精神障害
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ICIDHにおける impairment は「(一時的または永続的な)機能障害」を意味する用語で、disability は「(一時的または永続的、可逆的または不可逆的、進行的または退行的な)能力障害」を意味する用語である[29][30]。また、ICF における disability は「(全般的な)障害」を意味する包括的な用語である[31]
アメリカ精神医学会詳細は「精神障害の診断と統計マニュアル#障害定義」を参照

1952年、アメリカ精神医学会(APA)はDSM (Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders) の第1版を出版し、同学会における用語を mental disease から mental disorder に変更した[注釈 3]。また、基本用語の disorder について、精神医学的症候群関連のグループを表わす最も広義の言葉と説明している[33]

DSM-IV(第4版)でも mental disorder という用語を採用している[3]。単なる不安などと区別するために重症度の概念があるため、持続的な症状の経過があり、症状が著しい苦痛や機能障害をもたらしている場合に精神障害である[34]

最新のDSM-5(第5版)による定義において、精神障害は社会的、職業的また他の重要な活動における著しい苦痛や機能の低下と関連しており、よくあるストレスや死別のような喪失による予測可能な反応や、あるいは文化的に許容できる反応は精神障害ではないと定義されている[2]

DSM-III(1980年)、DSM-III-R(1987年)、DSM-IV(1994年)、DSM-IV-TR(2000年)では、精神障害の定義に関して、「統合失調症患者(a schizophrenic)」という人間を分類する表現は誤解を招くため、「統合失調症を有する人(an individual with Schizophrenia)」というぎこちないがより正確な表現を採用すると説明している[35][36][37][38]。統合失調症患者(schizophrenics)が存在するのではなく、統合失調症(schizophrenic disorder)の診断基準を満たす症状を有する人々がいるだけである[37][38][39]

訳語について挙げる。DSMの邦訳は、滋賀医科大学の高橋三郎を中心として行われ[40]、DSM-III(第3版)では精神障害の訳語であったものが[41]、DSM-IV(第4版)では精神疾患の訳語となった[19]。DSM-5(第5版)では、精神疾患の訳語である。

1995年、DSM-IV日本語版(1996年出版)の翻訳者の一人である大野裕は、ICD-10関連書籍の書評で「気になった点を挙げてみたい。まず第1は、mental disorder の訳語である。この用語に的確な訳語を見つけるのはなかなか難しい。本書では、精神障害という用語が当てられているが、評者はむしろ精神疾患の方がよいのではないかと考えている。mental disorder を精神障害と呼んでしまうと、精神障害の概念が拡散してしまう危険性があるからである」と述べている[42]

2014年、DSM-5日本語版の「訳者の序」で、最大の課題は用語統一だが、DSM-IV の翻訳作業と違って日本精神神経学会の支援を得られたと説明している。日本精神神経学会が編集した「DSM-5 病名・用語翻訳ガイドライン(初版)[注釈 4]」や『精神神経学用語集改訂6版[注釈 5]』に準拠しており、その他の新用語は監訳者の責任で訳している[43]。ただし、邦訳された DSM の書籍名の『精神疾患の診断・統計マニュアル[44]』と、日本精神神経学会の用語集にある『精神障害の診断と統計の手引き[45]』のように、準拠していない用語もある。

また、アメリカ心理学会(同じくAPA)の辞典では mental disorder は精神障害と訳されている[46]
日本医学会及び分科会

2007年、日本医学会は医学用語の標準化に向け、『日本医学会医学用語辞典英和第3版』を出版した[注釈 6]。同書は Mental Disorder を精神障害、Diagnostic And Statistical Manual of Mental Disorder を「精神障害の診断と統計の手引き」と訳している。また、Mental Disease と Mental Illness を共に精神疾患と訳している。日本医学会分科会の日本精神神経学会も作成に参加している[48]

2008年、日本精神神経学会は精神科学術用語を収載した『精神神経学用語集改訂6版』を出版した。同じく精神障害、「精神障害の診断と統計の手引き」と訳している。また、Mental Disease、Mental Illness、精神疾患、という項目はない[49]日本神経学会の『神経学用語集改訂第3版』も同じである[50]
医学大辞典

『最新医学大辞典第3版』『医学書院医学大辞典第2版』『南山堂医学大辞典第19版』の外国語索引に Mental Disease、Mental Illness はない[51][52][53]。『最新医学大辞典第3版』『医学書院医学大辞典第2版』には「精神障害(Mental Disorder)」の項目はあるが、精神疾患の項目はない[51][52]。『南山堂医学大辞典第19版』も同様だが、「精神障害(Mental Disorder)」の項目内で精神疾患の語も使用している。精神障害は、精神病(psychosis)のような狭義の精神疾患だけでなく、精神発達障害のような精神状態の偏りや行動の異常も含むと説明している[54]

『ステッドマン医学大辞典改訂第6版』は Mental Disorder を精神障害と訳している。また、Mental Disease、Mental Illness、Psychosisを精神病と訳している[55]
日本の文部科学省

2003年、文部科学省は医学用語の標準化に向け、『学術用語集医学編』を日本医学会との共編で出版した[注釈 7]。同書は Mental Disorder、Mental Disease、Psychosis を順に、精神障害、精神疾患、精神病と訳している。また、Mental Illness という用語はない。[57][58]

文部科学省所管の科学技術振興機構は「精神障害(Mental Disorder)」を「精神病(Mental Disease、Mental Illness、Psychosis、精神疾患、こころの病気、精神病状態)」の上位語と説明している[59][60]
日本の厚生労働省

2009年、厚生労働省の「精神障害等の労災認定に係る専門検討会」は、「精神疾患」「精神病」の語について、「厳密な定義を持たないまま使用されている」と説明している[61]
日本の法律「精神保健の歴史#日本での歴史」も参照

1900年、精神病者監護法が制定された[62]

1950年、精神衛生法が制定された[63][62]。同法において「精神障害」の概念が提起され、精神障害の語は行政や医療関係者の間で法律用語として定着した[62]。「精神障害者」は「精神病者(中毒性精神病者を含む。


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