筐体
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以上のように、筐体の工夫によって内部装置で発生した騒音を低減することは可能であるが、そもそも騒音が発生するということは、入力エネルギーの一部が音という形で散逸しているということであり、このような機器類の振動は、機械部品の摩耗を進行させ機器の寿命を縮める元凶である。そのため、内部装置で発生する騒音の絶対量自体を低減することがまず第一であり、そのような対策を施さないまま筐体の改良で補うのは、根本的な解決とはならない。
電気的ノイズ対策

電子機器の設計で、外部からの電気的ノイズによる誤動作を起こさないようにすることは、非常に重要な課題である。とくに、近年の非常に高速化したコンピュータでは、その動作時に行われるスイッチング動作のオンオフ間の電圧差がますます小さくなる傾向にあり、外来ノイズに対するマージンが減少しているため、外来ノイズをシャットアウトできるような筐体を用いなければ、安定動作など望めない。

家庭にも職場にも電子機器があふれ返るという現状では、それらの電子機器自身が発生させる電磁波を、いかに外に出さないように設計するかということも重要な課題として認識されている。

電気的ノイズはその性質上、電気伝導性の素材で機器を覆ってしまうことによってシャットアウトすることが可能である。具体的には筐体その物を導電性の金属にする、プラスチック製品の内面に金属膜を蒸着させ電磁波を防ぐ、などの方法があり一般的には家庭内電化製品やパソコンなどに利用されている。
接地との関連

接地(アース)は、大地に対する接地と、筐体に対する接地(シャーシアースと呼ばれる)の2種類に分類できる。筐体に対する接地は、回路の動作を安定させるため、電磁波の侵入・漏洩を防ぐためなどの目的で用いられる。
温度対策

動力部品にしろ、電子部品にしろ、動作させている間は何らかの形で熱を持つことになる。このような熱は、蓄積させると、動力部品ならば強度の低下を招き、部品の破損などの故障を引き起こす。電子部品でもめったなことで回復不可能な障害は発生しないとはいえ、特にコンピュータなどでは、誤動作の原因となる。

もしも、このような部品類を単純にすっぽり覆ってしまうような筐体のなかに収めると、空気の対流が阻害され、放熱に悪影響を与えることは必至である。しかし、筐体の設計を上手く行えば、空気の流れを整え、放熱面積を増し、機械類を裸の状態で使用するよりもはるかに効率的な放熱を実現することが可能となる。

コンピュータなどの筐体設計では、空気等の流れを予めシミュレーションし、放熱効果の最も高い形状を決める。一般的にはデスクトップパソコンやサーバを含め大型コンピュータに至るまで幅広く見られる。このようなタイプのコンピュータを筐体をはずして裸で使用すると、電子部品が過熱して熱暴走を引き起こすことさえある。また、ノートパソコンのように、筐体内の空隙がすくなく、空気の流れによる冷却が期待できない場合でも、金属製のフレームに対して熱を直接逃がすなどの方法により効率的な冷却を実現している例がある。
光線の遮蔽

筐体を不透明な材質で作ることによって、光線を遮蔽することが出来る。

たとえば、CDプレーヤーの光学ピックアップやレーザープリンターなど、レーザーを利用する機器では、安全性の観点から、レーザーが筐体の外に漏れ出さないようにする必要がある。そのため、筐体は不透明でつなぎ目などに隙間が出来ないような構造をとらなければならない。特に、大出力のレーザーを用いる機器では、レーザー光に対して、十分な耐久性のある素材を用いなければならないし、散乱光ですら十分な威力を持つことから、全体をしっかり覆う必要がある。

逆に、カメラフィルムCCDレーザープリンター感光ドラムなど、光に対して感受性がある素材、部品を扱う場合、これらに余分な光があたらないよう、外部からの光線を遮断する必要があり、不透明な筐体を用いる。非常に安価なトイカメラなどの類の中には組み付け精度の不足から、筐体に隙間が出来、光線漏れという現象を起こして、フィルムの一部が感光してしまうなどという例もある。なお、カメラなどで、ショーや店頭でのデモンストレーション用に、内部の機構は完璧に動作するにもかかわらず、内部構造が見えるように筐体が透明な素材で作られることから、外部の光線に対する遮蔽としての機能を果たさず、写真をとる役にはまったく立たない、というようなモデルが作られることがある。

さらには、内部の機器の動作・特性の観点からは特に遮光の必要が無いような機器でも、内部の構造が直接見えてしまうことが、美的観点などから問題とされる場合があり、このような場合にも目隠しとして不透明な筐体が好んで用いられる場合がある。これも、不透明な筐体による光線の遮蔽効果を利用した例である。このような例では、単純に外側から中が見えなければ良いので、小さな隙間などがあることは問題にならない。その代わり、筐体のデザインに特に意匠性を持たせるケースが多いといえる。
空気力学的特性の改善

あまり、筐体という語が用いられることは多くないが、自動車飛行機ボディや、オートバイカウリングなども、中にエンジンや電装機器を入れた入れ物という意味で、筐体の範疇に入るものである。これらの場合、上記のような観点のほかに、空気力学的特性の改善ということも重要な役割の一つとして浮上する。

もともと、これらの機械はエンジン操舵装置などの構造を剥き出しにしていた。現在でも一部のオートバイなどはそうである。しかし、それらの速度が増すにつれて、安全性や外観の問題とともに、それらの部品が剥き出しのままでは空気抵抗が大きくなり、さまざまな支障が生じるようになってきた。これを改善する手段としてその筐体を、初期には単純な流線型、紡錘形にしていた。また、さらに時代が下っては、たとえば自動車においてダウンフォースを発生させるなど、さまざまな空気力学上の機能を持つように、その形状を工夫することが広く行われるようになった。
秘密の保持・改造などの阻止

装置の内部構造を外部の者に知られては不都合な場合がある。筐体で内部構造を覆い隠すことで、内部構造に関する機密事項を保護する。また、携帯電話機や特定小電力無線など、法令でユーザーによる改造を禁止している場合、禁止を徹底・担保する目的で、筐体が容易に開けられないことが要求されている。
デザイン

中の機器が剥き出しにしない目隠しとして使われる例や、空気力学的特性を改善する例にとどまらず、機器の形状一般を改善するというのも筐体の機能のひつである。

たとえば、ノートPCやモバイル機器の場合、使いやすく、持ち運びやすく、収納しやすいデザインが必要である。具体的には、使用する状態でのホールド性や操作性、持ち運ぶときにはホールド性とともに引っかかったりぶつかったりしないようにスリムで滑らかな形状、しまうときには、他のものと一緒にしまったときに無駄が少なくなるように、シンプルでできるだけ小さいことなどが要求される。

また、筐体のデザインでは、その機器の目的が理解しやすいような、あるいはその機器を使用する上で注意すべき点などに自然に目が向くようなシンボル性を持たせることも重要である。かっこよさや周りとの調和を重視するあまり、その機器の本質を包み隠してしまうような筐体デザインは、時に危険ですらある。

一般に、筐体をデザインするときは、この項目で取り上げたような筐体の持つさまざまな「機能」を充足するばかりではなく、その使用条件に即した「機能性」を向上させる必要がある。
関連項目

設計

シャシー - 自動車

PCケース
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