科学者
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科学者による不正行為詳細は「科学における不正行為」を参照

上記の構図の中で心理的に追い詰められた科学者の一部が起こす一連の病理的な行動はpublish or perish syndrome「発表するか死か 症候群」などと呼ばれることがある。

科学者が道徳的かどうか、または不道徳で不正行為を行う可能性があるかどうかについての研究があった。この研究は、厳密なジャーナルであるPLOS ONEで発表された。結論としては、科学者は本質的に不道徳ではないが、不道徳な行動を取る可能性があるだけである[5]

科学者の一部には、功を焦るあまりに不正行為を行う者がいる。不正行為の内容としては、実験データの改ざん・捏造、アイディアの盗用、論文の盗用、試料の窃盗、実験データ記録媒体の窃盗などがある。このような不正行為は、内容によっては科学界を揺るがす事件となったり、さらにはマスコミを通じて広く一般の人々にも知られることもある。

また論文の成立に何ら直接貢献していない者が、ただ研究室の責任者の立場にいるというだけで論文の共同執筆者として名を連ねるという不正行為がある。このように立場の強い者が陰に陽に政治的影響力を行使して名を連ねさせる場合もあれば、逆に論文執筆者側が、誰かから何らかの利益が供与されることを期待して共同執筆者として名を表示する機会を提供している場合もある。また同一グループ内の複数の科学者が共犯的に相互の論文の共同執筆者として名を連ね、互いの業績数を水増しするようなことも行われることがある。これらの共同執筆者に関わる不正行為は科学者の間ではその不正な性質を隠蔽する形でhonorary authorship「名誉のオーサーシップ」やgift authorship「ギフトオーサーシップ」などと呼ばれることがある、が名称は何であれ不正行為には変わりないというのが公的機関の公式見解である。

また、科学者が既得権益者となってしまった場合、新しい研究成果に照らして考えを変えることは特に困難である[6]。これは別に法的な不正行為ではないが、結果として学界に不利になる。科学革命によれば、科学活動全般が進歩する中で、研究手法や科学全体の大前提が変わるというパラダイムシフトがしばしば起こる。そして、この大前提の変化は、たいてい若者や他分野の専門家によってもたらされる。このため、若手や他分野の専門家は特に有用であるはずだ[7]

例えば各省庁や関連の公的機関に対して提出する研究費申請書類に上記のような不正を利用し、それにより支給された研究費を使った場合などは、もはや科学という学問内部の規範の問題では済まず、公文書偽造および公金横領という重大な違法行為、明らかな犯罪行為であるので、そのようなことを行った者は逮捕処罰される可能性がある。

最近の科学者による不正行為の例として、「ファン・ウソク」や「ヘンドリック・シェーン」、「小保方晴子」の項が参照可。
科学者と行為責任

現代では科学と技術が軍事外交政治経済社会、個人生活にまで及ぼす影響が大きく、そして深刻になっている。例えば核兵器の開発により、第二次世界大戦中に数十万人が命を落としただけでなく(原爆の項参照)、その後の冷戦時代に一歩誤れば人類が滅亡しかねない状況も起きた。そのため、科学者の個人としての活動であれ、集団としての活動であれ、その活動の行為責任・社会的責任を問う声が、科学者自身からも科学者以外の人々からも発せられ、広く議論となった。このような議論を踏まえ、1980年に日本の科学者達は「科学者憲章」を発表した。

この憲章の後も、科学者の社会的責任・行為責任への人々の関心は高く、科学者の活動のあり方は今後も問われ続けることであろう。
科学者とエンジニア

科学者が基礎的な研究を行う傾向があるのに対して、エンジニアのほうが概して時間的に限定された中で具体的な成果を出す活動を行っている傾向があると、大まかに区別することは可能だが、科学者とされる人が極めてエンジニア的な活動を行っていることもあるし、逆にエンジニアとされる人が高度に科学的な発見を学会等で公表することもあり、常に境界がはっきりとあるわけではない。

現代において、科学が人々から賞賛されているのは、必ずしも科学者と呼ばれる人々の活動が評価されているからではなく、エンジニア達が行っている活動、すなわち人々の具体的な要望や組織の要求事項を理解しようとする努力を惜しまず、その要望に応えて成果を制限時間内に着実に出す活動が、個人生活や企業活動の中で大いに評価・賞賛されていて、その波及効果で科学者全体の評価も高められているという側面があることも見逃してはならないだろう。「エンジニア」の項も参照のこと。
科学者と創造的思考

意外なことに、記憶力の良い科学者は、自分の記憶力を過信して、新しい研究成果を無視する傾向がある[8]。短期記憶が苦手な人は、一見無関係な現象につながりを発見する傾向がある。新しいことを学ぶのが遅い人は、新しいことを学ぶのが早い人よりも、その学習過程から思いがけない発見をしやすい[9][10]。創造性については、多くの研究がなされている。創造性は、新しい分野に挑戦したり変化を求めたりする際に、無能感に怯まないことと関連している[11]。したがって、社会的な協調性の欠如や非集団性の傾向は、新しい経験に対する開放性と同様に、高い創造性と関連している[12]


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