される。PAがSPFと異なり、数値で表記されないのは、UVAのブロック率を評価する良い分析法が存在しないためである。

強度の強いUVBは目に対して危険で、雪眼炎(雪目・雪眼)や紫外眼炎(電気性眼炎)、白内障、翼状片と瞼裂斑形成になる可能性がある。

保護メガネは、紫外線(特に短波長の紫外線)にさらされる環境で働く場合(電気溶接作業)や、その様な環境(雪山やスキー場のゲレンデなど)にいる場合には有効である。保護メガネで覆われていない横から目に入る紫外線を防止するために、高高度の登山家が使用するようなゴーグル状の完全に覆われた保護メガネを使用したほうが曝露に対するリスクが減少する。登山家は、高高度では地表に比べて大気による減衰が小さくなり、さらにや氷による反射が存在することが加わり、通常より高いレベルの紫外線にさらされるためそのような完全に覆われた保護メガネを使用している。

通常のメガネは、わずかの保護効果がある。ガラスはUVAに対して透明であるのに対し、プラスチックは通過率がガラスより低いため、プラスチックレンズは、ガラスのレンズより保護効果があり、材質(例えば、ポリカーボネート)によっては、ほとんどの紫外線が妨げる場合もある。ただし、いくら良いレンズによる保護措置を行ったとしても、レンズ以外の経路を経由した紫外線からは目を完全に守ることはできない。

眼鏡に十分な紫外線対策を期待するならば、フレームの形状も考慮するべきである。上部からの紫外線の侵入を減らすため、外出時はつば付きの帽子の併用が奨められる。レンズ以外の経路を経由する光を確認するには、レンズの部分をアルミホイルのような不透明なもので覆って、明るい光のそばに立つことで確認することができる。ほとんどのコンタクトレンズは紫外線を吸収し、網膜を保護する。

ただし、紫外線カットの眼鏡やコンタクトレンズの日常的な使用については、慶應義塾大学の臨床研究で近視の進行を招く可能性が示唆されている。紫外線カットの眼鏡やコンタクトレンズが近視抑制作用のあるバイオレット光までカットしてしまっているからだと慶応大学医学部では考えている[10]
紫外線による利点「ビタミンD#生合成」も参照

紫外線による利点は、皮膚におけるビタミンDの生成である。グラント (2002)は、UVB照射時間が短いことが、ビタミンDの欠乏を起こし、アメリカ合衆国で何万もの死者が生じていると主張している[11]。アメリカ合衆国では日照の少ない緯度の高い地域での大腸癌乳癌卵巣癌多発性硬化症の相対的な多発が指摘されている[12]。ビタミンD欠乏は、骨軟化症くる病)を生じさせ、骨の痛みや、体重増加時には骨折などの症状を生じさせる。

他にも皮膚の疾患(例えば乾癬白斑)の治療において、紫外線の利用が可能である。これには、311nmの波長による紫外線が効果的である。また、精神病の治療に、精神賦活薬(PUVA療法)とともに、UVA、UVB紫外線が利用される場合がある。
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