精神科
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ソ連反体制者が政治目的で特殊精神病院に送られていることが、1971年の世界精神医学会(英語版)第5回世界大会において正式に告発され[11]、その思想が向精神薬や精神療法によって矯正されるまで閉じ込めていた[12]。また中華人民共和国でも旧ソ連同様に政治目的で精神病院が利用されており、例えば新宗教である法輪功のメンバーが強制入院させられている[12]
各国の状況[ソースを編集]「メンタルヘルス#各国の精神保健」および「精神保健の歴史」も参照
フィンランド [ソースを編集]

フィンランドの西ラップランド地方で、1980年代に始まったものにオープン・ダイアローグ療法がある。統合失調症の発症初期に24時間以内にチームで訪問し、できるだけ薬物を使わず、患者の妄想に対しても対等な目線で介入し、対話の中で症状の緩和を目指し、モノローグダイアローグへと開いてゆくことなどを試みる。@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}2年後の追跡調査で、症状再発がないあるいは軽いものにとどまった患者は82%(通常は50%)、再発率は24%(同71%)と高い成果がある。[要出典]日本をはじめとする世界中で注目を集めており、日本では「オープン・ダイアローグ・ネットワーク・ジャパン (ODNJP) 」という団体が、斎藤環、石原孝二、高木俊介を中心に発足している。ただし日本では健康保険の給付対象として認められていない。
イギリス[ソースを編集]

近年は薬だけに頼らない精神医療を推進し、自殺予防に大きな効果をあげた。重症度に応じたケアの仕組みを導入し、中心に認知行動療法を据えた(心理療法アクセス改善)。薬物療法は症状が重い場合のみ認知行動療法と併用している。英国国立医療技術評価機構で医療機関向けのガイドラインを作り、単剤少量での治療を順守させた。そのほか地域ケアの充実も図った。こうした取り組みにより、ブレア政権下の1997年から2007年の10年間で、人口10万人あたりの自殺者数は9.2人から7.8人と15.2%減少した[13]
フランス[ソースを編集]

1970年代よりセクトゥール制といわれる地域医療が発達している。この制度はフランス特有の公的精神医療・福祉サービス体制であり、公立病院 (81%) への入院、外来、地域医療、福祉をすべて一貫して県の組織で行い、私立以外はすべて無料である。入院内・外の継続治療、病気の予防や発症の早期発見などが一つの機関で行え、CMP(医学心理センター)、Hopital de jour(昼間病院、デイケア)、Appartement therapeutique(治療アパート)、CATTP(時間限定治療センター)などを備えているのが特徴。このセクトゥール制に属する病院はフランス全土に950存在し、公的精神病床数は61500床あり、約6600人の精神科医が配置されている[14]
イタリア[ソースを編集]

1978年に世界初の精神病院廃絶法である、通称「バザリア法」が成立[15]。予防・医療・リハビリは原則として地域精神保健サービス機関で行う。やむを得ない場合に対処するために一般総合病院にも15床を限度に設置するが、そのベッドも地域精神保健サービス機関の管理下に置く。治療は患者の自由意志のもとで行われるが、やむを得ない場合には定まった条件を満たした場合のみ強制治療はある[16]。これによりイタリア各地における精神医療サービスは、それまでの入院中心から地域・外来治療中心へと展開した[17]

現在のイタリアの精神医療は、精神病院の閉鎖と、その後の地域中心型精神医療サービスへの移行に成功している好例である。

各州にある地域医療事業体 (ASL) には精神保健部門の設立が義務付けられ、医師などによる医療チームが配置され、成人の精神保健全般のニーズに応える。各ASLの精神保健部門には、地域精神保健センター、総合病院内の精神科入院病棟、デイホスピタルやデイセンターのような生活・居住訓練施設、援護寮などの居住施設を設置運営しており、長期の包括的介入や地域ケアも担当する。地域精神保健センターは、月曜から土曜まで開いており、地域住民はいつでも直接予約の上受診できる。その他患者のニーズに応じて訪問活動も行われる。総合病院内の精神科入院病棟は、公立の総合病院に付設されており、退院後は地域の精神保健サービスにつながるように紹介される。基本的には自由入院であるが強制入院も含まれる。ここで働く精神科医はASL所属であり、コンサルテーション・リエゾンなども行う。デイホスピタルは重症患者へ中長期的の治療が行われる外来部門であり、精神保健センターと連携している。デイセンターでは生活訓練や社会技能訓練を行う。援護寮などの居住施設では、心理社会的リハビリテーションに力をいれており、ニーズに合わせ様々なプログラムが存在する。このデイセンターは社会的孤立を避けるため、都市部への設置が定められている。

