純と愛
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ホテルの名前も祖父が創業したホテルを引き継ぎ、「サザンアイランド」に決定した直後、愛が脳腫瘍を発症して倒れる。手術をしても治る保証はないほど病状は重いために愛は尻込みするが、愛の母・多恵子の説得を受けて手術に臨むことを決意し、手術の結果がどうであろうとホテルをオープンおよび運営することを純たちに約束させる。宿泊の予約も入り、手術当日にホテルのオープンを迎えるが、台風でホテルの建物が甚大な被害を受ける。また、手術を終えた愛は、腫瘍が脳幹まで達しているために完全に取りきれなかった結果、目を覚まさなくなる。

ホテルの設備の復旧の目処がたたないこともあり、純は愛の介護に専念し、ホテルのオープンを当面見送ることを決める。様子を見に訪れた元上司や同僚らから説得や懇願されても休業の気持ちは揺るぐことは無かったが、認知症が進行し現状を全く把握できなくなった純の母が、休業中のホテルをかつて自分の父(純の祖父)が経営していたサザンアイランドと思い込んで通い詰めるとともに「まほうのくに」と称して気に入る。これをきっかけに、純は、愛が目覚めなくとも多くの笑顔を作りたい、そして2人の愛の証であるホテルを消してはならないと思い直し、ホテルの復旧に動き出す。

いまだ昏睡状態の愛に対して純は、愛が目覚めるまでに必ずホテルを「まほうのくに」にしてみせると話しかけ、口づけをする。そして愛は目を覚まさぬまま、物語は幕を閉じる。
スペシャル『富士子のかれいな一日』編

純の先輩で、教育係でもあった桐野富士子(演者:吉田羊)を主役とした物語。

待田純がカイザーオオサキプラザ大阪を去って2年半後、桐野は40歳の誕生日を翌日に控えた日の朝を迎える。起き抜けに、同窓会で再会した元彼氏である鶴田から、大事な話があるとの用件で連絡が入り、仕事後に待ち合わせをする。明るい予感に浮かれる気持ちを抑えながら出勤。将来ホテルの社長昇格を目指す宿泊部長として仕事をこなす一方、結婚や家庭を持つ幸せを得た同期・後輩・部下の様子を見て仕事一筋の気持ちに迷いが生じながらも、定時に仕事を終え待ち合わせに向かおうとする。

しかし、飛行機の運航トラブルにより、急遽、大勢の宿泊客をオオサキで受け入れることになり、状況は一転する。部下たちに的確に指示を出し、抱えきれない客の受け入れ先の手配、苛立つ客たちをなだめるなど、忙しく仕事を終えようとしたときには既に待ち合わせから1時間半を過ぎていた。それでも鶴田との待ち合わせに向かおうとするが、道に迷った客に出くわして案内をし、再び足止めを食らう。すべてを終えて鶴田と連絡を取ろうとするが、既に鶴田は仕事で海外の赴任先へ向かう飛行機に乗った後で間に合わず、大事な話は聞けずじまいで終わる。

