福祉国家論
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アメリカ[21]イギリス[27]カナダ[21]スイス[28]オーストラリア[21]、日本(*注[28])などがある。市場による所得比例(業績評価モデル)と政府による最低保障(残余的モデル)の組み合わせが特徴[21]

ベヴァリッジ報告書では以下を「5つの悪」とし、国家による社会保険制度を整備することでこれに対抗し、それが不可能な場合に備えて公的扶助を設けるとした[8]
窮乏(want)

疾病(disease)

無知(ignorance)

不潔(squalor)

怠惰(idleness)

政府による社会保障給付は底辺層に対する社会的スティグマをともなった選別主義的なもの、もしくは中流階級のニーズに応えられない低水準なものである。よって、社会保障は主に個人が民間保険などから調達し、政府は福祉ビジネスの環境を整えることが役目となっている。また、労働政策は労働者の社会保障が最低限である。従って雇用の流動性は高い。そのため所得格差が拡大するが、グローバリズムへの適応力が高いといわれる。「イギリスの福祉」も参照
保守主義的福祉レジーム

大陸ヨーロッパ・モデル(コンチネンタルモデル)とも呼ばれる。ドイツ[21]フランス[21]ベルギー[28]などである。職域組合や企業福祉などによる所得比例(業績評価モデル)と政府による最低保障(残余的モデル)の組み合わせが特徴。社会保障は補完性原理を基調とし、家族を中心とする血縁、コーポラティズム、国家主義を強要する。労働者の保護は労働組合の恩恵が及ぶ限りにおいて高度である。そのためインサイダー(端的には正社員の男性)とアウトサイダーの社会的分断(デュアリズム)が生じ、概して失業率が高い。また、職業と福利厚生が一体化していることとあいまって、雇用の流動性を阻害するといわれる。このレジームに固執する限り、グローバリズムの前には袋小路になり経済パフォーマンスが低下するとされる。「キリスト教社会主義」および「キリスト教民主主義」も参照
家族主義的福祉レジーム

南欧=東アジアモデルとも言われる。イタリアが代表的。ほかにスペインポルトガルギリシャ、日本(*注)、大韓民国台湾である。福祉施策は貧弱で福祉ビジネスも未発達なため、高齢者失業子育てなどについて家族が責任を持つべきとする家族主義が特徴。家族に過度な負担をかけるため少子化の弊害が深刻化するとの意見がある。「イタリアの福祉」も参照
福祉国家再編の政治社会支出の対GDP比の推移[29]
制度的持続

福祉レジーム論は、福祉国家の発展における労働組合や社会民主主義政党(あるいは社民政党と競合するカトリック政党)の主導性を重視している。しかし、ポール・ピアソンは、マーガレット・サッチャー政権下のイギリスで労組の弱体化が進展し、アメリカではもともと労組が脆弱であるにもかかわらず、その両国ですら1980年代では新自由主義が主張するほどには社会保障の削減に成功しなかったことを指摘している。これは、社会保障制度が1度確立すると利益集団のネットワークが構築されて社会保障の削減に対する抵抗が生じ、また、受給者の反発を恐れる政治家も福祉政策の縮減を忌避するためである[23]。よって、福祉国家の形成では経済レジームや政治的党派性などのマクロ要因が重要(福祉レジーム論)であったが、福祉国家の縮減では非難回避の戦略の成否が重要になる、とピアソンは論じている。具体的には、

非難の大きい争点を外すように課題設定する。

損失を伴う政策に対して積極的な意味づけを与える。

損失を伴う政策に対して代償政策を実施する。

政策決定者の可視性を低下させる(政策決定を官僚、諮問機関、地方自治体に委ねる、など)。

政策効果の可視性を低下させる(施行の先送りや段階的施行、など)

利害の異なる集団間の対立を煽ることで非難の矛先が向かないようにする。

超党派で合意を形成して政策を実行する。

などが挙げられる[30]
新しい福祉圧力

グローバル化は、各国で「最底辺への競争」を惹起するという点で、福祉政策の縮減を促すと一般的に論じられている。しかし、ジェフリー・ギャレットは、グローバル化によって社会の流動性が増し、新しいリスクが生じる結果、福祉政策を通じて富とリスクを再分配することが政府に期待されるようになると反論した。

また、脱工業化については、組織労働の解体を促すことによって、福祉政策の縮減のハードルが下がると一般的に論じられている。しかし、トービン・アイヴァーセンは、製造業で見られた職域的な福祉の解体によって、より包括的な社会保障の構築が政府に期待されるようになる可能性に言及している[31]
日本の福祉国家像「日本の福祉」も参照

日本の福祉レジームについて、厚生労働白書では「エスピン=アンデルセンは、日本の現状の福祉システムは、保守主義を中心としながらも自由主義的なシステムを混合して構成されている」と述べられている(福祉の供給主体)[21]

日本の経済政策をめぐる議論の中で、福祉国家像が明示的に議論に上ることは少ない。

社会学者盛山和夫が、「経済成長は不可能なのか」を問い、社会保障を投資と見ることを提唱している[32]
福祉支出

経済力と福祉支出については、殆ど相関関係はない[33]

OECD諸国の福祉支出(2001年) [34] OECD[35]UNDP[36]による国福祉支出
(% of GDP)
教育を除く福祉支出
(% of GDP)
教育を含む一人あたりGDP
(PPP US$)
 デンマーク29.237.9$29,000
 スウェーデン28.938.2$24,180
 フランス28.534.9$23,990
 ドイツ27.433.2$25,350
 ベルギー27.232.7$25,520
 スイス26.431.6$28,100
 オーストリア26.032.4$26,730
 フィンランド24.832.3$24,430
 オランダ24.327.3$27,190
 イタリア24.428.6$24,670
 ギリシャ24.328.4$17,440
 ノルウェー23.933.2$29,620
 ポーランド23.0N/A$9,450
 イギリス21.825.9$24,160
 ポルトガル21.125.5$18,150
 ルクセンブルク20.8N/A$53,780
 チェコ20.1N/A$14,720
 ハンガリー20.1N/A$12,340
 アイスランド19.823.2$29,990
 スペイン19.625.3$20,150
 ニュージーランド18.525.8$19,160


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