なお、これらの諸施設の設置は法で定められているものだが、イタリア国内での地域差が大きい。

薬物依存と児童思春期の部門は独立して存在しており、精神科の範疇ではない。

イタリア国内に精神科医は5,094名、精神科看護師1,5482名、心理士1,785名が存在する(1998年調べ)[17]

アメリカ合衆国[ソースを編集]

時代を経て、1950年代から1960年代には、高い治療費を払って精神科にかかり精神分析を受けることがステイタスシンボルとなった。同時期の1952年には、アメリカ精神医学会が精神疾患に関するガイドライン「精神障害の診断と統計マニュアル」初版 (DSM-I) を発行した。さらに1970年代から1980年代にかけては境界例の患者が急増した。この頃から民間の保険会社が治療費を支払うことが多くなったが、半年から1年単位の長い入院が必要になるなど治療に時間がかかることから、高額の保険料支払いなどが負担となり、保険会社の倒産などの事例がみられるようになった。こうした事情を受け、1990年代頃には保険会社によるマネージメントケア(管理医療)はきわめて厳しいものとなった[18]

患者入院した場合を例にとる。まず保険会社のケースマネージャーが医療機関に電話をし、入院理由、治療目標、治療方法などを医師に尋ね、何日かの入院を許可する。マネージャーは数日後にまた電話をし、現在の病状、治療目標などを尋ね、医師と薬剤や退院日の示談をする。薬剤のチェックにも厳しいため日本のような多剤併用例は少なく、必然的に最小量で最大の効果を出せる薬剤の選択が求められる。入院はこのような短期入院がほとんどであり、民間保険会社の介入はアメリカの入院治療の質の低下の一因となったといわれる。また、自殺念慮のある患者を早期に退院させ自殺してしまった例などで、保険会社が訴えられ被保険者側が勝訴するなどの事例もあった。そうしてこのような厳しいマネージケアに対する反省が高まった結果、少しずつ緩和されていった[18]。また1990年代頃から増えた多重人格障害などの患者に対しても、外来での面接回数の制限があり、おおよそ2、3か月の治療で終了する。そのため、精神科医には高い能率性が求められ、治療能率が悪い医師は淘汰される。なお精神科医の指定も保険会社が行うことが大半である[18]

アメリカの私立精神科病院は医師を雇わない。自らのオフィスを有する精神科医が、自分の受け持った患者を入院させ、病院の看護師作業療法士ケースワーカー臨床心理士などのスタッフと協力して治療に当たり、毎週ケースカンファレンスや家族療法、患者も参加するデイリーミーティングを行うなど、きめ細かい医療を提供している[18]

独立・個人志向の強いアメリカ合衆国では、地域で生活している精神障害者に対する偏見は少ない。雇用も助成があるため問題なく進む場合が多い[18]
日本[ソースを編集]日本における歴史については「日本の精神保健#歴史」を参照

日本では、2006年の調査で精神科を利用している患者は約320万人おり、その数は年々増加する傾向にある[19]国立精神・神経医療研究センター松本俊彦は「今の診療報酬体系では、精神科医が1人の患者に時間をかけて話を聞きにくい。短い診察時間だと患者は医師を信頼せず、薬をもらうだけの関係になりやすいため、過量服薬につながる可能性が高まる。じっくり患者の話に耳を傾けることで患者とのつながりを作れる体制を整える必要がある」と語る[20]。診療所や病院の外来における診療時間は概ね10分以内である。

また高齢化に伴いアルツハイマー病など認知症の患者も増えており、外来と入院を合わせた患者数は約38万人で、1996年から2008年の12年間で認知症患者数は3.5倍増加している。しかし介護分野からの推計によると、200万人以上もの認知症患者が存在すると見られ、2030年には350万人に増えると予想される。今後精神科をはじめとした医療機関の負担もさらに増すと見られている[19][21]


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