精神科
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なお精神科医の指定も保険会社が行うことが大半である[18]

アメリカの私立精神科病院は医師を雇わない。自らのオフィスを有する精神科医が、自分の受け持った患者を入院させ、病院の看護師作業療法士ケースワーカー臨床心理士などのスタッフと協力して治療に当たり、毎週ケースカンファレンスや家族療法、患者も参加するデイリーミーティングを行うなど、きめ細かい医療を提供している[18]

独立・個人志向の強いアメリカ合衆国では、地域で生活している精神障害者に対する偏見は少ない。雇用も助成があるため問題なく進む場合が多い[18]
日本[ソースを編集]日本における歴史については「日本の精神保健#歴史」を参照

日本では、2006年の調査で精神科を利用している患者は約320万人おり、その数は年々増加する傾向にある[19]国立精神・神経医療研究センター松本俊彦は「今の診療報酬体系では、精神科医が1人の患者に時間をかけて話を聞きにくい。短い診察時間だと患者は医師を信頼せず、薬をもらうだけの関係になりやすいため、過量服薬につながる可能性が高まる。じっくり患者の話に耳を傾けることで患者とのつながりを作れる体制を整える必要がある」と語る[20]。診療所や病院の外来における診療時間は概ね10分以内である。

また高齢化に伴いアルツハイマー病など認知症の患者も増えており、外来と入院を合わせた患者数は約38万人で、1996年から2008年の12年間で認知症患者数は3.5倍増加している。しかし介護分野からの推計によると、200万人以上もの認知症患者が存在すると見られ、2030年には350万人に増えると予想される。今後精神科をはじめとした医療機関の負担もさらに増すと見られている[19][21]
病床過多[ソースを編集]

病床と入院患者数の推移(各年6月末時点)[22]全精神病床数入院患者数措置患者数措置率病床利用率
2000年358,597333,3283,2471.00%93.0%
2005年354,313324,8512,2760.70%91.5%
2007年351,762317,1391,8490.60%89.5%
2008年350,353314,2511,8030.57%89.1%
2009年348,129321,6811,7410.56%89.8%
2010年347,281311,0071,6950.55%89.6%
2011年345,024306,064......89.1%
OECD各国の平均精神病院入院日数[23]

日本の精神医療の問題点としては、世界でも稀に見るほど多くの精神科入院ベッド数(約35万床)、入院患者が減少しないこと、平均在院日数が300日以上と極めて長いこと(社会的入院をしている患者が約25万人)などがが挙げられ、中には精神科病院で30年間以上にわたり長期入院生活を続けている患者もいる[24]

入院患者が減らない原因として、日本の一般社会においては退院しても精神障害者に対する差別偏見が根強く存在することもあり、社会に戻す環境整備がなかなか行われないことや、また精神科病院の9割を占める民間病院が、経営上の理由から簡単に病床を減らせないという事情もある[25]

先進国と比べても、日本の精神科の病床数は人口に対して世界で最も多く、入院期間も最も長い。先進諸外国が国公立の精神科病院を減らし、患者が地域で安心して暮らせるような制度を推進しているのに対し、日本の精神科医療はまだ入院という方法に頼っている。このような日本の現状に対して、1968年には世界保健機構(WHO)から、1985年には国際連合から、法制度を改善するように勧告を受けた。しかし精神保健福祉士 (PSW) の団体である日本精神保健福祉士協会の報告によれば、2000年代以降も「社会的入院」と呼ばれる長期入院の解消には至っていない[26]。「日本の精神保健#社会的入院」も参照

厚生労働省によって「地域移行特別対策事業」が開始され、2012年までの数値目標が掲げられた。地域移行支援アシスタント(退院促進支援員から名称変更)による地域でのネットワーク作り、地域移行推進員などの活躍が期待されている。しかし名称変更と業務追加がされた後も目立って人員増加されていないことなどもあり、目覚ましい効果は上がっていない。
公費負担医療制度[ソースを編集]「日本の精神保健#福祉制度」および「自立支援医療 (精神通院医療)」も参照

2006年4月、障害者自立支援法が施行。患者の世帯収入に応じた応益負担による自立支援医療が実施される。通院治療においてこの制度を使うと、医療保険を使用した時、医療費全体の原則10%負担となる。なお、患者の世帯収入が少ない場合は負担額の上限が設けられ、月額上限2,500円から20,000円の間となる。また、市区町村によっては、この負担額の上限とは別に独自に補助を行っている自治体もある。この制度を利用する場合は、病院の医師ケースワーカーに相談して主治医に診断書を作成してもらい、住民票のある市区町村に診断書と申請書類を提出することが必要である。
脚注[ソースを編集][脚注の使い方]
注釈[ソースを編集]^ 精神科医自由民主党所属元参議院議員西島英利が「精神病院の用語の整理等のための関係法律の一部を改正する法律(以下、精神病院の用語整理法)」を第164回国会参議院厚生労働委員会に提案したのをきっかけに審議された。[要出典]
^ 医療法上では1996年に廃止されている。詳細は「総合病院」の記事を参照。
^ なお、「患者の移送に黄色い救急車(もしくは緑の救急車)が使われる」という話は嘘(都市伝説)である。

出典[ソースを編集]^ a b OECD 2014, p. 63.
^ OECD 2014, Country press releases - Japan.
^ “ ⇒一般医・精神科医ネットワーク G-Pネット”. 一般医・精神科医ネットワーク研究会事務局. 2015年1月20日閲覧。
^ 順天堂大学医学部附属順天堂医院メンタルクリニック
^ 松本俊彦「地域における薬物依存症治療プログラム普及の必要性」(pdf)『若年層向け薬物再乱用防止プログラム等に関する企画分析報告書』平成24年度、内閣府、2013年2月、55-58頁。 、資料概要
^ a b c 『 ⇒精神科救急ガイドライン2015』一般社団法人日本精神科救急学会、2016年、Chapt.1.V。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 978-4892698798


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