空手
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沖縄空手とほぼ同義で使われることもあるが[52]、沖縄空手の中でも、特に糸洲安恒による空手近代化以前のスタイルを指して使われることもある[53]

古伝空手(唐手)もしくは古流空手(唐手)という用語自体は、比較的最近のものである[注 1]。1990年代以降、伝統派空手の内部から空手の近代化に批判的な論客(柳川昌弘新垣清宇城憲治など)が現れ、彼らの著作がベストセラーになるようになった。特に2000年以降、甲野善紀らによる古武術ブームの影響もあり、古伝(古流)空手への回帰論は空手言論界に大きな影響を及ぼした。こうした研究者のすべてが古伝(古流)を標榜しているわけではないが、近代空手と一線を画する論調が相互作用して一つの潮流を形成している。

古伝(古流)空手では、型の再評価や型分解の見直し、また競技化される以前の組手にあった技法――急所攻撃、取手(関節技、投げ技)等――の探究、さらには「」、丹田といった東洋的な概念の再評価が行われている。

古伝(古流)空手の流派には、湖城流本部流心道流などがある。他に沖縄本島の松林流喜舎場塾、日本本土の空手道今野塾、清心館大久保道場(全日本清心会)などの古流稽古スタイルの会派・道場がある。
狭義の伝統派空手(全空連空手、寸止め空手)

一般には本土空手を指す場合が多い。全空連に加盟し、空手道の競技化、スポーツ化に力点をおいている。全空連が寸止めルールを採用していることから、寸止め空手と呼ばれることも多い。競技空手、スポーツ空手とも呼ばれる。本土空手は、剛柔流、松濤館流、和道流、糸東流が規模の上から一般に四大流派と呼ばれ、よく知られている。

本土空手は、大学や高校を中心に発展してきた。それゆえ、より若者向けに型や組手も沖縄より全体的に力強く、ダイナミックで、見栄えがするように変化してきている。しかし、近年では生涯武道という観点から、また古伝空手ブーム等の影響もあって、競技化への反省も見られる。他に本土という土地柄、他格闘技との融合や影響が見られるのも特徴である。

近年では、勝負の判定を従来よりスポーツライクなものとしたポイント制や、拳サポーターの色分け(青と赤。従来は両者が白で、赤と白の区別は赤帯を用いていた)、細かなものでは審判の人数や立ち位置など、ルールにかなりの見直しが施されている。これらはオリンピック種目化を目指しての革新と見られるが、スポーツ化したとき見た目にはさほど違いのないテコンドーが既にオリンピック種目となっているため、実現は容易ではないと考えられていた。

2016年8月3日(日本時間4日)、リオデジャネイロで開かれた国際オリンピック委員会総会で2020年東京オリンピックの追加種目の一つとして空手道が承認された[54]
沖縄空手

沖縄に本拠をおく空手流派である。スポーツ化の傾向にある本土空手と距離をおく意味で、「沖縄空手」が本来の伝統武道空手として用いられる場合も多い。本土の流派が主導する全空連が指定形から沖縄の形を排除したことに反発して、沖縄は本土と距離を置くようになった。しかし、沖縄県空手道連盟のように全空連に加盟している組織もある。

沖縄空手の特徴としては、伝統的な型稽古や鍛錬法を重視している。組手は、本土よりも遅れていたが近年は全空連式の寸止め方式が逆輸入されて盛んになっている。以前は防具組手も行われていた。ほかに武器術や取手術の併伝などを挙げることができる。しかし、沖縄空手も糸洲安恒以降近代化しており、また本土からの影響もあって、琉球王国時代そのままというわけではない。明治以降、東恩納寛量や宮城長順による那覇手の改革、新たに中国からもたらされた上地流等の普及により、琉球王国時代の特徴をそのまま継承する流派はむしろ少数になっている。湖城流のように戦後県外に流出した古流流派も存在する。しかし、少数の道場では、今日でも古くから伝えられた技や稽古法の保存に努めている。近年では沖縄県自体も空手の発祥地を意識して、「沖縄空手」の国際的な宣伝に力を入れている。

沖縄空手の流派には、三大流派として剛柔流上地流小林流があり、他に糸東流、沖縄拳法、少林流、少林寺流、松林流、本部御殿手、沖縄剛柔流、沖縄松源流、劉衛流、金硬流などがある。本土の空手会派とは組織形態が異なり、多くの沖縄空手会派、流派は単独組織を維持し、本土より世界各国に、より数多くの支部道場を持ち、世界的な大きな広がりがある。
フルコンタクト空手

