神話は、古代ギリシアにおいてはミュトスとして伝えられ、ホメーロスの『イーリアス』『オデュッセイア』、ヘシオドスの『神統記』『仕事と日』などのように、霊感を受けた詩人が神々の行為を権力者に語る歌の形式となった。これらは神が人に真実を語る力関係の基、聞き手である強者・男性的価値観に副うようにつくられていた。それに対しロゴスは説明する言葉であり、弱者が強者に使う、多少の嘘を含みながらも説得力を持たせることを目的としていた[78]。
これが、現在用いられるミュトス=真実ではない「虚構」、ロゴス=知性や理性に裏打ちされた「真理」へ逆転した転換点は、ギリシア民主制の誕生にある。市民が話し合いながら政治を進める体制では、必要な議論は神がかった詩人の言葉ではなく、理性や知性を働かせ、相手を説得する言葉でなければならない。これを背景に、ロゴスこそが真実という概念が固められ、相反してミュトスが虚偽の意味合いを持つようになった[78]。 日本の古典には、「神語(かんがたり)」という語はあるが、「神話」という語はない。これは明治20年代に、英語の「myth」を「神話」と日本語に翻訳した事で用いられる様になった翻訳漢字であり、中国や朝鮮の古典にもない言葉である[79]。これは本来、神話と呼ばれるものが語られるものであって、文字によって書き残されるようになったのは後であるためとされる。したがって『神話』という日本語は、近代から用いられる様になった比較的新しい語である。
「神話」という語
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