科学的方法
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SFAAでは、本質的に立証も反証も行えないような対象は、原則論としては科学の対象とはみなされない[2]とされている。

しかし、総じて言えば、反証可能性は現実には、「ポパーの反証可能性の原則」は、言われているほど現実の研究者には、受け入れられておらず、むしろ軽視されている[49]とも言う。

ラリー・ラウダンらは「(反証可能性は)普通は科学的とみなされないような理論でも、満たすこともあり、これまで成功してきた多くの科学の実例は、反証可能性を逸脱している」と指摘した[要出典] 。ここで、「反証可能性を逸脱する」とは、「基本法則の成否判定が、少なくとも現実には不可能で、補助仮説を補ったり実験手続きの不備などを仮定するなどの“逃げ”(小規模な修正)によって理論が変わっていくこと」を指す[3]


また、「三体問題は、運動方程式が支配法則である」という問題は、古典力学の問題で、二体問題が大学入試レベルであることと対照的に、(解が存在するものの)解析解が原理的に発見しえないことが数学的に分かっているうえ、解の不安定性が存在する可能性もあり、軌道を予測したければなんらかの近似をせざるを得ないことになる。従って、なんらかの“反証”らしき実験結果が出たとしても、不安定平衡点の存在によるのか、「近似の粗さの問題」なのか、「そもそも三体以上の問題には運動方程式が適用できない」のか「基礎方程式の間違い」なのか、「近似のまずさ」なのか、「実験の問題」なのかは、極めて難しい問題となる[要出典]。


さらに、現実の科学は、現実の科学研究の進展においては、仮説はあいまいなところからはじまり徐々に明確になっていく傾向があり、論文を書く場合には簡単には反証されないように細心の注意を払う傾向があると指摘される[59]

通常の科学者は、ある理論に対していくつかの反証となる例が発見された場合にも、理論自体を全否定するという考え方はしない。通常は、アドホックな仮説を積極的に投入することにより、予測の精度を高めてより広範に受け容れられるように何らかの変更を加えること[2][3]が一般的である。場合によっては、欠点を認識しながら、そのまま未修正の学説を使い続けることもある。

具体的な科学の事例においては、相対性理論の有用性は、古典力学の反証によって立証されたが、相対性理論の構築は、ニュートン力学を破棄、否定する形をとらず、むしろニュートン力学がより一般的な概念の中で適用範囲が限定された一つの近似であるにすぎないことを示す形で行われた[2]とSFAAでは説明された。さらにニュートン力学に基づいた計算は、現在でも無修正で科学技術の最先端で使われることが多々ある。この意味でも「ニュートン力学が相対論によって否定された」とまで言い切るのは早計であり、現在の科学者の標準的な考え方とは大きく異なる[2][3][15]

さらに疑似科学と科学の線引きに関しても、実際に論点となるのは、個々のデータの有意性や論理的整合性等である[85]

現在の研究の最前線において、反証可能性の原則が、実際にはきわめて軽視されている現状に対して危機感をつのらせる人もいる。例えばリース・モーリン博士は、現在の最前線における物理学の理論が、「どのような実験結果でも取り込めるほどパラメータが多い」ことを指摘したうえで、反証可能性を軽視している傾向を、「物理学の迷走」と断じている[49]。実際、モーリン博士が指摘するように、最近の素粒子物理、量子情報、物性理論等は極めて数学に近い様相を呈しているため反証可能性の原則を逸脱していることはしばし指摘される。また、特に、萌芽的な理論においては、実験がどんな結果を出してもそれを取り込めてしまうほどパラメータが多く、しかもそのパラメータの物理的な意味が不明確であることもしばしば指摘される。現在でも、このことを理由として権威ある雑誌への掲載が拒まれることがあるとされる[50]。但し、この傾向も最近では現実的な方向に、つまり反証可能性に偏重しない方向にシフトしつつある[50]


しかし、実はポパーは、仮説のアドホックな修正について全面的に禁止してなく、その修正により反証可能性の度合いを増やす場合に対し、受容可能としている。[86]

決定不全の説明で繰り返し使われる事例として、海王星の発見がある。天王星が発見されたとき、その軌道がニュートン力学の予測とずれていることが観察された。そのとき天文学者たちはニュートン力学を放棄するという路線ではなく、未知の惑星があって天王星に影響しているという仮説をたてる路線を選び、これが海王星の発見につながった。

