神話
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神話は一般的に、世界が現在の形をなす前の根源的な時代のことを描写し[17]、そこで世界がどのようにして今の有り様となったか[8][9][10][24]、そしてさまざまな習慣や社会組織、さらに禁忌がどうして成り立ったかを説明する[17][24]
伝説・昔話

神話はストーリーを持つ物語の形式で、人間を取り巻く様々なものについての過去の出来事を語る。このようなモチーフは伝説昔話でも扱われるが、これらと神話とは密接に関連するものの学問用語として明瞭に区分されている[2][25]

神話は始原的な出来事を伝えるものに対し、伝説・昔話は過去のある時点の出来事について語られる。また、単一の事象を伝える点では神話と伝説は似ており、伝説は神話同様真実を伝える物語と受け取られるが[17]、基本的に固有名詞を持つ人物を主人公とし、その活躍した場所も限定され、時代も世界がほぼ現在のように様相が固まった後を舞台とする[17]ため歴史的記載に近く、神話のような広い対象の根源になるものではなく、神聖的性格も帯びてもいない[2]。主人公も神話のような神や超人ではなく、あくまで人間が主役となっている[17]

昔話は異なる時と場所で何度か起こった出来事の典型を表す話であり、真実を表現したものではないか、もしくは神聖な物語ではないものと認識される[2][17]。例えば『桃太郎』も、退治はどこでも起こりうる争乱の数ある一つと捉えることが出来るため、神話とも伝説とも異なる性格を持つ[2]

神話・昔話・伝説の3つは伝統的な古い説話を区分する手段に用いられる[26]が、これを物語る各文化では必ずしも厳密な線引きが出来ている訳ではない[2][27]。文化圏によっては神話と伝説に明瞭な差異を持っていないところもあれば[28]、ひとつの同じ説話についても、ある集団はそれを真実と捉えてそれゆえ神話と考え、別の集団は虚構と捉えてそれは昔話と考えるような場合もある[29][30]。神話が宗教の一部に組み込まれたような状態では昔話的な特徴が強調されて、登場人物も人間の英雄や巨人妖精などへ再解釈されてしまう[18]

ただし神話・昔話・伝説は伝統的な古い説話を分類するほんの一部分でしかなく、これら以外にも逸話ジョークのようなものもある[26]。さらには古い説話そのものも民俗学の一分野でしかなく、他にも舞踊や伝統装束、音楽など多岐に渡る[30]
神話の起源インド神話の女神カーリー。松村は、男性側観念から見た女性の暗い面としてドゥルガーから分離したものとみなす[31]。沖田瑞穂の「インドの女神小事典」には、もともと別個の神格であったとの考えが示される[32]
父権制の成立と神話

神話と墳墓シンボルとの関係を調べたJ・J・バッハオーフェンは、20世紀以降に科学的見地から乱婚母権制といった古代社会に対する見方を批判されることになるが、1861年の著作『母権制』にて神話は母権制社会が父権制へ変遷する過程で構築されたと論説した。その段階を、初期の乱婚制母系社会から一夫一妻制を経て大地母神デーメーテール型の母権へと変わり、やがて古代ギリシアローマを典型とする父権優位型神話体系が成立したと述べた[33][34]。これは根底に、母親は自ずと母親たりえるが、父親がアイデンティティを持つには説明が不可欠で、この説明のために神話が創られたとしている[35]

神話学者の松村一男によると、この背景が影響して神話の女神女性に見られる性質には、男性側の観念を反映した要素がある。ひとつはギリシアのアルテミスやインドのドゥルガーのような豊穣がある。ただしそこには、単に恵みをもたらすのみならず、全てを呑み込むような過剰な部分も併せ持つ[31]。他にも処女母親という相反する性質の同居があり、日本のアマテラス、ギリシアのアテーナー、そしてキリスト教聖母マリアらがこの例に当たる。これらは男性が女性に抱く理想[36]を反映し、後に難解な理論づけをしたものという[31]
エウヘメリズム詳細は「エウヘメリズム」を参照

ひとつの理論として、神話とは歴史的な出来事が歪められて説明されたものという考えがある[37][38][39]。これによると、語り部が歴史的な出来事を繰り返し何度も詳述するうちに、登場人物が神格化され神話が成立したという[38][39]。例えば、の神アイオロスの神話は、ある王が臣下にを使い風を読むよう命令した故事が発展したものという解釈がある[38]。紀元前5世紀のヘロドトスプロディコスも同様の主張をしており[39]、このような考え方は紀元前320年頃の小説家で、ギリシア神話の神々は人間の伝説が変化したものと主張したエウヘメロス(en)にちなみエウヘメリズムという[39][40]
寓話

神話は寓話を元にしているという説がある。それによると、アポローンポセイドーンといった具合に自然現象を扱う寓話が神話に変化したという[39]。また哲学的概念や的概念を表す寓話を元にした神話もあり、例えばアテーナーは賢明な判断、アプロディーテー願望を示すという[39]。19世紀のサンスクリット文献学者フリードリヒ・マックス・ミュラーは神話の寓話的理論を纏め、当初神話は自然を語る寓話として形成されたが、やがて文字通りに解釈するようになったと主張した。例えば、「raging」という表現は元々はが「荒れ狂う」ことを表現していたが、これがやがてを司る神の「激怒する」性格を現すようになったと言う[41]
擬人化

いくつかの考察によれば、神話無生物や力の擬人化という説もある。それによれば、古代の崇拝は炎や空気などの自然現象に向けられ、徐々にこの信仰対象が神に変化したという[42]


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