精神病性障害
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器質精神病(狭義)・症状精神病は、ICD-10ではF00?F09に、DSM-IV-TRでは「?による精神病性障害 (293.xx)」にそれぞれ該当する。原因は以下のようなものである



中枢神経の変性は、アルツハイマー病パーキンソン病ハンチントン病などによるもの。

脳血管障害は、脳梗塞、脳出血などによる。

頭部外傷

脳炎は、進行麻痺(梅毒)、日本脳炎クロイツフェルト・ヤコブ病などによるもの。

脱髄は、多発性硬化症などによるもの。

脳腫瘍

水頭症は、正常圧水頭症など。


症状精神病
感染などの脳以外の身体疾患によって現れる。

てんかん
今日では精神病に含めない。ICD-10のG-40, 41の神経疾患である。
物質誘発性精神病性障害

ICD-10では、「向精神薬の使用による精神と行動の障害」の「精神病性障害」 (F1x.5) に、DSM-IV-TRでは、物質関連障害の「物質誘発性精神病性障害」にそれぞれ該当する。原因となりやすい物質は、アルコールや、アンフェタミンのような覚醒剤、催眠/鎮静薬のような医薬品である。中毒あるいは離脱に伴って短期的に生じる。

ICD-10では、向精神薬誘発性精神病の状態は、アンフェタミンやコカイン精神病の場合のように短期的なものであり、誤ってより深刻な統合失調症のような状態が診断されれば、悲惨な影響を与えると注意している[12]

DSM-IVでは[17]、抗精神性の薬物の他に、他の医薬品、毒物にも言及される、覚醒剤、大麻、アヘンの中毒あるいは、アルコール、鎮静催眠剤の離脱において、現実検討ができる、光、音、幻視は、物質誘発性精神病性障害ではない。中毒あるいは、離脱である。4週間以上にわたる場合は、別の原因を考慮せよとしている。35歳すぎの発症は物質誘発性の可能性を気づかせるとし、非聴覚性の幻覚の9割が、物質誘発性か一般身体疾患によるものであるとしている。 DSM-5では、人生の後半では薬物の乱用ではなく、医薬品の多剤併用が原因となって精神病状態を引き起こしやすい、また、本人が薬物によって生じていると認識している場合(現実検討できている)、薬物中毒離脱と診断されると書かれる[18]

アルコール精神病
アルコールが直接原因ではなく、ニコチン酸チアミンの不足によって起こる。

精神刺激薬精神病
特に大量のメタンフェタミン(覚醒剤)を使用していた場合、被害妄想や無秩序な思考や幻覚といった精神病の症状を呈する[19]。使用後1週間以内にその症状は消失するとされている[19]。脆弱性のある個人の、精神病エピソードの症状を突発させたり強めたりする[20]

過感受性精神病
過感受性精神病は、抗精神病薬の多用によって精神病が起きやすくなった状態である[21]

大麻精神病
大麻の使用に関連して起こることがあるとされている仮説の障害で、明確に定義されていない[22]。大麻の使用を中止すると数日以内に治る[22]
心因を主とする精神病

心因性精神病は、ストレスなどの心的要因によって起こった、精神の強い反応である。反応精神病では、人格の解体・現実検討能力の著しい障害が見られる。ICD-10では、症状に応じて急性一過性精神病性障害 (F23) や感応性妄想性障害 (F24) などに含める。1か月以内に症状が治まる場合、DSM-IV-TRでは短期精神病性障害に含めることになる。
他に原因のない精神病

原因が脳自体にあると思われるが、いまだに原因が明確には解明されていない精神病である。かつて内因性精神病と呼んだ。その代表である統合失調症は、先天的な脆弱性のあるところに環境的な要因が加わって発症するとされている。

内因性精神病と心因性精神病は、ICD-10では「統合失調症、統合失調症様障害と妄想性障害 (F20-F29)」に、DSM-IV-TRでは「統合失調症および他の精神病性障害」にそれぞれ含まれ、症状に応じて細分類がなされる。

その他、本人が健全でも周囲の証言で精神病患者とされるケースもある[23]
危険因子

世界保健機関は2004年に以下のように報告している。コカインとアンフェタミンの使用率が高い国では、一般集団と比較して統合失調症の患者において、使用率が2倍から5倍の間で高く、いくつかの仮説につながっている[24]。ニコチンにおいても統合失調症の患者では喫煙率が高いが、そのような仮説は提唱されていない[24]。しかし、ニコチンが軽い精神刺激薬であることを考えると驚くべきことではないと世界保健機関は報告している[24]。またなんらかの精神障害を有している場合には、アルコール依存症の比率は一般集団の2.3倍である[25]

2015年にBMJに掲載されたシステマティック・レビューは、毎日の喫煙が、精神病の危険性を増加することを見出している[26]
予防詳細は「en:Early intervention in psychosis」を参照「メンタルヘルス#受診までの期間」も参照

認知行動療法 (CBT) についてはハイリスクグループの発病リスクを減らせるというエビデンスが存在し[27]英国国立医療技術評価機構 (NICE) はハイリスクグループに対してCBTによる予防が推奨されると2014年に勧告した[28]

またNICEは、発症防止、予防を目的とした抗精神病薬の投与は行ってはならないと勧告している[29]
議論

一方で、他の手法による精神病への早期介入 (Early intervention) の効果は、まだ結論が出ていない[30]。早期介入によって短期的な成果はもたらされるものの、5年間を通した評価では利益は小さいという意見もある[31]
ARMS

アットリスクメンタルステート (At risk mental state, ARMS[注釈 2]) とは、精神病または統合失調症の形成リスクが高いとみなされる臨床的状態[34]。この状態は、かつては前駆症状や精神病の症状発生時として治療されていたが、しかし現在ではそういった見解は主流ではなくなった。

未症状時点での専門的サービスを初めて導入したのは豪州メルボルンのThe Pace Clinic[35][36]であり、それはまた世界各国で試みがなされている[37][38][39][40]この概念をどのように臨床に導入するかについて研究が多々行われている[41][42][43][44]

アレン・フランセスは早期発見は素晴らしいアイデアだが、精度の低い診断と、危険な非定型抗精神病薬の投薬という誤った組み合わせであり、ほぼ確実な生物学的検査と、危険性と利益の比率が良い治療法という2点が満たされる必要があるとしている[45]

栄養素のω-3脂肪酸には抗精神病作用が報告されてきているため、ハイリスク群が3週間服用する研究を行いその約7年後では、偽薬では発症率40%であったのに比較して約10%と、発症率は約30%低下した[46]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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