管弦楽法
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20世紀初頭の新古典主義音楽では、この時代の初期の管弦楽法が模倣された。そのようなものとして、プロコフィエフの『古典交響曲』がよく知られている。
グルック

グルックは、オペラ作品の中で大胆な楽器使用を行った。1779年にパリで初演された『アウリスのイフィゲニア』(Iphigenie en Aulide)には、シンバルトライアングル、2本のピッコロなどが使用されている。グルックの理念はスポンティーニ(『ヴェスタの巫女』で、初めてオーケストラでバスドラムを使用した)やベルリオーズに受け継がれていくことになる。
ベートーヴェン

ベートーヴェンは楽器の使用方法について、いくつかの画期的な改革を行っている。その筆頭がティンパニの使用方法である。従来、1対(2個)のティンパニは、楽曲で使用される音階の第1音と第5音(主音と属音:ハ長調でドとソ)に調律する習慣であったが、ベートーヴェンは初めてこれを破った。交響曲第7番の第3楽章(ヘ長調)では、第1音であるファと第6音のラを用いた(この音はトリオのニ長調の属音である)。次の交響曲第8番の第4楽章(ヘ長調)では、主音ファのオクターブの調律を行い、これを効果的に使っている。交響曲第9番の第2楽章(ニ短調)でもファのオクターブ調律が見られるが、ファはその第3音にあたり、ついにティンパニは主音からも解放されたことになる。また、ティンパニは楽曲のリズムやアクセントの補強のために用いられ、主に楽曲のフォルテの部分で活躍する楽器であったが、交響曲第4番の第1楽章展開部に見られるような pp のロールや、同第2楽章終結部の pp でのソロ、交響曲第5番の第3楽章の終結部分のように、この楽器の弱音での表現力の可能性を開いた。

次に、オーケストラの中で同じベースラインを担当していたチェロとコントラバスをそれぞれ独立させて使用したこと。このことにより、チェロは旋律楽器としての可能性が開けた。また、コントラバスは、交響曲第3番の第2楽章冒頭の装飾音のように独自の存在感を示すことが可能になった。

さらに、使用楽器の拡大。木管楽器ではピッコロやコントラファゴットを、金管では3本のホルンやトロンボーン、打楽器ではバスドラム、シンバル、トライアングルといった楽器を交響曲に導入した。ただし、これらの楽器はベートーヴェン以前からもオーケストラで用いられていたものである(モーツァルト『魔笛』でのトロンボーンなど)。

ベートーヴェンの書法はさらに、ウェーバーで3個のティンパニ、シューベルトシューマンメンデルスゾーンブラームスによって受け継がれた。
初期ロマン派

初期ロマン派ではオーケストレーションの拡張の試みが徐々に行われていたが、同時に楽器の性能そのものも徐々に向上していったため、現代のオーケストラにおいては特に音量バランスにおいて作曲者が当時意図した響きとは異なるかもしれないことがままある。例えばシューマンの諸作品やショパンの2つのピアノ協奏曲などのオーケストレーションは、現代において過小評価する論調も見られるが、これは当時の楽器の性能を考えると必ずしも悪い例ではなく、時代楽器のオーケストラで演奏すると現代のオーケストラよりもすっきりまとまって響くこともある。
フランス革命

フランス革命の式典として、野外や教会で大規模な音楽が演奏された。ナポレオン統領政府時代の1800年には革命記念日に合わせ、メユールが三つの管弦楽団と合唱団から成る『1800年7月14日の国民歌』を、9月22日の共和政樹立宣言の記念日に合わせ、ル・シュウールは、さらに大規模な編成の『ヴァンデミエール1日の歌』を作ったが、このような祝祭的な性格の巨大編成の作品は、ル・シュウールの弟子ベルリオーズに受け継がれることとなった。
ベルリオーズ

最初の管弦楽法の大家は、19世紀初頭のベルリオーズである。ベルリオーズは楽器と楽器の組み合わせによって新しい音色を生み出すことや、オーケストラの規模の拡大に目を向けた。代表作『幻想交響曲』ではハープ、4本のファゴット、コーラングレコルネットオフィクレイド、複数のティンパニ奏者、鐘など、パリのオペラ座で使用されていた楽器を登場させている。また、『レクイエム』では、12本のホルン、ティンパニ8対(奏者10人)、シンバル10を含むオーケストラと合唱に加え、別働隊として36人からなる金管楽器のバンダという大規模な編成を要求している。

ベルリオーズが1844年に著した『管弦楽法』(原題:『現代楽器法および管弦楽法大概論(フランス語版)』(Grand traite d'instrumentation et d'orchestration)も諸外国に紹介され、後世の作曲家に影響を与えた。後述のリヒャルト・シュトラウスは、この書に注釈と新たな譜例(ワーグナーおよび自作)を加えた改訂版を1905年に出版している。

ベルリオーズの管弦楽法はフランス系の作曲家のみならず、ロシアのチャイコフスキー・イタリアのヴェルディ・ドイツのワーグナーなどに受け継がれる。


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