篠笛は、指孔の個数と共鳴管の長さ(基本音の周波数)と用途、調律により分類される。指孔は歌口から一番遠いものを第一孔と呼ぶのが一般的である。
指孔(手孔)の個数による分類
指孔の数は6または7であることが多い。前者を六孔(六穴)、後者を七孔(七穴)篠笛と呼ぶ。「みさと笛」などの改良篠笛には指孔の数を増減したものもあるが、そのような改良篠笛については、製作者や商標名で分類したほうが良いであろう。
基本音による分類
「何本調子」という呼び方で基本音/基準音(七孔の場合、第一孔を開放した音)を指定する。指孔すべてを閉じて出す最低音(「筒音」、つつね)は竹と製作者による差が大きいため、基本音とは見なされておらず、楽曲で用いることもまれである。「何本調子」の数が一本小さくなると、基本音が半音低くなり、管はその分長くなる。八本調子がおよそC管、七本調子がB管、六本調子がBb管である。「六本半」のように、洋楽の半音のさらに半分刻みの調律のものも用いられることがある。「一本調子(低F)」から「十三本調子(高F)」までが一般に使用されているが、さらに低音の笛もまれに見られる。「何本調子」の表記に「笨」の字を用いる流派もある(なお、三味線音楽、箏曲・三曲、琵琶においても「何本調子」で基本音を定める慣習があるが、分野によって実際の音の高さは異なっているので注意が必要である)。写真3:七孔・唄用篠笛(上)と能管(下)【写真3】七孔・唄用篠笛(上)と能管(下)。唄用篠笛は上から三本調子(G、天地巻き)、四本調子(Ab)、五本調子(A)、六本調子(Bb)、七本調子(B、黒塗り)、八本調子(C、素竹)、九本調子(Db)、十本調子(D)。
用途、調律による分類
祭囃子、神楽、獅子舞等、各地の祭礼に古来用いられてきた篠笛を便宜的に「囃子用」「古典調」と呼ぶ。「囃子用」篠笛は同一径の指孔がほぼ等間隔で並んでおり演奏しやすいが、音階に調律されていないため、三味線等の音階がはっきりした楽器とは合わせにくい。そこで昭和初期に、指孔の位置と大きさを工夫し、邦楽(伝統音楽)の唄物
現在、一般的に用いられている篠笛は「囃子用・六孔」「囃子用・七孔」「唄用・七孔」「ドレミ調/みさと笛・七孔/六孔」が大部分である。 篠笛の音域は2オクターブ半程度である。全ての指孔を塞いで出す「最低音」を「筒音」と呼び、「唄用・七孔」篠笛では基本音に対し短三度程度低い音になるのが一般的であるが、製作者・地域によって異なる。基本音からの一オクターブ(低音域)を「呂音(りょおん)」、そのオクターブ上(中音域)を「甲音(かんおん)」、更にオクターブ上の高音域を「大甲(だいかん)音」と呼ぶ。それぞれ音色が異なる。 「筒音」および「呂音」は竹らしく暖かみのある柔らかい音色で、尺八との共通点も感じられる音域である。伝統音楽では叙情的な唄もの音楽(民謡、長唄等)や歌舞伎・文楽(人形浄瑠璃)等の芝居・舞踊を引き立てる役割として用いられる。 「甲音」は一転して澄んだ美しい音色となる。最も「篠笛らしい」音域と言ってよいだろう。「呂音」同様に唄もの・芝居・舞踊の引き立て役として多用されるし、また祭囃子・神楽等の祭礼音楽でも「大甲」と合わせて大変好まれる音域である。 「大甲」は非常に「甲高い
音域
篠笛は「移調楽器」であり、実際に出る音(実音)は管の長さによって異なる。
「何本調子」の数字の大小が基本音(「移動ド」の「ド」)の高低を表す。最も多く用いられる管長の範囲において、各音域の実音の一覧を示す。なお、この表は囃子用(古典調)篠笛には適用できない。
○本調子筒音呂音甲音大甲
三本調子(G)E4G4-F#5G5-F#6G6-D7
四本調子(G#=Ab)F4Ab4-G5Ab5-G6Ab6-Eb7
五本調子(A)F#4A4-G#5A5-G#6A6-E7
六本調子(A#=Bb)G4Bb4-A5Bb5-A6Bb6-F7
七本調子(B)G#4B4-A#5B5-A#6B6-F#7
八本調子(C)A4C5-B5C6-B6C7-G7
九本調子(C#=Db)Bb4Db5-C6Db5-C6Db7-Ab7
十本調子(D)B4D5-C#6D6-C#7D7-A7
「筒音」は基本音とは見なされず、製作者によって異なるので改めて注意されたい。なお、「大甲」音域で上記より高い音への拡張も試みられている。 篠笛の伝統的奏法を他国の横笛と比較するにおいて最も特徴的なのは、タンギング
奏法
基本運指以外の「半音」を出す際には、複雑な指使い(「クロスフィンガリング」)をあまり用いず、指孔の半開や息と歌口の角度(アンブシュア)を微妙に調整して音程を上げ下げする方法のほうが好まれる。音程を下げることを「メリ」、微妙に音程を上げることを「カリ」と呼ぶ(「尺八」の奏法も参照されたい)。西洋音楽でいう微分音に相当する音を用いることも極一般的である。
近年の新作曲では、西洋のフルートやピッコロ同様にタンギング、ビブラートも「現代奏法」として用いられることがあり、その他特殊奏法(ポルタメント、フラッタータンギング、グリッサンド、トリル等)も開拓されつつある。 明治期にハーモニカの数字譜を手本として、数字による記譜が福原流長唄囃子で行われるようになり、他の流派・分野にも広がった。記譜法は流派により異なる。福原流では楽譜は縦書きで、音程は数字(呂音=低音は漢数字、甲音=中高音はアラビア数字)で表し、リズム(拍子)は数字の横に縦線を引いたり音価を延ばすことを示す記号(数字の代わりに斜線を引く)を用いて表現する。
楽譜