これらの総合的な特性から、強制空冷方式は比較的小排気量の汎用エンジンにおいて、引き続き主流の技術として用いられている。環境対策面から4ストローク式が一般的であるが、小型軽量で連続高回転・高負荷稼働を強いられる刈払機・チェーンソー等の動力に用いられる汎用エンジンは、熱効率や騒音、排気ガス問題をある程度度外視しても小型であることを最優先する必要があるため、いまだ強制空冷式2ストロークエンジンが主流である。
自動車用では一時は強制空冷式が隆盛を誇ったものの、騒音や排気ガス対策問題に代表される時代の流れに対応できず、20世紀末期までにマイクロカー以外ではほぼ姿を消した。二輪車においては自然空冷、強制空冷とも2010年代でも相当な比率を占めるが、極小の50ccクラスに水冷モデルが出現するなど、やはり環境対策問題から市場情勢にも変動が生じている。そのためメーカーでは部分的に水冷・油冷を組み合わせることで、空冷の存続を図っている。
自動車1976年式ポルシェ・911 ターボ カレラ。空冷水平対向6気筒ターボエンジンを搭載。1968年式ホンダ・RA302。空冷V型8気筒自然吸気エンジンを搭載。実戦は1戦のみだった。
水冷同様、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンとが存在する。ガソリンエンジンは、第二次世界大戦後ブームとなった事もあり、数多くの採用例が存在する。
アメリカでは主流とならなかったが、1902年創業のフランクリン社は1934年まで空冷エンジン自動車を生産したことで知られている。創業者はダイキャストという言葉を作り、それ以前にはダイキャスト事業をおこなっていたハーバート・フランクリンである。不凍液の登場までは、寒冷となる地域ではコールドスタート性能に優れた空冷エンジンが大きな優位性を持っており、いかなる天候時でも車に乗る必要があった医者の往診用車両として重用された。1905年には直列6気筒エンジンも製作している。
ヨーロッパでは、1924年から空冷エンジン車を手掛けるようになったチェコのタトラの影響が大きく、その後フォルクスワーゲン・タイプ1、タイプ2やポルシェ356がリアエンジンと空冷エンジン方式を採用した。
さらにフォルクスワーゲンの成功からフォロワーが多く現れ、一時はGMやトヨタさえもが手がけるなど、第二次世界大戦後の大衆車ではリアエンジンと並び、空冷エンジンは流行の機構構成となった。
またリアエンジン以外では、フランスのパナールやシトロエンが1940年代後期以降、FFとの組み合わせで、水平対向エンジンを前車軸前方にオーバーハングさせるレイアウトを、小型車に採用している。
各メーカーとも簡単な構造で低コストである空冷のメリットを生かすべく、駆動方式はRRかFFが一般的であり、GMも無理をしてその流行に乗ったほどであった。トヨタは等速ジョイントの信頼性への不安、および操縦安定性への不安からFF化およびRR化に非常に慎重であり、初代パブリカと、その派生車であるスポーツ800、ミニエースをFRレイアウトとして発売した。また、三菱自動車工業も三菱・360や初代三菱・ミニカにおいて、カタツムリに似たシュラウドで完全にエンジンを覆い、シロッコファンで強制冷却を行うME24型2ストロークエンジンを採用し、FRレイアウトで販売した。