債務者が債権者に対して債務の弁済をしたときは、その債権は、消滅する(473条)。2017年の改正前の民法には弁済の基本的効果の規定がなかったが、2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で明文化された[3][2]。
なお、債務者でない者が債務者のために弁済をした者が弁済した場合は、その者が債権者に代位し(499条
)、債務者に対して求償をすることができる範囲内で、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる(501条)。この場合については代位弁済を参照。弁済をした者が弁済として他人の物を引き渡したときは、その弁済をした者は、更に有効な弁済をしなければ、その物を取り戻すことができない(475条
)。前条の場合において、債権者が弁済として受領した物を善意で消費し、又は譲り渡したときは、その弁済は、有効とする。この場合において、債権者が第三者から賠償の請求を受けたときは、弁済をした者に対して求償をすることを妨げない(476条)。
なお、旧476条は「譲渡につき行為能力の制限を受けた所有者が弁済として物の引渡しをした場合において、その弁済を取り消したときは、その所有者は、更に有効な弁済をしなければ、その物を取り戻すことができない」と定めているが、適用場面が限定的である上に、再度の債務の履行と引き渡した物の取戻しに同時履行関係が認められない不合理な規定であるという有力な批判があり削除された[2]。現476条は2017年改正の民法で旧477条から繰り上げられた。 債権者の預金又は貯金の口座に対する払込みによってする弁済は、債権者がその預金又は貯金に係る債権の債務者に対してその払込みに係る金額の払戻しを請求する権利を取得した時に、その効力を生ずる(477条 債務者が同一債権者に対して同種の数個の債務を負担しており、弁済として提供した給付がすべての債務を消滅させるのに足りない場合に、いずれの債務に弁済をあてるべきか(弁済の充当)が問題となる。弁済の充当は次の順序による。
預金又は貯金の口座に対する払込みによる弁済
弁済の充当
合意充当弁済をする者と弁済を受領する者との間に弁済の充当の順序に関する合意があるときは、その順序に従い、その弁済を充当する(490条
指定充当(488条1項?3項、旧488条)
法定充当(488条4項、旧489条)
なお、債務者が一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合(債務者が数個の債務を負担する場合にあっては、同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担するときに限る。)において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない(489条1項)。これは費用、利息又は元本のいずれかの全てを消滅させるのに足りない給付をしたときについて準用される(489条2項)。現489条は2017年改正の民法で旧481条から繰り上げられ若干文言が変更されている。 詳細は「弁済の充当」を参照 債権者との間で債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約することを代物弁済という。この場合には弁済と同一の効力を有し債権は消滅する(482条 債権者が弁済の受領を拒むとき及び弁済を受領することができないとき、弁済者が過失なく債権者を確知することができないときには、弁済者は債権者のために弁済の目的物を供託所に寄託してその債務を免れることができる(494条
代物弁済
弁済供託
出典^ a b 遠藤浩編著 『基本法コンメンタール 債権総論 平成16年民法現代語化新条文対照補訂版』 日本評論社〈別冊法学セミナー〉、2005年7月、194頁
^ a b c d e f g h i j k l m n “民法(債権関係)改正がリース契約等に及ぼす影響” (PDF). 公益社団法人リース事業協会. 2020年3月17日閲覧。
^ a b c “ ⇒改正債権法の要点解説(8)” (PDF). LM法律事務所. 2020年3月17日閲覧。
関連項目
民法
債権
債務不履行
供託
善意支払
不当利得(非債弁済、期限前の弁済)