宇宙速度(うちゅうそくど、(英語: Cosmic Velocity)とは、特に地球および太陽に対して、軌道力学的に、地表において物体にある初速度を与えたとして、衛星軌道などの「宇宙飛行」と言えるような軌道に乗せるために必要な速度のことである。対象に合わせて、第一宇宙速度・第二宇宙速度・第三宇宙速度と呼ばれている速度がある。軌道力学一般的には脱出速度と呼ばれる。なお、通常は重力のみを考慮し、空気抵抗・浮力等は加味しない。 第一宇宙速度とは、地球において、その高度を海抜ゼロ(海面もしくは地表すれすれ)とした(仮想上の)円軌道の衛星軌道の軌道速度で、約 7.9 km/s (= 28,400 km/h) である。地表において、ある物体にある初速度を与えたと仮定した場合、その速度がこの速度未満の場合はどのように打ち出したとしても、弾道飛行(英: sub-orbital flight)の後に、地球の地表に戻ってしまう。逆に、これを越えて(英: super-orbital)(第二宇宙速度未満で)水平に打ち出した場合、その地点を近地点とする楕円軌道に投入される。 第二宇宙速度とは、地球の重力を振り切るために必要な、地表における初速度である。約 11.2 km/s(40,300 km/h)で、第一宇宙速度の 2 {\displaystyle {\sqrt {2}}} 倍である。この速度以上に加速すれば永久に地球から離れていくことができる。地球から打ち上げる宇宙機を、深宇宙探査機などのように太陽を回る人工惑星にするためには第二宇宙速度が必要である。地球の重力圏を脱出するという意味で地球脱出速度とも呼ばれる。 第三宇宙速度とは、第二宇宙速度と同様の考え方で地球軌道・地表においてある初速度を与えたとして、地球さらには太陽の重力を振り切るために必要な速度で、約 16.7 km/s (60,100 km/h) である。太陽の質量、地球の質量、太陽と地球の距離、地球の半径、万有引力定数から求めることができる。現実的には地球の公転速度を利用する側に飛び出すか逆かでΔvとしては違ってくる。この速度に達するために必要なエネルギーが膨大になるため、惑星探査機ではスイングバイを利用して加速する。これまでに第三宇宙速度を超えた人工物体は多くなく、太陽系を離れる人工物の一覧に記載されている。 各定数を、 とする。 地球の重心を中心として速さ v {\displaystyle v} の等速円運動をした時に物体の質点を原点とする慣性系で観測した場合質量 m {\displaystyle m} の物体に働く遠心力は m v 2 / R {\displaystyle mv^{2}/R} である。このとき物体に働く重力は G m M / R 2 {\displaystyle GmM/R^{2}} である。第一宇宙速度 v 1 {\displaystyle v_{1}} は遠心力と重力が釣り合うとして求める。すなわち、 m v 1 2 R = G m M R 2 {\displaystyle {\frac {mv_{1}^{2}}{R}}={\frac {GmM}{R^{2}}}} より、 v 1 = G M R = 7.91 × 10 3 m / s = 7.91 k m / s {\displaystyle v_{1}={\sqrt {\frac {GM}{R}}}=7.91\times 10^{3}\,\mathrm {m/s} =7.91\,\mathrm {km/s} } である。 Google 検索で天体の半径などの天文学の定数が計算可能で、sqrt(天体名の質量*万有引力定数/天体名の半径)という検索式で v {\displaystyle v} を求めることができる。 地球から無限遠を基準とすると、質量 m の物体の地球表面における地球重力によって生じる位置エネルギーは、 U = − ∫ ∞ R ( − G M m r 2 ) d r = − G M m R {\displaystyle U=-\int _{\infty }^{R}\left(-{\frac {GMm}{r^{2}}}\right)dr=-{\frac {GMm}{R}}} と表される。この物体に、負の位置エネルギーを打ち消す速さ v2 の運動エネルギー (1/2)mv 2 より、 v 2 = 2 G M R = 2 v 1 = 11.2 k m / s {\displaystyle v_{2}={\sqrt {\frac {2GM}{R}}}={\sqrt {2}}v_{1}=11.2\,\mathrm {km/s} } となる。なお、地球の自転速度は小さいのでここでは無視している。
第一宇宙速度
第二宇宙速度(地球脱出速度)
第三宇宙速度(太陽系脱出速度)
導出
万有引力定数: G = 6.67 × 10 − 11 m 3 s − 2 k g − 1 {\displaystyle G=6.67\times 10^{-11}\,\mathrm {m} ^{3}\,\mathrm {s} ^{-2}\,\mathrm {kg} ^{-1}}
地球質量: M = 5.97 × 10 24 k g {\displaystyle M=5.97\times 10^{24}\,\mathrm {kg} }
地球半径: R = 6.36 × 10 6 m {\displaystyle R=6.36\times 10^{6}\,\mathrm {m} }
太陽質量: M S = 1.99 × 10 30 k g {\displaystyle M_{S}=1.99\times 10^{30}\,\mathrm {kg} }
地球の公転半径: R E = 1.50 × 10 11 m {\displaystyle R_{E}=1.50\times 10^{11}\,\mathrm {m} }
第一宇宙速度
第二宇宙速度
2 を与えれば無限遠に達する、即ち地球の重力圏から脱出することができるとして求める。すなわち、 1 2 m v 2 2 − G M m R = 0 {\displaystyle {\frac {1}{2}}mv_{2}^{2}-{\frac {GMm}{R}}=0}
第三宇宙速度
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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