精神遅滞
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Levine and Marks 1928 IQ分類[7][8]IQ範囲IQ 分類
175以上Precocious
150?174Very superior
125?149Superior
115?124Very bright
105?114Bright
95?104Average (平均的)
85?94Dull
75?84Borderline(境界例)
50?74Morons
25?49Imbeciles
0?24Idiots

基本的には、知能指数が100に近い人ほど人数が多い。しかし、知能指数の種類によっては最重度まで正確な存在数比率を出せない場合もある[9]

歴史的には、Albert Julius LevineとLouis Marksは1928年の著書Testing Intelligence and Achievementにてカテゴリ分類を提案した[10]。この表で用いられている表現は、知的障害のある個人を分類するための現代的な用語に由来するものである。

教育の分野では、軽度の生徒を「教育可能」、中度の生徒を「訓練可能」と分類する。医学的に考えると精神年齢は12歳以下と推定される(厚生労働省などの発表)。
ボーダー(境界域)
知能指数は70 - 85程度(精神年齢に換算すると11歳3か月以上12歳9か月未満)で、境界知能と呼ばれる。知的障害者とは認定されない。
軽度 F70
知能指数は50 - 69程度(7歳6か月以上11歳3か月未満)。理論上は知的障害者の8割あまりがこのカテゴリーに分類されるが、本人・周囲ともに障害の自認がないまま社会生活を営んでいるケースも多いため、認定数はこれより少なくなる。生理的要因による障害が多く、大半が若年期の健康状態は良好。成人期に診断され、療育手帳が支給されないこともよくあるという。近年は障害者雇用促進のために、精神障害者保健福祉手帳(とくに3級程度)の所持者が増える傾向にある。[注釈 3]
中等度(中度)F71
知能指数は35 - 49程度(5歳3か月以上7歳6か月未満)。合併症が多数と見られる。精神疾患などを伴う場合は、療育手帳の1種(重度判定)を満たすこともできる。
重度 F72
知能指数は20 - 34程度(3歳以上5歳3か月未満)。大部分に合併症が見られる。多動や嗜好の偏りなどの問題が現れやすい。自閉症を伴う場合、噛み付きやパニック、飛び出しなど問題行為が絶え間ないケースが多い。精神障害者保健福祉手帳の対象とはならない。
最重度 F73
知能指数は19以下程度(精神年齢3歳未満)。大部分に合併症が見られる。寝たきりの場合も多い。しかし運動機能に問題がない場合、多動などの問題行為が課題となってくる。重度と同様、精神障害者保健福祉手帳の対象とはならない。
多元的アプローチによる分類

多元的アプローチによる分類としては、以下のようなものが挙げられる[11]。また、AAMR第9版においてなされている定義では、(1)精神遅滞の概念を広げること、(2)IQ値によって障害のレベルを分類することはやめること、(3)個人のニードを、適切なサポートのレベルに結びつけること、の3点を意図している。
一時的(intermittent)
必要なときだけの支援
限定的(limited)
期間限定ではあるが、継続的な性格の支援
長期的(extensive)
少なくともある環境においては定期的に必要な支援
全面的(pervasive)
いろいろな環境で長期的に、しかも強力に行う必要がある支援
大島分類表大島分類

運動能力と知能指数による分類として、大島一良による大島分類が使用されている。左の表は大島分類の表に障害別の大まかな分布範囲を表記したものであるが、個人差があることに注意されたい。

大島分類では、分類1 - 4に該当するものを定義上の「重症心身障害児」(ただし、児童福祉法上の話であり、学校教育法上は、重度重複障害の一種にすぎない)とし、分類5 - 9に該当するものを「周辺児」と呼んでいる[12]
判定

日本では以下の通り公的機関による知的障害の判定が行われる。

18歳未満の場合は児童福祉法に基づく児童相談所が知能指数と生活能力、就学能力を総合的に判断して知的障害の判定を行う。18歳以上の場合は知的障害者福祉法に基づく知的障害者更生相談所(設置する地方自治体によって名称が異なる場合がある)が知能指数と生育歴、生活能力、就業能力を総合的に判断して知的障害の判定を行う。都道府県知事もしくは政令指定都市の長は判定機関の判定書に基づいて療育手帳の交付を行う。

障害者雇用促進法においては児童相談所及び知的障害者更生相談所の他、地域障害者職業センター精神保健福祉センター精神保健指定医が職業能力評価の一環として知的障害の判定を行うことができる[13]。ただし同法に基づいた判定書は障害者雇用促進法に関する事項にのみ使うことができる。例えば知的障害の判定を受けた者は障害者雇用の対象になり、雇用率算定の対象となる。しかし、所得税法による障害者控除の対象とならず、療育手帳の交付事務に対しては参考材料にしかならない。
知的障害とその他の発達障害の関連
知的障害と自閉症自閉症とアスペルガー症候群との比較[14]

