筆下ろし
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人によってはリンスコンディショナーなどを塗布してキューティクルを守ろうとすることがあるが、前述の通り、キューティクルの隙間にススを入れることが大事であって、リンスやコンディショナーなどは隙間に入り込んでススの入りを阻害し、コシを与えず逆に寿命を縮めることになる。
洗うことについて

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穂先に墨が残らないようによく水洗いする。ただし、作られてすぐ水に長時間浸すことは、毛に水が入り込み膨らんでキューティクルの隙間が大きく開き、毛が切れやすくなる。同じ理由で、穂先を固めるためのノリ成分を、水に長時間さらして落とすのは適当でない。

小筆を洗う場合は、穂先を擦り切らせないよう気をつける。

根元については、よくすすぎ、根元にニカワ分が残らないようにする。ニカワ分が溜まると、膨張するなどして筆管が割れるので注意が必要である。ニカワは、ぬるめの湯に一番溶けやすいので、湯で洗うのが毛に最も良い。

毛の根元の墨を口で吸ったりして吸い出すことがよく行われているが、品質の良い固形墨・墨液では構わないが、品質について信用できない墨汁(前述のように海外の魚や動物の骨や皮から抽出したコラーゲンを使ったり、化学的に合成した接着剤成分などをニカワの代わりに用い、腐らせないように防腐剤が入り、工業製の香料を使っている)などを口に入れることは不衛生であり健康被害・アレルギーなどに注意する。また防腐剤が入っていない墨を磨り、作り置きして使う場合は、大変腐りやすいのでこれも口に入れないこと。

スス成分が溜まることは長持ちに繋がるので、ニカワの成分だけをよく落とすのが大事である。黒い墨の色が薄く沈着するのは性能が引き出されていることを示していると言って良いので、洗いすぎて傷めないよう注意する必要がある。
産地巨大熊野筆

京都市、東京都、広島県熊野町熊野筆)、呉市川尻筆)、奈良県(奈良筆)、愛知県豊橋市豊橋筆)、宮城県仙台市(仙台御筆)、などが有名な産地であるが、いずれも職人仕事なので、特定の町内に職人の職住一致の仕事場が点在している。

特に伝統工芸品として経済産業省に認定されているのは、

豊橋筆 愛知県豊橋市

奈良筆 奈良県奈良市大和郡山市

熊野筆 広島県熊野町

川尻筆 広島県呉市川尻町(旧豊田郡川尻町

である。

経済産業大臣指定伝統的工芸品も参照のこと。

中国においては、浙江省呉興県善l鎮の「湖筆」が最も名高い。
筆による技法詳細は「書法」、「油彩」、および「水彩」を参照
種類

コリンスキーセーブル筆
(英語版)
チョウセンイタチ(コリンスキーセーブル)の尾にある毛を原毛として使った高級毛筆。イギリス王室からの依頼で文具メーカーのウィンザー・アンド・ニュートンなどが制作している。
根朱筆(ねじふで)
特定環境にいるクマネズミの背中にある水毛を使用した筆。滋賀県の琵琶湖畔にいるクマネズミの毛が使用されていたが、護岸工事などで生息環境が変わってしまい入手困難となっている[7][8]
狸毛
白狸毛と黒狸毛があり、白狸の方が上質。筆の達人である空海(弘法大師)が中国で得た製筆法を著した『狸毛筆奉献表』などにもみられる[9][10]
胎毛筆
胎毛(
赤ちゃんの生まれて始めて切ったものを言い、毛先が切られていないもの)を使用したもので、誕生祝いや百日祝いなどに、赤ちゃんの成長を願って記念品として作り、本人や、祖父母などに贈るものである。中国の伝統を起源とする説がある[11]が、2006年以前の中国ではあまり聞かれない風習であった[12]
目的
線描筆
細い線を引くときに使用される。則妙筆(そくみょうふで)、削用筆(さくようふで)、面相筆(めんそうふで)の3種に分けられる
[13]。面相筆は人物の顔や表情を描くのに用いられたことに由来する[13]
隈取筆、ぼかし筆
墨汁や顔料をぼかすための筆[14]
付立筆、附立筆、没骨筆[15]

筆にまつわる言葉
慣用句


筆がすべる - 書かなくて良いこと、書いてはいけないことをつい書いてしまうこと。「口がすべる」に等しい。

筆がたつ - 文章を書くことが上手いこと。

筆にまかせる - 深い推敲などをせず、思うまま、勢いのままに文章を書くこと。

筆をおく - 文章を書き終えること。また、文筆家が書くことを辞めることもいう。

筆を折る - 文筆家が書くことを辞めること。「筆をおく」に比べて辞めることを強調する場合に使われる。

筆下ろし - 新品の筆を使い始めること。それにちなみ、初めて物事に臨むことや
男性童貞を卒業することを指す[16]

故事・ことわざ


弘法筆を選ばず(こうぼうふでをえらばず)

弘法も筆の誤り(こうぼうもふでのあやまり)

意到随筆(いとうずいひつ) - 自らの意のままに文章が書けるということ。

椽大の筆(てんだいのふで) - 「晋書王c伝」より、すぐれた文章の美称。椽大とは垂木のような大きな立派なという意。

燕頷投筆(えんがんとうひつ)

口誅筆伐(こうちゅうひつばつ) - 文や言葉で批判や攻撃を行うこと。

その他


日本や中国のような漢字文化圏ではかつて筆(毛筆)が主要な筆記具であったことから、他の筆記具にも筆とつける例がある[注釈 1]

脚注[脚注の使い方]
注釈^ 鉛筆、万年筆等。中国語ではボールペンを指す円珠筆(繁体字: 圓珠筆 / 簡体字: ?珠?)やクレヨンを指す蝋筆(繁体字: ?筆 / 簡体字: ??)などがある。

出典^ 筆墨硯紙事典 PP..46-47
^ 榊, 莫山 (1998-05-29). 文宝四宝 筆の話 (1 ed.). 角川書店. p. 186. .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 4-04-703294-8 
^ 筆墨硯紙事典 P.2
^ 神崎 茂夫、『やまびこは語る』 (単行本)、文芸社 (2002年3月15日 出版)、ISBN 9784835534527
^ 筆墨硯紙事典 P.73
^ 筆墨硯紙事典 P.150
^ 国立国会図書館. “京都でネズミの毛を使った筆を製作していると聞いたが,どんなものか知りたい。”. レファレンス協同データベース. 2023年1月16日閲覧。


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