深夜0時、バーのカウンターで一人佇む桐野に、純から誕生日を祝う電話がくる。仕事で忙しそうであるが、充実した様子の純と電話で話し終えた桐野は、カラオケで「マイウェイ」を熱唱するのだった。
登場人物
第1部・第2部・第3部共通
狩野 純(かのう じゅん) → 待田 純(まちだ じゅん)
演 -
夏菜(語りも担当)(幼少期:安養寺可蓮)主人公。「まほうのくに」のようなホテルを作ることを目標としている。平成2年(1990年)8月15日[注 2]生まれ。好物はカレー豚まん。愛が作るクリームシチューも好物である。両親と異なり、標準語および関東方言を話す。大阪府に生まれ、10歳で宮古島に転居。高校時代はハンドボール部でゴールキーパー[9]沖縄本島にある大学に進学。正義感が強く活発だが世話焼きで実直。激高すると無意識のうちに他人を非難し責めたてる悪癖があり、トラブルを招くことが多い[注 3]。精神的に追い詰められると、「ひなまつりのうた」が頭から離れなくなる。就職活動のため出向いた大阪で愛と運命的な出会いをし、交際を経て結婚[注 4]。愛から「純さん」と呼ばれる。新卒で入社したオオサキプラザホテルで「社長」とあだ名をつけられ[注 5]ベルガール、ブライダル部、社長秘書、フロント係を経験するが、退職すると宮古島に戻って実家のホテル売却を阻止すべく奮闘する。しかしホテルは売却され、ショックで一時期自暴自棄な日々を送る。上原サトとの出会いをきっかけに「まほうのくに」を作る夢を取り戻すとともに、ホテル「里や」に再就職。「待田純の辞書に無理・不可能の文字はない」というスローガンを掲げ、24時間コンシェルジュとして勤める。しかし、里やが焼失し、自身が関わるホテルがすべてなくなっていくことに意気消沈し、ホテルへの再就職を諦めファッションブランド店に就くが解雇される。愛と離婚し晴海を連れて宮古島に帰ろうとしたが、剛に説得され希望を取り戻す。久世からホテルとしての活用目的で別荘を託され、開業に向け宮古に帰る。廃墟状態の別荘をリフォームし、苦労の末にホテルのプレオープンにこぎ着けるが、ホテルが台風で大損害を被り、さらに愛が脳腫瘍で昏睡状態となり、ホテル運営の意欲を無くし愛の看護に専念しようとする。しかし、休業状態のホテルに通う母の様子を見て、自らのホテル経営の夢を思い出し、ホテルの再開に動き出す。それから約2年後にあたる、番外編『富士子のかれいな一日』では、ホテルを復興し、深夜も忙しく働く姿が描かれている。
待田 愛(まちだ いとし)
演 - 風間俊介(第12週終盤 - 第13週では語りも担当)(幼少期:南出凌嘉昭和61年(1986年)6月16日。基本的には温厚な性格で一人称は「僕」だが、極度の怒りを覚えたり精神的に荒れると「ダーク愛」(風間命名)[10]に変わり口調が乱暴になり一人称も「俺」に変わる。弟・純と妹・誠からは「あいちゃん」、妻・純からは「いとしくん」と呼ばれる。「朝のクモは縁起が良い」と評したり、「純さんがいないときに来て」と称してクモを平気で外に逃がすなどクモには動じる気配がない。双子(二卵性)の弟・純の死後、「他者の本当の心が見える」という能力[11]が身についてしまったことによって、周りの人間の下心や裏の顔ばかり見えて信用できる人間がいなくなり、周囲の人をまともに見ることが苦痛となる。弟・純が亡くなった時に見た母・多恵子の本性におぞましくなって高校を退学、家出して都会を放浪し、なるべく人と言葉を交わす必要の無い仕事を転々として、人の顔を見ないよう、うつむいて歩いていた。中学・高校時代は関西随一の進学校でトップの成績を取るほどの知力と、足の速さではインターハイを狙えたほど運動能力を兼ね備える。家事も完璧にこなせるが腕力は弱く、歌い出すと周囲がやめさせるほどの音痴である[注 6]。大阪の路上で純と初めて出会って以来、彼女の裏表のない性格が気になり、後をつけて見守りつつピンチの際に手を差し伸べたりアドバイスするうちに両思いになり、交際を経て結婚。結婚後は、他者の心が見えることで外で働くとトラブルが生じたり体調を崩すために専業主夫[注 7]となり、純を支えているが、彼女が里やに就職した頃から、「他者の本当の心を見る」ことが次第に減って無くなり、「里や」の厨房の料理指導を担当する。里やが焼失後、ホテルで働くことを諦めた純に対して憤り、実家に帰り勢いから離婚を切り出すが、母の説教を受け考えを改める。その後、純と共に宮古へ移住し、彼女のホテル開業準備の計画から工事まで率先して動き、オープンに向け新作メニュー制作を担当する。開業準備の過程で頭痛に悩まされていたが、プレオープン成功後脳腫瘍で突然倒れる。腫瘍は脳幹に達するほど症状は重く、腫瘍が取りきれなかったために、手術後は昏睡状態となる。それから約2年後にあたる、番外編『富士子のかれいな一日』において、桐野に近況を質問された純が、一呼吸間をおいてから、「一緒に花見をするなど仲良くしている」旨を語っているが、その時点での愛本人の登場シーンが無いことなど、はっきり元気になったとは描かれていないために、詳しい状況は不明である。
狩野家の人々

