日本は戦前では3歳競馬が認められていなかったが、早く賞金を稼げるようにと制限が解除された。このため競走馬は骨がまだ固まらないうちからハードなトレーニングを積まされるため、骨折や脱臼、腱炎などが多発し不整脈も高頻度で発生する。「馬の生理機能を尊重するなら馬を3歳で強要するのをやめるべき」という競馬ジャーナリストもいる[18]。加えて競走などで鞭を打つことなどから、動物虐待にあたるとして長らく動物愛護団体より非難の対象に挙げられている。それらの団体の多くは、馬の飼育環境や騎乗することそのものを馬の意思に反して行われている虐待行為であると主張している。このため、一部の国・団体では鞭の使用回数に制限を設けられており、例えばイギリスでは鞭の使用回数は1競走につき平地では7回、障害では8回までと制限され、制限よりも4回多く使うと失格となり騎手も28日間の騎乗停止処分が科せられる[19]。また日本のJRAも鞭の使用回数の制限に動いており、2023年より競走中の連続使用は5回までとされた[20]。
批判の矛先は競馬のみならず、競走馬の生産や屠殺、馬肉の生産にまで及ぶ。日本では、競走馬を引退した馬の多くは、肥育場に送られて屠殺される[21]。馬は普通20年近く生きるが競走馬は生後2-3年で処分される。軽種が肉用に向けられる時は、老馬や仔馬の場合は動物園用やペットフードにするため、肥育せず直接屠殺場へ振り向けられることもある。過去には競走馬の殺処分が補助事業として行われた。バブル崩壊とともに1992年から競馬の売り上げが落ち込み供給過剰となった馬はタダ同然でたたき売りされ、餓死や捨て馬まで横行したが、この時期競走馬のだぶつきを防ぐ目的で「当歳低資産駒淘汰とも補償等円滑化促進事業」が施行。この補助事業において数百頭が殺処分された[22]。
競走馬の屠殺については競馬業界関係者にも批判者がおり、アメリカでは2006年に競走馬の屠殺を全面禁止する法律が可決しているが、それに際して同国の関係者らからも賛成の声が上がっていた[23]。しかしながら米国内での屠殺を禁止したことにより、馬はカナダやメキシコまで長距離輸送され、そこでと殺されるか、働かされ栄養失調と過労で死ぬことになった[24]。2023年現在は、生きた馬をメキシコやカナダの食肉処理場に輸出することを禁止する法案が提出されている[25]。日本では1973年に優勝馬など一部の馬は余生を面倒見るシステム「引退名馬の繋養制度」ができた。しかし適用事例はごく一部の競走馬に限られる[26]。
競馬の文化エクリプスの肖像画
娯楽が多様化するに従って競馬に対する大衆の関心は薄まっていったが、時折現れるアイドルホース(大衆的な人気を得る馬)によって大衆的な関心が再燃することがある。日本での代表的な例に、20世紀のハイセイコーやオグリキャップやトウカイテイオーやナリタブライアンなど、21世紀初頭のディープインパクト、オルフェーヴル、キタサンブラックなどがいる。
また、競馬は単なる賭博としてだけではなく、音楽や文学、絵画や彫刻などの創作活動の主題として取り上げられたり、社会制度にも入り込んで一連の馬事文化を形成してきた。特にイギリスでは活躍した名馬の肖像画も多く残されており、その姿を現代に伝えている。日本では寺山修司らによる競馬を主題とした文芸作品もある一方、競馬漫画や競馬ゲームといったサブカルチャー作品も多く発表されている。
競馬を題材にしたフィクションの作品において、ゲームは競馬ゲーム(けいばげーむ)、映画は競馬映画(けいばえいが)、漫画は競馬漫画(けいばまんが)と称される。競馬漫画はスポーツ漫画の一種として扱われることがある。
競馬をテーマにしたゲーム
ファミリージョッキー(ナムコ、1987年4月発売)
ダービースタリオン(アスキー、1991年12月発売)
ウイニングポスト(光栄、1993年1月発売)
STARHORSE(セガ、一作目が2000年に稼働)
ウマ娘 プリティーダービー(Cygames、2021年2月配信開始)
競馬をテーマにした漫画
みどりのマキバオー(単行本全10巻、作:つの丸)
ありゃ馬こりゃ馬(単行本全17巻、原作:田原成貴・作画:土田世紀)
風のシルフィード(単行本全23巻、作:本島幸久)
蒼き神話マルス(単行本全13巻、作:本島幸久)
ダービージョッキー(単行本全22巻、原案:武豊・作画:一色登希彦・構成:工藤晋)
Derby Queen(単行本全3巻、作:芦原妃名子)
優駿の門(単行本全33巻、作:やまさき拓味)
ウイニング・チケット(第一部:21巻、第二部:4巻、原作及び原案協力:河村清明・漫画:小松大幹)
馬なり1ハロン劇場(連載中、作:よしだみほ)
スピーディワンダー
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脚注[脚注の使い方]
注釈^ 2005年1月以前は、20歳以上でも学生であれば購入できなかった。
^ 同着のため配当が下がったが、8→6→14の3連単の最終オッズは596659.8倍(5966万5980円)であった。
出典^ 櫻井他2004、80頁。
^ a b c d e f g 下楠昌哉 編『イギリス文化入門』2010年、250-251頁。