福山市は、瀬戸内海の中央部で広島県の南東端に位置する。
三原市北部の大和町を源とする芦田川の河口に広がるデルタ地帯及び江戸時代以降干拓事業により築かれた福山平野に市の中心地がある。市の南端は瀬戸内海に面し、北部山岳地帯は概ね標高400 - 500メートルの吉備高原西南端部にある通称「神石高原」南端から形成される。ここは岡山県倉敷市へ注ぐ高梁川支流小田川流域である。
市街地は概ね、旧福山市街・東部(蔵王、春日)地区・南部(鞆、沼隈)地区・松永(旧松永市)地区・北部(神辺、駅家、加茂)地区に大別され市民性も地域により若干異なる。旧福山市は周辺の自治体を次々と編入したが東部は県境に、南部は海に阻まれているため市域は北部、西部へと拡大することとなった。結果として福山市の中心部は市域の南東に偏っている。一方で中心部から岡山県井原市、笠岡市までの距離は福山市の西端、北端より小さい。また福山都市圏の広がる井原市、笠岡市にかけては市街地の連続性が高く県境を越えた連携が政経民間で幅広く見られる。
地理
福山市は瀬戸内海式気候に属し、広島県内でも降水量が少なく(年間約1200mm)河川の流量が少ないのが特徴である。そのため市街化の進んだ地域を中心に河川の汚濁が顕著で、下水道事業などによって改善された地域もあるものの、多くの場所で水質汚濁が問題となっている。流水量の少なさや河口堰による汽水の消滅等の影響で、市内を南北に流れる芦田川は中下流の汚濁が激しく、水質は中国地方の一級河川の中で平成24年まで38年間連続ワースト1を記録してきた[11]。
市域の北半分および芦田川より西部は、中国山地に連なる山地となっている。植生は平野部に近いほどアカマツが多く、単調な傾向にある。山並みは風化・侵食を受けやすい花崗岩が多いため起伏が激しく、川沿いを中心に多くの谷が形成されている。市内最高峰は吉備高原南端の京ノ上山で海抜611m、2位は駅家町北部の蛇円山で546m、3位は加茂町北部の笠木山で513mとなっている。北部の山野町付近には部分的に石灰岩質の地質もあり、特に高梁川支流の小田川渓谷を作り上げている猿鳴峡があり、近くには県天然記念物の“矢川のクリッペ”や“上原谷石灰岩巨大礫”という石灰岩に纏わる名勝も存在する。また隣接する井原市には石灰岩の採石場(芳井鉱業所)もある。
南側は瀬戸内海(備後灘)が広がり多くの島が点在しているが福山市に属する島は少数である。福山市沖は瀬戸内海のほぼ中央に位置しており、満干差は非常に大きく平均で2mを超え、海流の速度は部分的に非常に速い。波は穏やかで波高は通常で50cm未満、荒れても2m程度である。津波の被害を受けた記録は存在しない。ただし、明治17年(1884年)の台風による高波では大きな被害が発生している。市で最大の島は田島で本土(沼隈半島)とは橋が架けられている。海底面は起伏があまりなく水深は深くとも30m程度である。かつての福山市沖は干潟が多く存在し、ニホンアシカも分布していたり[12]、尾道水道の例から判断するとクジラも回遊していた可能性がある[13]など豊かな自然に恵まれていたが、その大半は江戸時代からの干拓や日本鋼管福山製鉄所(現JFEスチール)建設の埋め立てなどにより消滅している。現在は家庭・工業廃水などの影響により福山港周辺の汚濁が深刻で特に夏期には海水が茶色あるいは乳白色に染まることもある。しかし、鞆の浦など湾岸沿いの大部分も透明度は高くないが陸から5km程度沖合に出れば(瀬戸内海としては)非常に綺麗である。
地震は少なく、歴史上では地震により大きな被害を受けた記録は見つかっていない。このため、近年までは地震空白域とされていたが、2000年の鳥取県西部地震で震度5弱、2001年の芸予地震でも震度5弱を記録した。ただし、いずれも人的被害はない。活断層も近年まで確認されていなかったが、2002年に北部の加茂・御幸地区から西部の松永地区にかけて活動度B級の「長者原断層」の存在が明らかになり[14]、少なくとも3世紀以降に活動した痕跡が見つかっている。
