血液凝固因子を作るのに不可欠なビタミンKや大豆由来のタンパク質が豊富であり、現在でも上質なタンパク質源とも言える。食物繊維は100グラム中に4.9 - 7.6グラムと豊富に含まれる[46]。食物繊維はオリゴ糖等と共にプレバイオティクスと呼ばれる腸内環境に有用な成分であり、納豆菌はプロバイオティクスと呼ばれ、これも腸内環境に有用と考えられている。納豆には抗菌作用が認められ、抗生物質が見出される以前は、赤痢[47]、腸チフス[48]、病原性大腸菌などの増殖を抑制する[49]作用があることから、腹痛や下痢の治療に用いられていた事がある[48]。納豆に含まれるジピコリン酸は抗菌作用を有し、溶連菌、ビブリオ、病原性大腸菌などへの抗菌効果が認められている[50]。また、納豆菌には虫歯菌や歯周病菌の働きを抑制する効果があるので虫歯や歯周病を予防する効果がある事が知られている[51][52][53][54]。
納豆の摂取量が多いほど循環器疾患死亡リスクが低いとの報告がある[55]。
納豆には血栓を溶かす酵素が含まれており[56]、納豆から単離したナットウキナーゼを経口投与したイヌで血栓の溶解が観察されたという報告がある[57]。
納豆に含まれるビタミンK2は骨タンパク質の働きや骨形成を促進することから、ビタミンK2を多く含む納豆が、特定保健用食品として許可されている[58]。納豆を多く食べる習慣のある地方では、納豆をあまり食べない地方よりも骨折が少ないことが知られており、納豆に含まれるビタミンK2が骨折を予防する因子と考えられる[59]。また、ポリグルタミン酸にはカルシウムの吸収促進効果があるため、納豆から抽出されたポリグルタミン酸が特定保健用食品として許可されている[60]。納豆菌の一部には、安定した芽胞のまま腸内まで生きて到達してビフィズス菌を増やし腸内環境を正常化する効果があることから、そのような効果を持つ納豆が特定保健用食品として認可されている[61]。大豆としての栄養・効果については「ダイズ#健康への影響」を参照
多くのマメ科植物の種子と同様に、ダイズ種子中には有毒なタンパク質性のプロテアーゼ・インヒビターやアミラーゼ・インヒビターやレクチンが含まれているため、生食はできない。そのため、加熱してプロテアーゼ・インヒビターやアミラーゼ・インヒビターを変性・失活させて消化吸収効率を上げている。なお、加熱してもプロテアーゼ・インヒビターの失活は十分ではないので、納豆菌などを繁殖させて納豆菌の分泌するプロテアーゼによってダイズ種子中のタンパク質を分解させると、タンパク質の消化吸収効率が増大する。
米飯食、米飯+大豆食、米飯+納豆食で食後血糖値を比較したところ、米飯+納豆食、米飯+大豆食、米飯食の順で血糖値の上昇が少なかった。納豆の水溶性食物繊維や粘性の高い成分が血糖値の抑制に貢献した可能性がある[62]。
『本朝食鑑』には「腹中をととのえて食を進め、毒を解す」とあり、整腸作用[63]は古くから知られている。これは、納豆菌が胃酸に耐えて腸まで生きたまま届くためである[64]。
廃物も利用されている。ニワトリの飼料に加えることで、鶏卵のコレステロールを低減させることが報告されている[注釈 6]。また、冷蔵庫で長期保存すると白いカビのような物が発生するが、これはチロシンというアミノ酸の一種で、風味は変化するが食べても差し支えはない。
イソフラボン (免疫力増強作用・ホルモンバランス正常化作用)、レシチン (整腸・抗菌殺菌効果)、サポニン (抗菌殺菌・高血圧・血栓予防)の効果がある。「納豆食うひと、色白美人」の諺(ことわざ)[注釈 7]があるほど、納豆は整腸効果や満腹効果以外に、良質な栄養源であり健康に役立つ食品である[66]。
必須元素のセレンが大量(234μg/100g)に含まれているとする説[67]があるが、原料の大豆は含有量 17.8 μg/100g なので疑問がある。 納豆菌を使用して発酵させるため、納豆菌特有の発酵時の臭気がある。@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}68種類のにおい成分から構成されている[要出典]。代表的な「ピラジン」は、アーモンドやココア、パン、味噌・醤油、ほうじ茶にも含まれる臭気である。中には「アンモニア」成分も含まれており、発酵が進みすぎたり10℃以上で保管されていたりすると時間と共にアンモニア臭が強くなる[43]。「わら納豆」は藁の臭気、経木で包んだものはその木の臭気が加わる。また、発酵室内で薫煙処理を行う場合もある。納豆を苦手とする人はこの臭気を理由に挙げることが多く、近年では臭気を抑えた製品も市販されている。 ビタミンK2は、抗凝血薬(ワルファリン)の作用を弱めることから、ワルファリン服用中は、納豆を食べないこと[68][69]。 一般家庭でも納豆を作ることができる。必要なものは、十分に蒸したあるいは茹でた大豆と納豆菌(納豆そのもので代用可)と、納豆菌が生育する適度な温度(30 - 45℃)、適度な湿度、適度な時間(1 - 2日)、十分な酸素である。適度な温度や十分な時間や酸素がないと納豆にならず煮豆のままとなる。適度な湿度がないと乾燥大豆になり、過剰な時間だと腐敗同然のアンモニア臭に満ちることになる。 伝統的な納豆の作り方は、蒸した大豆を稲の藁苞(わらづと)で包み、40度程度に保温し約1日ほど置いておく。稲藁に付着している納豆菌が大豆に移行し、増殖することによって発酵が起こり、納豆ができあがる。日本における納豆の起源については、「聖徳太子が馬の飼料として残った煮豆を藁で包んで置いたら出来上がった」[70]「後三年の役で農民が供出した煮豆の藁包みが、糸を引きつつ良い香りを放ち始めたので食べられるようになった」[71]「文禄・慶長の役の際に俵詰めした煮豆が載せていた馬の体温で発酵した」[72]といった伝説があり、いずれも藁についた納豆菌による自然発酵が契機になっている。 納豆用の藁には一定の長さと品質が求められ、手作業で丁寧に刈り取った稲をおだ掛けした自然乾燥させた物が必要となるが、こうした農家は機械化や高齢化で激減している。米価の下落や飼料用米への転作などもあり、藁不足が深刻になっている[73]。このため水戸市と納豆メーカーが稲藁確保のための協議会を設立し、加工機材の貸し出しなどに取り組む[74]。 大量生産の要求に応えるため、純粋培養した納豆菌を用いる製造が主流である。衛生的で近代的な工場生産の手法を確立したのは半澤洵で、半澤は1930年代に研究を重ね[75]納豆菌の純粋培養法と衛生的で安定した納豆の製造方法を確立した[24]。 蒸した大豆に純粋培養した納豆菌の分散液をかける。次いでこれを発泡スチロール容器や紙パックに充填し40-42℃で6時間程度保温すると納豆菌の増殖に伴う発酵熱で温度が上昇し、18-24時間経過後、冷却により発酵を停止させる。流通段階でのアンモニア増加を抑制するため10℃以下に保ち[43]、食品衛生法など必要な法令により求められる表示が行われ出荷される。
臭気
医薬品との相互作用
作り方
自然発酵による伝統製法藁苞に包まれたわら納豆
近代的製法
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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