この問題はしばしば反証主義の難点として指摘される。しかし、その条件付きの修正が可能な場合、その仮説の修正は、その条件を満たすので認められる。[87]
脚注[脚注の使い方]
注釈^ a b 例えば、科学的であること必須要件の中に反証可能性というのを挙げる者がいる。確かに、幽霊インテリジェントデザインに等といった疑似科学を処断するうえでは、反証可能性による線引きは、それなりの成果をあげているようである(たとえば、伊勢田哲治「科学哲学における線引き問題の現代的展開」名大哲学会発表(2000) ⇒[1])しかしながら、前記の科学哲学者の伊勢田哲治の論文中に、以下のような記述がある。

われわれが科学のもっとも成功した例とみなすようなものまで排除してしまうような形で「科学」([()内は引用者による注]反証可能性を用いて定義された科学)が定義されるなら、その定義そのものが疑問に付されるのもやむをえない。

とある。また、この問題点に関する修正として、科学者一般の間でコンセンサスのとれた修正が存在するとも言い難いようである。このような理由で、反証可能性を科学的であることの必須要件にするのは、一面的過ぎる。

本記事では、以下のような記述は、記事の扱うテーマの趣旨に反すると考え、記載対象から除外する。前二者については疑似科学が取り上げている。

オカルトや、トンデモのように、科学的な思考とはその根本的な基盤が異なる世界の例ばかりを挙げているもの。

「すべてのカラスが黒いという命題は反証可能性がある」(全称命題のに似たものの説明をしたいらしいように見えるが、数学でもない限り全称命題に全面的に頼るというの現実的でない)のような、ありきたりで微妙な例しか挙げていないもの。

「相対論により力学が反証され古典力学は意味を失った」等といった、「予測精度」という考え方を知っていればアホラシイとわかるような記述が至る所にちりばめられているもの。少しでも科学技術をかじっていれば、現実の科学技術の最先端でどれだけ古典力学が有用かを思い知っているはずである。

^ この報告書は、すべてのアメリカ人が身に付けるべき科学的な素養についての指針を与えるために、アメリカ科学振興協会の中心的なメンバーの草起・承認のもと発行され、日本を含む世界各国の教育行政に影響を与えている。特に、科学リテラシーに関する内容が中心となっている。いわゆる学習指導要領とは異なり、「小学3年生では、何と何を学びなさいといった」ことを書いたものではなく、科学工学数学など、科学に関係する分野の特徴づけに多くの項目を割いたものである。
^ 似たようなことは、引用文献のうち多数に、少なくとも断片的には書かれているが、特に権威があり、国際的に通用する定番の文献としてこれらの文献を挙げる。
^ 例えば、全ての問題の中で定量化が可能な問題の割合はどのくらいあるか?
^ 中谷の言う「再現可能性」は、「全く同じ現象が何度も起こる」という最も狭い意味よりも少しゆるやかである。
^ 但し、PDCAサイクルが日本で広まった背景にはQC活動があり、この活動は、統計の専門家や、品質管理の専門家が中心となって広めた活動であるため、広く言われるところのPDCAサイクルは、根底となる思想面では研究の工程と共通する部分が多いものの、実際には意識の違いがある。意識の違いのうち最も大きな点は、QC活動では、「データに合うように研究目的を変更すること」はよいこととはされない点、また、実際の研究レベルでは、大半の成否は、「予備実験、基礎検討」までの段階で決まってしまう点である。
^ これらの分野における基礎方程式の解は、大体の場合存在することを数学的に保証できるが、多体効果や組み合わせ効果の影響で解くことができない。
^ より多くの現象を統一的な視座から説明する上では必要な概念があるかもしれない;逆二乗の法則を見ている限り、電場や磁場のような“余計”な実態を仮定しない遠隔作用論がシンプルであるが、電磁誘導特殊相対性理論まで考えると近接作用のほうが圧倒的にシンプルである。
^ 実験計画法に関しても既にさまざまなレベルの良質な文献が複数刊行されているが、示すべき命題が明確になっている状況を(主に品質保証やルーチン的な実験)意識して書かれたものが多いため、示すべき命題が混沌としているところから、仮説を形成することを仕事とする研究者との間に意識のずれがある場合もある。
^ 例えば、「表面の凹凸をSTMAFMで測り両者の共通点や相違点を見る」、「英語力をTOEIC英検の両方で測定しておく」のように。
^ もちろん例によっては、こういうやりかたをしたことによって、真の最適解を見逃す可能性もあり得る。
^ 例えばカイ二乗検定では、サンプル等から計算された検定統計量がカイ二乗分布に従うことを前提とする。
^ 装置の発明を神格化する意図はない。


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