精神科
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プライマリケアは整備途上であるため、プライマリケア医との連携が今後の課題である[2]厚生労働省は「G-Pネット」としてプライマリケア医と精神科医の連携を進める政策を進めている[3]

現在の日本の精神科病院は、精神障害及び精神障害者へのスティグマから、診察に訪れにくいイメージが強かったため、近年では医療機関の呼称を「メンタルクリニック」「こころのクリニック」などとしたり、診療科目として「神経科」「心療内科」「メンタルヘルス科」と標榜するなどして、外来患者が訪れやすくする工夫がされるようになった。一部の私立大学医学部附属病院とその関連病院では、病院内の診療科目名に「メンタルクリニック」を用いる例[4]もある。

公的には2006年、精神病院の用語整理法が成立し[注釈 1]、法的な名称が「精神病院」から「精神科病院」へ変更された。医学部のカリキュラム文書では「精神科単科病院」と表記される。病院によっては「精神医療専門病院」などと呼ぶところもある。
診療対象

主な診療対象として、統合失調症双極性障害に代表される精神障害鬱病などの気分障害摂食障害、かつては神経症圏とされた不安障害パニック障害心的外傷後ストレス障害睡眠障害、そのほか知的障害自閉症スペクトラムを含む発達障害認知症などの認知障害、各種依存症アルコール依存症ギャンブル依存症等)が挙げられる。依存症の治療を専門に行う精神科病院や診療所も存在する。

麻薬覚醒剤等の薬物依存症の治療も行う病院(依存症専門医療機関)があるが、日本では欧米と異なり、治療などの予防よりも薬物犯罪としての処罰を重視する傾向や、薬物患者に対する非寛容傾向が強いことや、薬物治療を行うクリニック病院が少数であることから、薬物依存患者が減少しにくいという指摘がある[5]
診療形態専門分野については「精神医学#理論と対象」を参照
医療機関の種類

日本では、外来のみの診療を行う診療所(クリニック)、入院施設を有する精神科病院、旧総合病院[注釈 2]の一部門としての精神科の3種類の診療形態があり、それぞれ機能分化している。

診療所は、街中や駅前にあり、通院に便利・気軽に受診しやすいなどの特徴がある。比較的軽度の鬱病などの気分障害睡眠障害など入院を必要としない患者を中心に診療する。入院や高度な診断が必要な場合に備え、入院設備や専門医のある病院と連携しているのが普通である。患者が受診しやすくするために診療科目に「心療内科」も標榜し、名称を「メンタルクリニック」「こころのクリニック」などとしている場合が多い。

精神科病院は、入院施設も備えており、様々な症状の患者に対応できる、作業療法デイケアなど様々な治療方法を備えているため、集中的な治療ができるなどの特徴がある。2006年10月の精神保健福祉法改正前は、法律上「精神病院」と呼ばれていた。

旧・総合病院の精神科は、利便性や専門性においては前2者の中間的な存在であるが、身体的合併症を持った精神疾患患者の治療が可能、他科(内科・外科など)に入院中の患者の精神的ケアを行う、いわゆる「リエゾン精神医学」が可能などの特徴がある。

入院

入院施設のある病院の場合、開放病棟閉鎖病棟の2種類がある。可能な限り開放処遇とするが、症状が重く自殺等の自傷行為や他者を傷つける行為(自傷他害という)の危険が切迫している場合などで精神保健指定医の診察の結果、閉鎖処遇が必要と判断した場合、患者の保護および治療のため、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)に従った手続きを行い閉鎖処遇をとることがある。なお閉鎖病棟では、入院患者のプライバシー人権は軽視される場合もある。

入院施設は急性期治療病棟と療養型病床群に分けられる。急性期治療病棟は、精神疾患において急性期と慢性期では求められる医療の質・量が全く異なることから、急性期において重点的なチーム治療を行い早期の退院、社会復帰を行うことを可能にするため、1998年4月の診療報酬改定の際に創設された制度である。療養型病床群に比べて看護スタッフの割合を多くとること、入院期間が平均3ヵ月以内であることなどが義務付けられ、そのかわり診療報酬が高く設定されているシステムである。

入院中は、精神科医看護師公認心理師理学療法士作業療法士音楽療法士保健師薬剤師精神保健福祉士社会福祉士栄養士管理栄養士言語聴覚士などによるチーム医療が行われ、カンファレンスを行いスタッフ間での意見の交換が頻回に行われるべきである。また薬物療法身体拘束にあたって根拠に基づく医療が行われることが望まれている。

旧・総合病院も含む、精神保健福祉法に基づく精神科病床への入院には、大きく任意入院非自発入院がある。このうち任意入院は自らの意志に基づいた入院で、可能な限り任意入院を行うべきであると同法第22条の3に定められている。

非自発入院の判断基準(日本精神科救急学会ガイドライン)[6]
精神保健福祉法が規定する精神障害と診断される。

上記の精神障害のために判断能力が著しく低下した病態にある
(精神病状態,重症の躁状態またはうつ状態,せん妄状態など)。

この病態のために,社会生活上,自他に不利益となる事態が生じている。

医学的介入なしには,この事態が遷延ないし悪化する可能性が高い。

医学的介入によって,この事態の改善が期待される。

入院治療以外に医学的な介入の手段がない。

入院治療についてインフォームドコンセントが成立しない。


精神科への入院[6]

自発入院 - 任意入院

非自発入院

措置入院 / 緊急措置入院

医療保護入院 / 応急入院


しかし、精神疾患に罹患した患者の場合、自らが病気に罹患していることや治療が必要であることを理解しない場合も多い。その際、精神保健指定医が診察した上で、医療及び保護が必要であると認めた場合は、保護者の同意を得て医療保護入院(本人の意志によらない入院)を行うことができる。

措置入院は、自傷他害(自らや他者を傷つけること)のおそれがある場合[6]、主に警察官から保健所への通報により保健所が手配した精神保健指定医2名の鑑定を経て行われる。入院形態には他に応急入院、緊急措置入院がある[注釈 3]
法的指定

この節は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。

触法精神障害者向けには、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(医療観察法)に定められている鑑定入院、指定入院医療機関での入院がある。触法精神障害者向けの医療機関として、鑑定入院医療機関、指定入院医療機関指定通院医療機関がある。

精神の障害による障害年金の申請に関する診断書については、原則として「精神保健指定医又は精神科を標ぼうする医師が記入すること」と定められている[7]


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