納豆
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「納豆」の語で糸引き納豆を指したことが明らかな史料で、現存する最古のものは、15世紀御伽草子『精進魚類物語』である[12][25]。文中に、納豆を擬人化した武士「納豆太郎糸重」が登場する[26]。他方で、主に調味料として用いられた塩辛納豆は、味噌にとって代わられるようになった。

戦国時代において、武将のたんぱく源やスタミナ源ともなっていた。
近世

日本を訪れたイエズス会宣教師が作った『日葡辞書』(1605年)には、「Natto(納豆)」や「Natto jiru(納豆汁)」も収録されている[27]。料理書である『料理物語』(1635年)には、納豆汁に入れる具材として青菜や小鳥の肉、吸口としてカラシユズニンニクを挙げている[28]

江戸時代では、京都や江戸において「納豆売り」が毎朝納豆を売り歩いていたが、製法は容器に付着した納豆菌による自然発酵で行われていたため、不安定であったと考えられている[24]。江戸時代後期の風俗や事物を記録した『守貞謾稿』には納豆について書かれており、大豆を煮て熟成させて作るとあり、醤油をかけて食べたり納豆汁として食べていた。江戸時代の風俗事典『人倫訓蒙図彙』に書かれた納豆売りは、叩納豆と呼ばれる叩いて平たくした納豆を青菜とともに売っており、手早く納豆汁が作れるように工夫されていた[29]

納豆は9月以降に売られる季節商品だったものが、次第に時期が早まって1年中売られるようになった。また、自家製の納豆が多かった頃は田畑の畦で畦豆と呼ばれる豆を育てて納豆の材料にしていた[注釈 3][30]
近代以降

朝に納豆を売り歩く商売は、明治以降も続いた。学生、女性、老人が納豆売りになった他、子供が学校に行く前に働いて収入を得られる仕事でもあった[注釈 4][32]。筆者未詳の『納豆考』(1873年-1883年)によれば、当初はザル()に入れて笊納豆を売っていた。東京で納豆を売る際には、問屋から納豆を仕入れる他に、ザルを銭貨400文で借り、納豆を計る小升を銭200文で借りた。1873年(明治6年)頃から藁苞に入れた苞入納豆を売るようになり、笊納豆よりも安くて味がよかったとされる[33]

1894年の矢部規矩治による納豆の研究[34]以降、数多くの研究が行われた。1918年に半澤洵が純粋培養した納豆菌によって安定的かつ衛生的な製造方法が報告され[35]、1919年(大正8年)に「納豆容器審査改良会」を設立し、工場生産品の流通が始まった[36][24][37]

それを「大学納豆」と称して売り出し近代納豆の始まりとなる。「大学納豆」をいち早く取り入れてベンチャー企業を起こし、1920年(大正10年)に半澤式納豆製造の産業化を行ったのが宮城野納豆製造所(仙台市)の創設者で後の初代全国納豆協同組合連合会会長の三浦二郎である[38] [39] [40]。以降、納豆菌「宮城野株」は市販の納豆の始祖株となる三大株(宮城野株、高橋株、成瀬株)の内の一つ[41]

1933年(昭和8年)6月、群馬県高崎市で納豆による集団食中毒が発生。住民約300人が中毒症状を起こし、6人が死亡した[42]

第二次世界大戦中は軍用食として、終戦後は日本人を救う栄養食として食べられ[注釈 5]、日本に納豆が普及していった。常食される地域は長らく偏りがあった。1960年代以降の冷蔵輸送技術の発展と普及により[43]流通量が拡大し、全国的に見られるようになった。

2007年1月7日に放送された教養番組『発掘!あるある大事典2』で、納豆の摂取はダイエットに効果があると大幅にデータを捏造して紹介されたことから、多くの店舗で一時品薄状態や売り切れになった[44][45]
栄養・効果

血液凝固因子を作るのに不可欠なビタミンKや大豆由来のタンパク質が豊富であり、現在でも上質なタンパク質源とも言える。食物繊維は100グラム中に4.9 - 7.6グラムと豊富に含まれる[46]食物繊維オリゴ糖等と共にプレバイオティクスと呼ばれる腸内環境に有用な成分であり、納豆菌はプロバイオティクスと呼ばれ、これも腸内環境に有用と考えられている。納豆には抗菌作用が認められ、抗生物質が見出される以前は、赤痢[47]腸チフス[48]病原性大腸菌などの増殖を抑制する[49]作用があることから、腹痛や下痢の治療に用いられていた事がある[48]。納豆に含まれるジピコリン酸は抗菌作用を有し、溶連菌ビブリオ、病原性大腸菌などへの抗菌効果が認められている[50]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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