自閉症」という障害は、知的障害があるもの(古典的自閉症)と、知的障害がないもの(高機能自閉症アスペルガー症候群;いわゆる高機能PDDと称される)に便宜的に分類されているが、その他の関連した障害を含めて自閉症スペクトラム障害という連続した障害と分類されている[14]。現在の精神障害の診断と統計マニュアル第5版では、(古典的)自閉症、アスペルガー症候群、高機能自閉症、特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)の4つを包括し、自閉症スペクトラムと規定された。

広汎性発達障害(厳密には、知的障害のないものについては、高機能広汎性発達障害(いわゆる高機能PDD)となる)という用語がほぼ同義語として機能している。知的障害は、知能面(IQ)の全体的な障害であり、自閉症の本質であるコミュニケーション障害は、対人関係面を主とした障害である。昔から知られている種類の自閉症は狭義の自閉症のことであるが、これはコミュニケーション障害と知的障害が合わさったものである。近年知られてきた種類の自閉症である高機能自閉症は、コミュニケーション障害のみであり、知能指数の全体平均は知的障害の域に達しない。しかし、知能指数を要素別に計測すると、各要素間に大きな差が見られる。

軽度発達障害に使われる「軽度」、およびその一つにカテゴライズされる高機能広汎性発達障害(高機能PDDのことで高機能自閉症も含む)に使われる「高機能」とは、いずれも、本稿で説明されている「知的障害」がないながらも障害が発生している、というニュアンスで用いられており[14]、決して、障害の度合いや複雑さなどを表す接頭辞として使われていない点に十分注意する必要がある。このため、近年では、「軽度」という用語では誤解を招く恐れがあることから、単に「発達障害」とのみいう場合や、「(軽度)発達障害」と表現するケースが多い。

「重度重複障害」などに使われる「重度」は、上述の「軽度」の対義語として使用されており、すなわち、「知的障害の度合いが重い重複障害」ということを意味する(ただし、主たる障害は知的障害以外にある点に注意)。

IQが35未満では、半数以上が自閉症を併発すると報告されている。
学習障害と知的障害の違い

学習障害は読み・書き・計算など学習面の障害があるが、会話能力・判断力などの知能の面では障害が認められない。知的障害は、学習面に加えて知能面にも障害を持つ。
社会における歴史と現状「精神保健の歴史」も参照
呼称の変遷

以前は、「独:schwachsinn」「英:feeble mindedness」「英:mental deficiency」などの外来語の直訳として「精神薄弱(せいしんはくじゃく、略称・精薄)」という用語が広く使われており、法律用語にも多用されていたが、「精神」という言葉は人格も含むうえ、精神障害と混同されやすいため、関係団体などでは「知的障害」という用語が使われるようになった。2000年(平成12年)3月からは法律上の表記も、知能面のみに着目した「知的障害」という用語に改められた。

また、かつては重度知的障害を「白痴」、中度知的障害を「痴愚(ちぐ)」、軽度知的障害を「魯鈍・軽愚(ろどん、けいぐ)」と呼称しており、これらの用語は法律などにも散見されたが、偏見を煽るとして「重度」「中度」「軽度」という用語に改められた。

医学的な診断名には「英:mental retardation:MR」の訳として「精神遅滞(せいしんちたい)」、「精神発達遅滞(せいしんはったつちたい)」という用語が用いられる。これらは「知的障害」と同じ意味で使われる場合が多い。ただし、厳密な医学的分類では「精神遅滞」・「精神発達遅滞」と「知的障害」を使い分ける場合もある。DSM-IVやアメリカ精神遅滞学会 (AAMR) の定義では、「精神遅滞」は「知的障害」の症状に加えて生活面、すなわち「意思伝達・自己管理・家庭生活・対人技能・地域社会資源の利用・自律性・学習能力・仕事・余暇・健康・安全」のうち、2種類以上の面にも適応問題がある場合をさす。しかし、こういった生活面に適応問題があるかどうかを判断するのは難しく、現実的には知能のみで判断しているので、知的障害と精神遅滞は同義語だと考えても差し支えない。

現在では、教育分野や行政マスコミなどでは、「知的障害」や「知的発達障害」や「知的発達遅滞」と呼ばれることが多く、医学関係では、「精神遅滞」や「精神発達遅滞」と呼ばれることが多い。


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