主要な山岳・河川・島嶼部
主な山岳 : 京ノ上山(611 m・市内最高峰・福山市新市町藤尾)、蛇円山(546 m・福山市駅家町)、熊ヶ峰(438 m・福山市熊野町)、蔵王山(226m・福山市千田町)
主な河川 : 一級河川芦田川、芦田川支流瀬戸川、神谷川、加茂川、高屋川、一級河川高梁川支流小田川、二級河川藤井川、本郷川
主な島嶼 : 走島、宇治島、田島、横島、仙酔島、弁天島、皇后島(※箕島は戦前までは島であった)
主な池 : 春日池、服部大池、権現池、枠田池、千塚池、本谷池、他多数
気候熊ヶ峰からの福山市街
福山市は地形と立地場所による影響により、典型的な瀬戸内海式気候[15]である。夏の季節風は四国山地に、冬の季節風は中国山地によって各々遮られる。このため年間を通じて天気や湿度が安定しており、降水月が5、6、7月(梅雨時)と9月(秋雨・台風時)の二峰性となっており、二峰の間の8月(盛夏)の降水量が著しく少なく、雨温図上大きく凹む。
冬から春にかけて、中国大陸から流入する黄砂が観測されることも多い。また、冬には氷点下まで下がる日もある。太平洋高気圧に覆われる夏季には瀬戸内海沿岸特有の「凪」が発生し、日中の気温は35℃を超える猛暑・酷暑となる日もある[16]。降雪は少なく、平地部の積雪は稀である。
福山特別地域気象観測所(福山市松永町、標高2m)の気候
月1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月年
最高気温記録 °C (°F)17.4
(63.3)23.6
(74.5)24.1
(75.4)28.6
(83.5)32.4
(90.3)34.7
(94.5)38.2
(100.8)38.5
(101.3)36.7
(98.1)32.2
(90)27.1
(80.8)21.4
(70.5)38.5
(101.3)
平均最高気温 °C (°F)9.8
(49.6)10.5
(50.9)13.9
(57)19.2
(66.6)24.0
(75.2)27.0
(80.6)30.9
(87.6)32.8
(91)28.8
(83.8)23.3
(73.9)17.5
(63.5)12.1
(53.8)20.8
(69.4)
日平均気温 °C (°F)4.6
(40.3)5.2
(41.4)8.5
(47.3)13.7
(56.7)18.7
(65.7)22.5
(72.5)26.6
(79.9)27.9
(82.2)24.0
(75.2)18.0
(64.4)12.0
(53.6)6.8
(44.2)15.7
(60.3)
平均最低気温 °C (°F)0.0
(32)0.4
(32.7)3.2
(37.8)8.1
(46.6)13.3
(55.9)18.5
(65.3)22.9
(73.2)23.9
(75)19.9
(67.8)13.3
(55.9)7.1
(44.8)2.1
(35.8)11.1
(52)
最低気温記録 °C (°F)?8.1
(17.4)?9.2
(15.4)?5.9
(21.4)?1.8
(28.8)2.8
(37)8.0
(46.4)13.2
(55.8)15.8
(60.4)8.0
(46.4)1.5
(34.7)?2.4
(27.7)?6.7
(19.9)?9.2
(15.4)
降水量 mm (inch)38.5
(1.516)47.0
(1.85)83.7
(3.295)91.6
(3.606)117.7
(4.634)174.5
(6.87)198.0
(7.795)95.2
(3.748)136.0
(5.354)91.1
(3.587)55.1