窒素(ちっそ、英: nitrogen、仏: azote、独: Stickstoff)は、原子番号7の元素である。元素記号はN。原子量は14.007。第15族元素、第2周期元素。
地球の大気中に安定した気体として存在するほか、生物に欠かせないアミノ酸、アンモニアなど様々な化合物を構成する[1]。ハーバー・ボッシュ法によりアンモニアの量産が可能になって以降、人間により工業的に産生された窒素肥料や窒素酸化物が大量に投入・排出され、自然環境にも大きな影響を与えている[1]。
一般に「窒素」という場合は、窒素の単体である窒素分子( N 2 {\displaystyle {\ce {N2}}} )を指すことが多く、本項でもそのように用いられる場合がある。本項では窒素分子についても記載する。 1772年に、ダニエル・ラザフォードが noxious air(有毒空気)と名付けた。その中に生物を入れると窒息して死んでしまうことにちなんでいる[2]。 カール・ヴィルヘルム・シェーレは、酸素を「火の空気」、窒素を「駄目な空気」と命名した。 アントワーヌ・ラヴォアジエは、フランス語で「生きられないもの」という意味のazoteと命名した。 窒素の英語名「nitrogen(ナイトロジェン)」は、ギリシア語のν?τρον(硝石の意)とγενν?ω(「生じる」の意)に由来している[2]。 ドイツ語ではSticken(シュティッケン)(窒息させる)とStoff(シュトフ)(物質)を組み合わせてStickstoff(シュティクシュトフ)と呼ばれており、日本語の「窒素」は、これを訳したものである[2]。 窒素は、かつて物が燃えるもとと考えられていた燃素の研究の過程で発見されたもので、最初に単体分離を行った者の特定は困難である。 1772年、ダニエル・ラザフォードが窒素を単体分離(窒素分子)した[2]。 ほぼ同じ時期にカール・ヴィルヘルム・シェーレとヘンリー・キャヴェンディッシュも単体分離(窒素分子)したと言われている。 窒素が元素であることを発見したのはフランスのアントワーヌ・ラヴォアジエである。 近年の需要に対応して、窒素分子気体について2005年に日本工業規格(JIS K 1107[3])に規定の純度が高められた。 窒素は窒素分子として地球の大気の約78.08 %(体積比)を占める。ほかに、アミノ酸をはじめとする多くの生体物質中に含まれており、地球のほぼ全ての生物にとって、必須の元素である。 オーロラが起きる場合、窒素は赤、青、紫色の光を放出する[4]。 窒素を主体とする大気は地球のほかに、土星の衛星であるタイタンも保持している。タイタンの大気は地球よりも濃密であり、気圧は地球の1.5倍にも上る[5]が、その大気の97%は窒素によって占められている。 窒素は窒素族元素の一つ。生物にとっては非常に重要でアミノ酸やタンパク質、核酸塩基など、あらゆるところに含まれる。これらの窒素化合物を分解すると生体に有害なアンモニアとなるが、動物(特に哺乳類)は窒素を無害で水溶性の尿素として代謝する。しかし、貯蔵はできないためそのほとんどは尿として体外に排泄する。そのため、アミノ酸合成に必要な窒素は再利用ができず、持続的に摂取する必要がある。 ただし、窒素分子は非常に安定した分子であるためにほとんどの生物は大気中の窒素分子を利用することができず、微生物などが窒素固定によって作り出す窒素化合物を摂取することで体内に窒素原子を取り込んでいる。こうした窒素化合物はやはり微生物による脱窒の過程を経て再び大気中に放散され、窒素循環と呼ばれるサイクルを形成している[6]。 窒素分子[注 1]は化学式 N 2 {\displaystyle {\ce {N_2}}} で表され、常温常圧で無色無臭の気体として存在する。分子量28.014、融点−210 °C、沸点−195.8 °C、比重0.808(−195.8 °C)。地球の大気中に最も多く含まれる気体で、大気中の体積分率は地上でおよそ78%である[7]。 窒素分子は常温では無味無臭の気体として安定した形で存在する。また、液化した窒素分子(液体窒素)は冷却剤としてよく使用される。常圧では、窒素分子の沸点は−195.8 °C、77 Kである。 常温常圧下では極めて不活性かつ、アルゴンなどの希ガスに比べると安価な気体であるため、嫌気性条件や乾燥条件を設定する際に、用いられることが多い。
名称
歴史
分布
性質窒素原子における、電子の占める5つの原子軌道。2つの色は波動関数の位相を表している。左端から1s、2s(二分割し内部構造を露出させている)、2px、2py、2pz 軌道である。
窒素分子
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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