直接打撃制ルールを採用する会派。開祖となった極真空手がもっとも有名であるが、広義には以下のものも含まれる。そもそも直接打撃制ルール自体は寸止めルールよりもはるかに歴史は古い。詳しくは、フルコンタクト空手を参照。
狭義のフルコンタクト空手(極真カラテなど)

極真会館とその分派の多くに代表される「手技による顔面攻撃以外」の直接打撃制ルールを採用する会派のことを指す。しかし、近年では国際FSA拳真館極真館など一部の試合で手技による顔面への直接打撃を認める会派も増えている。また、最近は幼年部・少年部・壮年部の人口が増加しているため、上級者以外ではヘッドギアやサポーターをつけることが多くなっている。極真会館の分派以外には伝統派空手の分派や、少林寺拳法の分派である白蓮会館、日本傳拳法の流れを汲む士衛塾、国際FSA拳真館などがある。2013年(平成25年)には、新極真会緑健児JKJOの渡辺正彦の呼びかけで、全日本フルコンタクト空手道連盟(JFKO)が発足。いわゆる直接打撃制ルールを採用するフルコンタクト空手諸団体の統括組織と位置付けられている。そして2014年(平成26年)5月、直接打撃制(フルコンタクト)ルールを採用するフルコンタクト空手界で初の統一大会(JFKO主催による第1回全日本フルコンタクト空手道選手権大会)が大阪市中央体育館で開催された[55]
アメリカのフルコンタクト空手

フルコンタクト空手のもともとの意味は、アメリカで始められたキックボクシング的なプロ空手のことである[56][57][注 2]。ボクシングとの差異を計るため、1ラウンド毎に対戦相手の腰より上へのキックを8本以上蹴らなくてはならないルールが特徴的。参加選手の出身流派は、沖縄や日本の空手諸流派だけでなく、韓国のテコンドーやアメリカなど欧米諸国で誕生した新興流派の出身者も多い。現在はキックボクシングの一種として“フルコンタクト・キックボクシング”という呼び名で、競技として成熟しつつある。
総合空手(格闘空手、バーリトゥード空手)

打撃のみならず、投技や寝技なども取り入れ、いわゆる総合格闘技に近い形での試合を行う会派を指す。代表的な会派は、一切の防具着用をせず、また一部で素手の拳による顔面攻撃を認めた試合を行うため、もっとも過激なルールと言われる真武館などや、空道の分派である空手道禅道会などが挙げられる。
POINT&KOルール空手

極真空手に代表されるフルコンタクトスタイルに加えて、相手が防御できない状態で正確な蹴りが入った場合、ダメージの大きさにかかわらず技術点としてポイントを与え、技術的優劣を明確にするPOINT&KOルールで試合をする会派である。胸部への突きとローキックを主体とするスタイルを改め、伝統空手のスピードとフルコンタクト空手の破壊力を取り入れている。主な会派として佐藤塾寛水流空手などがある。
防具付き空手

防具をつけて試合をする空手競技のことである。組手競技ルールとしては元々寸止め空手やフルコンタクト空手よりも歴史が古く、空手界で最初の全国大会である全国空手道選手権大会も防具付きルールで行われていた。錬武会錬心舘など伝統派空手の一部が長年掛けてルールと防具を改良し完成させた。詳しくは、防具付き空手を参照。
伝統的な防具付き空手

防具着用の競技形式は戦前より研究され、東京大学の唐手研究会、大阪の摩文仁賢和立命館大学の山口剛玄、剛柔流宮城長順等がそれぞれで防具の使用を試みていた。また沖縄でも一時期は防具着用による試合が沖縄拳法(中村茂)の名称で行われていた。その中で制度として定着したのは戦後の武道禁止令の中、剣道の防具着用による金城裕が主導した韓武舘の防具付き空手だった。韓武舘は遠山寛賢の無流派主義を受け継ぐ道場で後に全日本空手道連盟(旧)に発展。後に四大流派等とともに現在の公益財団法人全日本空手道連盟を発足させ、全空連の協力団体として防具付き空手を統括する全日本空手道連盟錬武会となった。同様に伝統的な防具付き空手団体としては全日本少林寺流空手道連盟錬心舘、千唐会等があり、いずれも広義の伝統派空手に含む場合もある。錬武会は無流派主義で全空連の防具付き空手統括団体として他流派をルーツとする団体の加盟も認めている連盟であるが、錬心舘と千唐会は一流一派の会派団体となっている。いずれも、伝統的な動作や引き手を重視する一本勝負で試合を行い、錬武会と錬心舘は「技あり」に相当な打撃強度が求められる。


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