精神医学においても「根拠に基づく医療」が求められている[12]。これはある介入と、そのアウトカム(結果)の因果関係を求め、介入の有効性を評価するというものである。他の医学領域では、評価するアウトカムとして、数値で表すことのできる生体データを用いることが多い。しかし、精神科領域ではこのような客観的なデータが得られにくいため、重症度を評価する評価尺度の点数や、自殺の有無、入院期間などをアウトカムとして用いている。イギリス保健省はHealth of the Nation Outcome Scales(HoNOS)を策定し、国家レベルにてアウトカム評価に用いている[13]。これらのデータに基づき、米国精神医学会(APA)、英国国立医療技術評価機構(NICE)などのガイドラインが作成されている。
OECDは根拠に基づく治療を推進し、各国はアウトカムを測定するフレームワークを策定し、また良い治療成績を上げた者が評価されるような報酬制度設計を勧告している[12]。
評価尺度詳細は「精神医学で使われる診断分類と評価尺度の一覧」を参照
重症度の評価尺度として、以下のようなものが臨床および研究にて使用されている。
主にうつ病の評価に用いられるもの - ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)、ベックうつ評価尺度(BDI)、モンゴメリー・アズバーグうつ病評価尺度(MADRS)など
躁状態の評価に用いられるもの - ヤング躁症状評価尺度
統合失調症などの評価に用いられるもの - 簡易精神症状評価尺度(BPRS)、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)など
強迫症状の評価に用いられるもの - エール・ブラウン大学 強迫性障害評価尺度(YBOCS)
薬剤の副作用を評価するもの - 薬原性錐体外路症状評価尺度(DIEPSS)、Barnesアカシジアスケール、異常不随意運動評価尺度(AIMS)など
前頭葉機能を評価するもの - Wisconsin card sorting test、Stroopテスト、Go/NoGoテスト、言語流暢性試験など
知能を評価するもの - ウェクスラー成人知能検査(WAIS-R)など
臨床マニュアル詳細は「精神障害の診断と統計マニュアル」を参照
歴史詳細は「精神保健の歴史」および「en:History of psychiatric institutions
古代ギリシアではてんかんは神聖病と呼ばれていたが、ヒポクラテス、プラトン、ガレノスはこれを否定した[14]。
中世ヨーロッパでは精神病患者は悪魔憑きと呼ばれ迫害された[14]。大衆の見世物にされることもあった。日本では平安時代には、物狂い、狐憑きと呼ばれ、江戸時代初期から、きちがい(幾知可比)という用例もみられる[14]。浄土真宗においては南北朝時代から既に漢方薬を主とした治療法を試みている事からこれらを内的現象とみていた可能性がある[15]。江戸時代中期の医師(漢方医、古方派)で儒学者である香川修徳(香川修庵)は、その著書「一本堂行余医言(いっぽんどうこうよいげん)」(文化4年(1807年)著)の巻五で精神疾患を6つに分類(内、狂(統合失調症)は更に現在では破瓜型と緊張型に属するものに分類)している。 精神医学(Psychiatrie:ドイツ語)という言葉は、1808 年にドイツの医学者ライル(J.C.Reil
19世紀
これに対して、ヨーロッパ各地に精神病者へのこうした非人間的処遇に反対して立ち上がる人が登場した。たとえばイギリスのヨーク市に理想的な施設ヨーク救護所
(英語版)を立ち上げたクエーカー教徒の商人チューク[14]、「狂者を直接に治すことができるのは精神治療しかない」として収容所の改革を説いた前述のライル、バイロイト近郊の施設を模範的な精神病院に建てかえ、病者と生活を共にした同じくドイツの医師ランガーマンJ.G.Langermannらがその例である。