宮古島でリゾートホテル「サザンアイランド」を営んでいたが、善行に代替わりした後から負債を抱え、やがてホテル売却を機に一家離散状態となるが、善行の死に際してまとまりを取り戻す。晴海以外の家族(純・善行・正・剛)は全員クモが苦手。
狩野 善行(かのう ぜんこう)
演 -
武田鉄矢第2部までの登場[注 8]。純の父親。サザンアイランドの2代目社長。昭和30年(1955年)6月20日生まれ。3兄弟(正・純・剛)の祖父母に当たる父・和彦、母・智子の長男である。太宰治の『走れメロス』が大好きだったことから、晴海と交際していた頃、彼女から「メロちゃん」と呼ばれていた(この事で晴海が行方不明になった時に純から「メロちゃんは誰か」を聞かれた際に「自分が若い頃から呼ばれた渾名だ」と純に教えた)。人と話す時四字成語を好んで使う。大阪育ちで、家族との会話は関西弁で話す。カナヅチでお化けが苦手。だし巻き卵が好物。商社マンであったが仕事に失敗し、宮古島にある晴海の実家に一家で転居。不本意ながら義父・真栄田弘治が経営するサザンアイランドで働くが、宮古や近隣住民と馴染めず毛嫌いする。弘治亡き後、社長に就任するが、経営は右肩下がりとなり借金を抱える。台風の被害で大打撃を受け、猛反対する家族を欺き、借金返済を理由にホテルと自宅を売却する。客と取引先に対しては腰が低いが、頑固でプライドが高く、卑劣・非情な性格。常に後ろ向きな発言をし、何かにつけて四字熟語やことわざを用いて説教するため、家族から煙たがられている。ホテルの経営を巡る見解の違いや、人生観の相違、自らが立てた計画を阻止されたことなどから、純とは犬猿の仲であったが、内心は純の生き様を羨ましく思っていた。また、家出を繰り返す次男・剛とも折り合いが悪い。心中を読み明かす愛についても苦手に感じており[注 9]、彼の母・多恵子とも相性が悪い。正論ではっきりと意見するマリヤに対しては、いつも言い返せずにいる。大阪へ転居後は、後輩・梨田から提示されていた重役待遇の約束を反故にされ、閑職である隣の関連会社ビルの警備職に就職させられ、仕事に馴染めず家族に黙って退職。家族に発覚し妻の病状を目の当たりにしてショックを受け、家に寄り付かず行方をくらます日々を送る。昔の気持ちを思い出し、宮古へ戻って妻の介護に専念しようと改心した矢先、晴海が再び行方不明になってしまったことを純から知らされる。純と共に行方不明になった晴海を捜索し、海に落ちた晴海を助けようとしたが、自分が溺れて海に沈んでしまい、多臓器不全で意識不明の重体となった直後に死亡した。享年58。武田は本作が連続テレビ小説への初出演であり、遊川から「あんたは俳優生活40年良い役柄が多いからここからは悪役を演じて死んでくれ」と依頼された際に、当初は武田が演じる役柄から躊躇していたものの、還暦を過ぎて新しい役柄に面白さを感じて出演を決めたと明かしている。
狩野 晴海(かのう はるみ)
演 - 森下愛子純の母親。旧姓は真栄田。昭和36年(1961年)7月20日[注 10]生まれ。宮古島で生まれ育つ。「ミス宮古」になったほど若いころから美人であったことで、地元では有名人。結婚記念日は5月8日。マイペースで穏やかな性格だが、家族に問題が起こるたびにうろたえては純に甘えすがるなど頼りない。末子・剛にはかなり甘い。沖縄料理が得意であり、里やの板前・藍田に沖縄料理を指南する。夫の善行が実家の家業を継いでくれたことを感謝しているため、なるべく逆らわないよう心がけているが、内心では善行に振り回されてきた結婚生活に疑問といら立ちを感じていた。しかし善行の病状が極度に進行するにつれ、夫を幸せにしてあげられなかった、もっと夫を愛してあげれば良かったと自らを悔やむ。過去のサザンアイランドを取り戻したく、経営上の難点を指摘する純に陰で同意しているが、純の決断が失敗するとどんな経緯であっても純をキツく責める。自らの本心を読み家族に明かした愛を嫌悪し、純との結婚にも反対し続けていたが、徐々に打ち解け合えるようになる。サザンアイランドのビーチの所有権を持っていることを盾に、離婚覚悟でホテル売却を反対するが、善行がホテルの取り壊しを強行したため、諦めて善行と共に大阪に転居する。大阪での生活を始めてすぐ若年性アルツハイマーを発症し、医師の勧めもあり宮古へ帰りたいと善行に言うが反対されたショックで症状は悪化。夫の善行と恋人時代の「メロちゃん」が同一人物であることも認知できなくなるほど症状が進行する。善行の死後、剛と共に純と愛のアパートの隣室(かつて山田芽衣が住んでいた部屋)に移り住み、第3部では、ホテル開業に動き出した純と愛夫婦、長男の正一家とともに宮古に戻る。


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