神経
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スペインサンティアゴ・ラモン・イ・カハールはこの方法を利用し、1887年にニューロンを発見した[4]。しかしシナプス間隙は光学顕微鏡では観察されない狭さだったために、1906年に二人がノーベル賞を授けられた時点では、神経全てが網目を作って一体性をなすというゴルジの考え(網状説)と、神経は多数のニューロン単位から構成されるというラモン・イ・カハールの考え(ニューロン説)が対立していた[5](ニューロンという名称を提案したのはドイツのハインリヒ・フォン・ワルダイエルである[6])。電子顕微鏡によって神経細胞の間にシナプス間隙がみつかり、ニューロン説の正しさが証明されたのは、1955年になってからである。
伝導と伝達

一つの神経細胞内を膜電位の変化により情報が運ばれることを「伝導」、軸索末端に達した電気的変化が細胞膜の微細構造的変化(開口分泌)を起こして、特有な物質が放出されて情報が運ばれることを「伝達」と呼んでいる。フランスのルイ=アントワーヌ・ランヴィエは、軸索を取り巻く髄鞘に切れ目があること(ランヴィエの絞輪)に着目し、髄鞘が絶縁体となっていることを示唆した(1878年)。このことをカエルの単一神経線維を使って実験し、跳躍伝導を初めて記録したのは日本の田崎一二1939年)であった。そして1952年、この電気的興奮が、細胞膜内外のナトリウムイオンとカリウムイオンの濃度勾配の変化(活動電位)によって生じることを示したのは、イギリスアラン・ロイド・ホジキンアンドリュー・フィールディング・ハクスリーである。

ニューロン間の伝達が実際に化学的物質の放出を含む現象であることは、オットー・レーヴィ1924年)が二つのカエル心臓の一方のみの迷走神経を刺激して証明した。この事実から、神経と内分泌調節が特定の化学物質を介した共通点を持つことが理解されるようになり、後年「神経分泌」現象の認知に道が開かれることになった。
分類

神経を分類するには、構造的・機能的な観点によるが、一長一短がある。上にあげた中枢と末梢の名称は完全に構造的な区別によるもので、これをさらに推し進めると、脳神経脊髄神経のように、どの部分から神経が出ているかの細分に続く。しかし中枢と末梢は実際には切れ目なく続いている。

機能的には、運動神経(体性および内臓)と感覚神経(体性および内臓知覚)に大別されるが、内臓の運動・知覚に関係するものは、自律神経としてまとめられ、さらに自律神経は交感神経副交感神経とに分けられる。また体性運動・知覚に関するものを「動物神経系」、内臓運動・知覚に関するものを「植物神経系」としてまとめることも行われる。しかし一本の末梢神経を例に取っても、純粋に一つの機能を持った神経が束ねられたものは少なく、機能的に異なる神経が混在することから、神経の分類の困難さが分かる。
神経系の特徴

内分泌を通じた情報伝達に比較して、
目的の領域だけに極微量の伝達物質が作用するので、作用は限局的である

シナプス間隙には、伝達物質を分解する酵素が存在する

伝達速度が非常に速く、効果は短時間で終わるために、刺激は短時間に反復可能となる

という上記のことから、神経が短時間で微細な調節を担うことがわかるであろう。
脚注[脚注の使い方]
出典^ 福武敏夫 (2018年8月6日). “脳と神経”. www.igaku-shoin.co.jp. 医学界新聞. 医学書院. 2021年7月3日閲覧。
^ 「人間のための一般生物学」p63 武村政春 裳華房 2010年3月10日第3版第1刷
^ 「人間のための一般生物学」p61 武村政春 裳華房 2010年3月10日第3版第1刷
^ 「科学は歴史をどう変えてきたか その力・証拠・情熱」p266-267 マイケル・モーズリー&ジョン・リンチ著 久芳清彦訳 東京書籍 2011年8月22日第1刷
^ 「科学は歴史をどう変えてきたか その力・証拠・情熱」p267 マイケル・モーズリー&ジョン・リンチ著 久芳清彦訳 東京書籍 2011年8月22日第1刷
^ 「知の最先端」p28 VALIS DEUX編著 日本実業出版社 1998年2月28日初版発行

参考文献

久野宗「ニューロンとは」『脳・神経の科学T』岩波講座 現代医学の基礎6、岩波書店、1998年、
ISBN 4000109162

関連項目

神経腫瘍
(英語版) - 神経の組織が腫瘍となったもので俗に神経腫とも呼ばれる。様々な種類のものがあるが、ほとんどは良性腫瘍であることが判明している。

外部リンク

神経細胞とシグナル伝達
(ビジュアル生理学 内の項目)

有髄線維 - 脳科学辞典

『神経』 - コトバンク

典拠管理データベース
国立図書館

日本

その他

Terminologia Anatomica


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