(b) 592
× 6 9
5328 …(1)
3 5 5 2 …(2)
40848 …(3)
乗数が2桁以上の場合は、右の図(b)のようになる。592×69=40848を例に解説する。
被乗数と乗数の1の位をかけ(592×9=5328)、その結果を乗数の下の列に書く。
被乗数と乗数の10の位の積(592×6=3552)は、結果を1桁ずらして10の位の位置から書く。
1. 2. で求めた値を加え(5328+35520=40848)、結果が求める積となる。
もし乗数に100の位、1000の位…があれば、被乗数と乗数の10の位の積を計算した後、被乗数と乗数の100の位の積を2桁ずらして100の位の位置から、被乗数と乗数の1000の位の積を3桁ずらして1000の位の位置から…として書けばよい。
図(b)のような筆算を長乗法と呼ぶ。
被乗数と乗数の一方または両方が小数である場合は、計算途中では小数点を無視して計算し、最後に積に小数点を打つが、このとき被乗数と乗数の小数点以下の桁数の合計の桁数が積の末位からの小数点以下の桁数となるように打つ。
これらのように乗数の下の位から順にかけ算することで解を求める方法を尾乗法と呼ぶ。筆算では尾乗法が一般的である。
対して、乗数の上の位から求める方法を頭乗法と呼び、こちらは暗算の達人などが暗算時に用いる。
筆算による除算[ソースを編集]
3 4 6
62)21508
1 8 6 …(1)
290
2 4 8 …(2)
428
3 7 2 …(3)
56
乗算と減算の組み合わせで、除算を行うことができる。筆算による除算を、21508÷62=346余り56で解説する。
大きな位から解を求める。62×□<2、62×□<21となる自然数□はないので、10000および1000の位には何も立たない。62×□が215を超えないもっとも大きな整数(=3)が100の位に立つ(小学校の教育でいう「1.たてる」)。215から62×3を引く(215-62×3=29)(小学校の教育でいう「2.かける」、「3.ひく」)。
被除数から1桁下ろしてくる(小学校の教育でいう「4.おろす」)。62×□が290を超えない最大の整数(=4)が10の位に立つ。290から62×4を引く(290-62×4=42)。
2. と同様に、被除数から1桁下ろし、62×□が428を超えない最大の整数(=6)が1の位に立つ。428から62×6を引く(428-62×6=56)。
被除数の上の段に書かれた値が商(346)、一番下の段に書かれた値が余り(56)となる。
このような筆算を長除法と呼び、記号として「?(U+27CC)」が使われるのが特徴的である。
小学校の教育では以下のように説明される。
除算の筆算の手順は、「1.たてる」→「2.かける」→「3.ひく」→「4.おろす」と説明される。
除数が1桁の場合は単純に乗算の九九を逆に使えばよいが、除数が2桁以上の場合の立商については、除数の上1桁のみを見る、あるいは除数の2桁目を四捨五入した数を元に仮商を立て、必要に応じて修正する。
除数が小数である場合は、除数が整数になるまで小数点を右に移し、被除数の小数点をそれと同じ桁数だけ右に移し、計算した結果の商の小数点は被除数の移した小数点の上に打ち、余りの小数点は元の位置に打つ。
ちなみに途中の計算過程が明示される形式ではないが、「?」を上下反転させたような記号を使ってその右上に被除数、左に除数、下に商を書く形の除法の表し方もあり、これを短除法といい、素因数分解や進法変換など連続して除算を行う場合などで用いられることがある。
筆算による開平[ソースを編集]
上記の加算、減算、乗算の組み合わせで、開平(平方根の計算)ができる。筆算による開平を 300 {\displaystyle {\sqrt {300}}} を例に解説する。
17.32
√ 3 00. 00 00… (1) 1
1 1 … (2)
200… (3)27… (4)
1 89 7 … (5)
1100… (6)343… (7)
10 29 3 … (8)
7100… (9)3462… (10)
2… (11)
被開平数 (= 300) を小数点から前後に2桁ずつ区切って書く。
□ × □ が最初の区切りの数 (= 3) を超えないような数 1 (1×1=1) を重ねて書く。(答の最初の桁の値)
2. で求めた積 1 を 3 から引き(3-1=2)、次の 2 桁(→00)を降ろす。
2. で書いた数を加算 (1+1=2) する。
4. で書いた値 2 について、2□ × □ が 3. の値 (= 200) を超えないような数 7 (27×7=189) を重ねて書く。(答の2番目の桁の値)
5. で求めた積 189 を 200 から引き(200-189=11)、次の 2 桁(→00)を降ろす。
5. で書いた数を加算 (27+7=34) する。
7. で書いた値 34 について、34□ × □ が 6. の値 (= 1100) を超えないような数 3 (343×3=1029) を重ねて書く。(答の3番目の桁の値)
8. で求めた積 1029 を 1100 から引き(1100-1029=71)、次の 2 桁(→00)を降ろす。
8. で書いた数を加算 (343+3=346) する。
10. で書いた値 346 について、346□ × □ が 9. の値 (= 7100) を超えないような数 2 (3462×2=6924) を重ねて書く。(答の4番目の桁の値)
以下同様。
暗算・筆算と教育[ソースを編集]
算数教育は暗算中心主義と筆算中心主義に大別される[1]。イギリスやフランスなどでは筆算中心の教育がとられてきた[1]。
関連項目[ソースを編集]
水道方式
虫食い算
覆面算
脚注[ソースを編集]^ a b c 遠山啓、銀林浩『新版 水道方式入門 整数編』国土社、1992年、10頁。
^ 遠山啓、銀林浩『新版 水道方式入門 整数編』国土社、1992年、10-11頁。
^ a b 遠山啓、銀林浩『新版 水道方式入門 整数編』国土社、1992年、11頁。
^ このように、得た値が二桁になったときに上の位へ数を加えることを繰り上げると言う。