紅の豚
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本編は1929年頃の物語[注 3]で、既にイタリアは1922年ローマ進軍以来、ムッソリーニ率いるファシスト党独裁下となっている。

1931年から本格的にヨーロッパへ波及する大恐慌の足音や、この当時一世を風靡したアニメーションベティ・ブープに似た映画、ライバル役のカーチスが1933年のラジオドラマ『ローン・レンジャー』の名台詞「ハイヨー、シルバー!」を口にするなど、当時の世情をうかがわせる描写がちりばめられている。
あらすじ

ファシスト政権が統治する戦間期のイタリア。深紅の飛行艇サボイアを操る豚のポルコ・ロッソは、かつて人間だった頃イタリア空軍のエースだったが、今はアドリア海の小島に隠棲し、空中海賊(空賊)退治を請け負う賞金稼ぎとして暮らしている。ある晩、昔馴染みのジーナが営むホテル・アドリアーノを訪れたポルコは、米国製の水上機を操るアメリカ人カーチスに出会う。カーチスは空賊連合が雇った用心棒だった。彼はポルコを撃墜して名を挙げたいと考える。

しばらく後、サボイアのエンジン整備の為ミラノに向かって飛んでいたポルコはカーチスと遭遇し、エンジン不調のまま撃墜されてしまう。ポルコは大破した愛艇をミラノの工房ピッコロ社に持ち込むが、ピッコロのおやじの孫でまだ17歳の少女フィオが共同で修理に当たるという。ポルコは不安を感じて一時はよそを当たろうと思うが、フィオの熱意にほだされて愛機の設計を任せる。

一方、ファシスト政権に非協力的なポルコは、ミラノでも逮捕しようとする秘密警察や空軍に追われていた。警告に来たかつての戦友フェラーリンは空軍への復帰を薦めるが、ポルコにそのつもりはない。やがてフィオの才能と献身によってサボイアは復活し、「人質」という建前でフィオも乗せたサボイアは秘密警察を振り切って離陸する。

ポルコがアドリア海の隠れ家に帰還すると、空賊連合とマンマユート団が待ち受けていてサボイアを叩き壊そうとするが、フィオは毅然とした態度で空賊達を一喝して黙らせる。その場に居合わせ彼女のその様を見て一目惚れしたカーチスは、ポルコとの勝負でカーチスが勝利を収めた暁にはフィオを嫁にもらうという条件で結婚を申し入れ、フィオはポルコが勝利した場合はサボイアの修理代全額をカーチスが負担するという条件で承諾。困惑するポルコをよそに、フィオの運命をかけた決闘が取り決められる事態となった。

決闘当日、ポルコとカーチスのドッグファイトは決着がつかず、素手の殴り合いにまでもつれ込んだ末、ダブルノックアウトの後に辛うじて立ち上がったポルコが勝者となる。フェラーリンからの密告でイタリア空軍が迫っている事を知って駆けつけてきたジーナの一報により、空賊や見物に来ていた群衆達が散り散りに逃げていく中、ポルコとフィオにも不意に別れが訪れる。

フィオのモノローグでその後が語られつつ物語は幕を閉じる。
登場人物登場人物達のコスプレ(イタリア・ルッカコミックス2012)。下段左からマダム・ジーナ、ポルコ・ロッソ、フィオ・ピッコロ、上段にマンマユート・ボス。
ポルコ・ロッソ(Porco Rosso) / マルコ・パゴット(Marco Pagot)
声 - 森山周一郎(青年時代:古本新之輔)本作の主人公で、口髭をたくわえた豚人間[注 4]の姿になっている男。映画パンフレット[23] によれば、軍に戻る事を拒否して自分自身に魔法をかけたのだという[24]。通称はイタリア語で「赤い豚(紅の豚)」という意味。1892年 - 1893年生まれの36歳。17歳の頃から飛行機を乗り回し、イタリア空軍入隊後は大尉まで昇進し、第一次世界大戦ではエース・パイロットとして華々しく活躍していた。退役した現在は、全体を艶やかに赤塗りした飛行艇サボイアS.21試作戦闘飛行艇[注 5]に乗って空賊相手の賞金稼ぎとして荒稼ぎしている。一方で、かつて大戦中に嵐の海に落ちた敵パイロットを助けたなどの義侠心あふれる逸話も伝わっていて、豚の姿となった今でも多くの女性たちにモテる人気の飛行艇乗りである。ピッコロ一族のバァちゃん達には、「ポルチェリーノ(ブタちゃん)」と呼ばれている[25]。腕の良い賞金稼ぎとして幾多もの空賊を撃退しているが、「戦争ではないから殺しはしない」というポリシー[注 6]を持っている[26]。機動性に優れる戦闘機同士の空戦では「ひねり込み」と呼ばれる戦闘機動を得意とし、彼同様に優れたパイロットであるカーチスですらはめている。普段は、アドリア海にある無人島の隠れ家で自由気ままな暮らしを送っている。街に出る時には白い背広に赤いネクタイを着用し、上からカーキ色トレンチコート姿、ボルサリーノソフト帽を被り、夜中でも黒眼鏡を常用して目元を隠しているが、顔を洗うシーンで素顔を見せている[注 7]。原作『飛行艇時代』ではジェノバ市出身で、機体にも垂直尾翼にジェノバ市の市章を描き入れている。また出身地故に共和派である。ジーナとは幼馴染みである。フィオにアジトで眠る前に何か話をしてと頼まれた時、ジーナの最初の夫で自身の戦友ベルリーニの死んだ時の様子を話した。その際、彼がベルリーニの代わりに自ら死を選ぼうとする描写があった。元空軍のエースパイロットだが現在は軍を嫌い、その為に秘密警察から常時監視されている。空軍に残った友人との縁は切れておらず、空軍復帰を強く望まれているが、ポルコは拒否している。終盤、フィオが彼の口にキスをした事で、その顔に変化があった描写があるが(カーチスに顔を見られている)、その時の顔は意図的に写されていない。名前の由来は日伊合作アニメ『名探偵ホームズ』の伊側プロデューサー、マルコ・パゴットから。声優は、宮崎が海外ドラマ『刑事コジャック』のファンだった事から、コジャック(テリー・サバラス)を吹き替えた森山が起用された[29]。トレンチコートに帽子とサングラスという外見は、コジャックと同じである。また森山のもう一つの代表作であるジャン・ギャバンの芝居の影響もあるとの指摘もある[30]後年のスタジオジブリ作品『平成狸合戦ぽんぽこ』の妖怪大作戦で、赤いサボイアS.21に乗って空を飛ぶポルコが一瞬映る他、『耳をすませば』に登場するドワーフの大時計に「Porco Rosso」と刻まれている形で氏名のみ登場する。


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