神話
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

例えばサルティウス(en)[61]は神話を5つの種類に分けた。神学的、物理的(または自然の法則との関連)、アニマスティック(または魂との関連)、物質的そしてこれらの混合である。この分類は最終的に2-3に纏め直されたが、この考え方は神話研究の嚆矢となった。

プラトンが『国家』にて詩人が語る神話は教育上害悪だという主張(詩人追放論)を展開した事は有名だが、その一方で多種類の神話を著作中に引用した。その後のプルタルコスポルピュリオスプロクロスオリュンピオドロスダマスキオスらプラトン派の思想家も伝統的な神話やオルペウス神話の象徴を明白に解釈する著述を行った[注釈 1]

ルネサンス期には多神教の神話へ再び関心が向けられ、16世紀には『Theologia mythologica』(1532年)のような神話に関する書籍が著された。
19世紀の理論

神話を扱う学究的理論は19世紀後半に提示された[60]。この時代の考えでは神話は失われたり時代遅れであったりする思考として扱われたが、一方で神話は近代科学に相当する原始的な概念という解釈も行われた[62]。研究手段には歴史学文献学民族学的手法が持ち込まれた[2]。特にインド・ヨーロッパ語族比較言語学進展に伴ってこの言語を用いる地域の各神話が研究され、もっぱら言語学的要素を重視した神話研究が進展した[2]

E.B.タイラーの解釈では、神話とは、人智の及ばぬ自然の法である自然現象を文章として説明する試みだったと言い、それはやがてアニミズムに繋がる無生物に霊魂を見出す[63]古代人の試みと考えられた[64]。テイラーは、このような人間の思考が様々な段階を踏んで神話的な解釈から科学的な考察へ進歩したと主張した。これにはあまり同調する学者はおらず、リュシアン・レヴィ=ブリュールは「原始的な知性というものは人の精神状態そのものであり、歴史的な発展をする段階などではない」と反駁した[65]

フリードリヒ・マックス・ミュラーは神話を「言語疾病」[63]と呼び、抽象的表現や中性的に捉える概念が言語上で充分に発達していなかったために創られた、そのため擬人的な何かに語らせたり、自然現象そのものを神のような意思を持つ存在と認識するような手段で概念を捉え言語化したと考えた[41]。ただし今日では、この理論はあまり重要視されていない[2]

人類学者のジェームズ・フレイザーは、神話とはそもそも自然の法則を誤訳した魔術的な儀式をさらに誤って解釈したものとみなした[66]。彼は、人間は不可思議な事象を客観的な魔術的法則とみなし、それが願望を聞き届けるような性格ではないと判ると自然法則とみなすことを諦め、なにかしらの神が自然を制御していると思うようになり、それが神話への傾倒に繋がったと主張した。この過程において、伝統的に行われてきた儀式を神話の出来事の再現する行動だと再解釈して続けるようになるとも述べた。しかし最終的に人類は、自然とは自然の法則に従っているのだと認識し、そして科学を通じてその法則を見つけるようになり、神話は時代遅れなものへと押しやられてゆくと言い、フレイザーはこの一連の過程を「魔法に発し、宗教を通じて科学へ至る」と表現した[49]。また彼は世界中に数ある神話の部分類似点に着目し、進化論的な普遍化を施した。ただしこれは強引な手法との批判がなされた[2]

この頃には、科学の発展に伴って神話は近代科学思想の洗礼を受けざるを得なくなった。その結果、神話はそれ自体の信憑性を失うことになった[67]。19世紀後半には社会文化的進化論を基礎に置き、神話は未開状態の習俗から発生したものとみなすアンドルー・ラングなどが現れた[2]
20世紀の理論

20世紀に入ると、前世紀の神話研究における主要な考えであった神話と科学の対立という見方は否定された。一般に、「20世紀の理論は、神話を時代遅れの疑似科学とはみなさない傾向にあり、科学を理由に神話を無視するようなことはしない」と述べてられている[67]。神話研究にも構造主義人類学や心理学からのアプローチが行われた[2]。この潮流は、レオ・フロベニウスなどドイツの民族学者たちが世界中の神話を収集し、分布や文化史上の意義を定めたことが貢献した[2]
民族学的考察

神話収集に寄与した、ドイツの民族学者らは前時代的解釈に縛られていたが、これを進める役割をアードルフ・イェンゼンが担った。彼は農作物の始原を語る神話の一種「ハイヌヴェレ型神話」と初期栽培民文化の関連性に、さらに儀礼のタイプを考慮に加えてひとつの一貫した世界像を洗い出した。この世界像を基礎に据えて初めて、各神話や儀礼を正確に解釈できるとイェンゼンは主張した[2]

ヘルマン・バウマンは、イェンゼンと逆の手法で神話を解釈した。彼は各創世神話に見られる宇宙観に着目した。このような世界観を構築するには、それぞれの文化がある程度発達していなければならず、バウマンは過去の研究者が未開状態の人類が創った神話から順を追ったのに対し、高い文化社会の神話を分析の対象とした。これによって、高文化地域の神話が周辺の未開社会へ影響を与えることが明らかとなった[2]
心理学的考察

スイスの心理学者カール・グスタフ・ユングを筆頭に、世界の神話には背景に心理学的なものがあるという考えを置いた理解も進んだ。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:98 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef