「米」のその他の用法については「米 (曖昧さ回避)」をご覧ください。
江戸時代の農業百科事典『成形図説』のイラスト(1804年)
米(こめ)は、稲の果実である籾から外皮を取り去った粒状の穀物である。穀物の一種として米穀(べいこく)とも呼ぶ。食用とする場合、系統や品種の性質によっては調理法が異なるため注意が必要(イネの系統と米、および、種類を参照)。
日本では主食の一つであり[1]、日本語では「稲」「米」「飯」といった、植物としての全体と実、収穫前と収穫後さらに調理前と後などにより使い分けられる多様な語彙がある。日本を含む東アジアおよび東南アジア、南アジア以外では一般的に主食として特別視することが希薄であり、こうした区別がない言語が多数ある。例えば英語圏では全てriceという同一の単語で扱われる(反対に、日本では「大麦」「小麦」「エン麦」などが余り区別されず「麦」という総称で言われる)。また、日本語で「飯」は食事全般も指すため、「朝御飯はパンを食べた」という表現も極一般的である。短粒種の玄米成熟期のイネ(長粒種)
形態 部位名
A 籾 (1) 籾殻
B 玄米 (2) 糠
C 胚芽米 (3) 残留糠
D 白米 (4) 胚芽
E 無洗米 (5) 胚乳
イネの系統と米国際稲研究所(IRRI)による米の種子の収集
イネ科植物にはイネのほかにも、コムギ、オオムギ、トウモロコシなど、人間にとって重要な食用作物が含まれる。イネはトウモロコシ、コムギとともに世界三大穀物と呼ばれている[2]。
イネ科イネ属の植物には22種が知られている[2]。このうち野生イネが20種で栽培イネは2種のみである[2]。栽培イネは大きくアジアイネ(アジア種、サティバ種、Oryza sativa L.)とアフリカイネ(アフリカ種、グラベリマ種、Oryza glaberrima Steud.)に分けられる[2][3][4]。また、両者の種間雑種から育成されたネリカがある。 イネは狭義にはアジアイネ (Oryza sativa) を指す[3]。アジアイネにはジャポニカ種とインディカ種の2つの系統があり[3]、これらの両者の交雑によって生じた中間的な品種群が数多く存在する[3]。アジアイネ(アジア種、サティバ種)の米は、ジャポニカ種(日本型米、ジャポニカ・タイプ)、インディカ種(インド型米、インディカ・タイプ)、そして、その中間のジャバニカ種(ジャワ型米、ジャバニカ・タイプ)に分類されている[4][5]。それぞれの米には次のような特徴がある。 なお、日本型とインド型に分類した上で、このうちの日本型を温帯日本型と熱帯日本型(ジャバニカ種)として分類する場合もある[2][9]。 日本においては、農産物規格規程に、品位の規格と、「産地品種銘柄」として都道府県毎に幾つかの稲の品種が予め定められている。玄米は、米穀検査で、品位の規格に合格すると、その品種と産地と産年の証明を受ける。
アジアイネと系統
ジャポニカ種(日本型、短粒種、短粒米)
粒形は丸みがある円粒で、加熱時の粘弾性(粘り)が高い[2][6]。日本での生産は、ほぼ全量がジャポニカ種で、炊いたときに粘りともちもち感があるのが特徴[7]。主な調理法は、炊くか蒸す。他種に比べ格段の耐寒冷特性を示し、日本の他では朝鮮半島や中国東北部で生産されている。
インディカ種(インド型、長粒種、長粒米)
粒形は細長い長粒で、加熱時の粘弾性(粘り)は低い[6]。「タイ米」ともよばれ、炊くとパラパラした米飯になる[8]。世界的にはジャポニカ種よりもインディカ種の生産量が多い。主な調理法は煮る(湯取)。日本のジャポニカ種は中国大陸江南から伝搬したと言う説が有力であるが、江南地域自体は、10世紀頃にインドシナ半島を経由して流入したインディカ種の一種である占城稲(チャンパ米)が、旱害に強く、早稲種で二期作が容易などの理由から普及し、江南をはじめとした中国大陸南部はインディカ種の生産地域となっている。
ジャバニカ種(ジャワ型、大粒種)
長さと幅ともに大きい大粒であり、粘りはインディカ種に近い。東南アジア島嶼部で主に生産されるほか、イタリア、ブラジルなどでも生産される。
品種・銘柄