精神医学
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古代ギリシアではてんかんは神聖病と呼ばれていたが、ヒポクラテスプラトンガレノスはこれを否定した[14]

中世ヨーロッパでは精神病患者は悪魔憑きと呼ばれ迫害された[14]。大衆の見世物にされることもあった。日本では平安時代には、物狂い狐憑きと呼ばれ、江戸時代初期から、きちがい(幾知可比)という用例もみられる[14]浄土真宗においては南北朝時代から既に漢方薬を主とした治療法を試みている事からこれらを内的現象とみていた可能性がある[15]江戸時代中期の医師(漢方医古方派)で儒学者である香川修徳(香川修庵)は、その著書「一本堂行余医言(いっぽんどうこうよいげん)」(文化4年(1807年)著)の巻五で精神疾患を6つに分類(内、狂(統合失調症)は更に現在では破瓜型と緊張型に属するものに分類)している。
19世紀

精神医学(Psychiatrie:ドイツ語)という言葉は、1808 年にドイツの医学者ライル(J.C.Reil)によってつくられた。その発端は、啓蒙思想の残響を受けながら18 世紀後半から 19 世紀前半に取り組まれた精神病者の解放運動によって徐々に構築されていったものである。それまで精神病者は「狂人」として、収容施設や療養院に拘束され非人間的な処遇を受けていた。


これに対して、ヨーロッパ各地に精神病者へのこうした非人間的処遇に反対して立ち上がる人が登場した。たとえばイギリスのヨーク市に理想的な施設ヨーク救護所(英語版)を立ち上げたクエーカー教徒の商人チューク[14]、「狂者を直接に治すことができるのは精神治療しかない」として収容所の改革を説いた前述のライル、バイロイト近郊の施設を模範的な精神病院に建てかえ、病者と生活を共にした同じくドイツの医師ランガーマンJ.G.Langermannらがその例である。その中でも特にフランスのフィリップ・ピネルが、1793年に、パリ近郊のビセートル病院で患者を鉄鎖から解放した事績は有名である[14]。ピネルは精神病院の改革者として行動すると同時に、1801 年には『精神疾患に関する医学‐哲学的論考』を著して「近代精神医学の父」とみなされている。詳細は「フランス革命#精神医学・臨床心理学の発展」を参照

精神医学が今日的な意味の学問体系を指すようになるのは、1850 年ごろからヨーロッパ各地の大学医学部が必要な講座としてこれを設置しはじめてからである。当時の精神医学は、「精神病は脳病である」(W.グリージンガー)という言葉が象徴するように,疾患の本態を脳内に求める身体論的方向をめざすものだった。精神疾患は、こうして神経学者たちの専門となった。またその一方で,遺伝・素因・体質などの要因を重視する内因論の方向が、19世紀末にエミール・クレペリンクルト・シュナイダーらにより、症状に基づく疾病単位の分類をなしとげて一応の完成にいたった(記述的精神医学)。
20世紀

20世紀初頭にはジークムント・フロイトによる精神分析学の流れが精神医学に起こった。無意識に記憶されている幼少期の性的欲動に症状の起源があるという理論である。他にも、力動的な症状論を展開するオイゲン・ブロイラー現象学の導入により方法論を整備したカール・ヤスパースらの新たな勢力が台頭した。特にフロイトによる、疾患を無意識の力動や生育早期の外傷体験など心因によって理解・分類し、それを言語的に解釈することによって治療するという精神分析の流れは精神医学にも浸透し、20世紀中葉のアメリカ合衆国を中心にかなりの隆盛を見せた。またこのころ、サリヴァンによって精神医学が徴兵選抜や疾病分類の方法論へと拡大され、各国中枢に精神医学委員会が作られる端緒となる。

フロイトを中心とする精神分析の治療法は様々な批判[16]や、理論的な指摘を受け新フロイト派といった他の学派を生んでいった。しかし、後の認知心理学は、何年も治らない症状や無意識への疑問から現在の主流となっている。

1950年代に入って、向精神薬の開発により、生物学的精神医学はようやく実用的レベルの段階に達した。1949年にリチウムに抗躁作用があることが見つかり, 1952年にクロルプロマジン(従来は麻酔前の人工冬眠に使用していた薬であるが)とレセルピンが作られ,これらに劇的な抗精神病作用があることが分かった(この年をもって精神薬理学誕生とされることがある)。さらに、1958年には最初の抗うつ薬であるイミプラミンが合成された。


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