神戸空港
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関西エアポート神戸の山谷佳之社長は「地方路線を運航したい航空会社を全力で支援する」と述べ、都心に近い神戸空港の優位性を生かし神戸空港の地方路線を拡充させる意向を明らかにした[37]。着陸料等の料金施策は、当初は現行維持を原則とするが、将来的には使用機材と重量による料金体系の見直しや、インセンティブ制度の導入を検討する[36]。また、旅客数は2022年度で300万人とする目標数値を市に提案していたが、運営権売却前の2017年度に前倒しで300万人を突破した。
規制緩和

神戸市は、運営権売却前から規制緩和の働きかけを国に行い続けていたが実現せず、運営権売却を機に関西政財界全体で規制緩和を働きかける動きが広まった。スカイマークの佐山展生会長は「規制緩和されると関西の窓口は神戸になる」と述べ、運用時間が24時間に伸びた場合「大阪国際空港や新幹線と比べて夜間の遅い時間帯に東京-関西を移動でき便利になる」と、規制緩和に期待感を示した[38]。また、吉村洋文大阪市長も2017年7月26日、「足を引っ張るのでなく、規制緩和でお互いを伸ばすべき」として神戸空港の国際化、24時間化に言及した[39]。規制緩和に向けては、運用規制を定めた「関西3空港懇談会(3空港懇)」で議論が必要であるが、2010年4月を最後に開催されておらず、井戸敏三兵庫県知事や松井一郎大阪府知事をはじめ関係者が早期開催を要望していた。

2017年7月、懇談会の座長である関西経済連合会の松本正義会長は運用時間規制などの規制緩和に向けた検討を進める意向を明らかにした[40]。当初規制緩和などには慎重な考えであった同氏だが、同年11月28日には「規制緩和は絶対にやる必要がある」と述べ、2018年中に懇談会を再開させる方針を表明[41]するなど、規制緩和へ機運が高まっていた。

このような中、2018年9月4日に接近・上陸した平成30年台風第21号により、関西国際空港で甚大な被害を被った。1期島のほぼ全域が冠水し、浸水に伴い空港内で停電が発生、さらに関西国際空港連絡橋にタンカーが衝突し空港機能は完全マヒ、数日間閉鎖される事態に陥った。9月5日深夜3時、空港内から出られなくなった空港職員や乗客を対象に、神戸-関西ベイ・シャトルの高速船を利用した関西国際空港→神戸空港の高速船輸送を開始すると発表[42]、早朝6時より15分?20分間隔の高頻度で乗客を無料輸送した。当時は完全に交通機関が寸断されており、関西国際空港から最初に人々を運んだ交通機関となった[43]。その後も9月14日の関空第1ターミナル一部再開に伴い、25日まで定期便に加えて1日最大12往復の臨時便を運航した[44][45]

発災直後は関空の復旧目途が全く立っておらず、9月6日には関空機能を神戸空港・伊丹空港で代替できるよう調整に乗り出した[46]。9月10日には国土交通省が市に対し協力依頼を要請し、12日より市が協力受け入れを回答する形で代替受け入れが正式に決定した[47][48]。国交省からの要請として国際線を含めた1日30便の増便を受け入れ、このほかに松井一郎大阪府知事の要請として運用時間の2時間拡大(7時-22時→6時-23時)に対応する用意があるとした。これをうけ、ターミナルビル1階東側に国内線と国際線の動線を分ける仕切りを設置し、機材置き場を確保するなどの国際線受け入れの準備が整えられたほか、深夜早朝を含めた臨時増便に備え、ポートライナーを運行する神戸新交通はダイヤ改正を検討し代替受け入れの体制を整えた[49]。9月16日・17日には全日本空輸 (ANA) の羽田臨時便4便が運航された[50][注 3]。なお、関空の復旧作業が急ピッチで進められたことから、9月21日にはほぼ通常通りの旅客便に戻り、10月11日に代替措置は終了した[51]ため、実際に国際線を受け入れることは無く終了した。しかし、関空に依存する危機管理上のリスクも表面化されたことから、これを機にリスク分散がさらに強く訴えられ、規制緩和に向けての動きが加速することとなった。

2018年末に関西3空港懇談会が8年ぶりに再開され[52]、出席した井戸敏三兵庫県知事は夜2時間、早朝1時間の延長と、1日120便の拡大、国際チャーター便の就航を要望した[53]。翌年の2019年5月11日の第9回関西3空港懇談会においては、3空港の方針が取りまとめられ正式に合意された[54][55][56]。神戸空港の役割はあくまで関西空港・伊丹空港を補完する機能のままとしながらも、長年実現しなかった規制緩和や国際線を検討する内容が盛り込まれた取りまとめとなっている。概要は以下の通り。

2021年頃までの短期の視点に立った取組

国内線発着枠の段階的拡大(最大発着回数60回→80回/日)

運用時間を段階的に拡大(運用時間を22時→23時まで延長)

空港アクセス強化の検討

国際プライベートジェットの受入推進(必要なCIQ体制整備等についての関係省庁への協力要請等)

3空港の災害対応力向上、発災時の3空港相互支援体制などの整備


2025年頃までの中期の視点に立った取組

国際化を含む空港機能のあり方の検討

これまでの3空港懇は国土交通省側からの働きかけで開催されていたものであるが、今回初めて関西経済連合から開催を求めており、今後も適宜(原則年1回程度)継続開催するとされていることから、定期的な運用に改められていることがポイントである。懇親会の座長を務める関西経済連合会の松本正義会長は、国際化に関して「ただの検討ではない」として実現に向けての検討を強調しているが[57]、あわせて国際線就航に向けてのターミナルビル拡張やアクセス強化を条件として求めている。なお取りまとめに対しては、久元喜造神戸市長は「関係者の皆さまに感謝したい」と回答し空港アクセスの増強や新ターミナルの建設に向けて検討を急ぐ姿勢を示した[58]。井戸敏三兵庫県知事は「緩和の方向性が明確になったことを評価したい」としつつ「満額回答ではない、値切られた」とし、発着枠拡大分が20便にとどまったことに不満を示した[58]。また、懇談会では仁坂吉伸和歌山県知事が強く反発する場面もあったといい、地域間の利害の不一致が結果に影響した可能性があるとしている[58]

発着枠の拡大を受けて、スカイマークは7月5日に那覇、長崎、茨城の各路線で増便を実施することを発表[59]。同日に合同記者会見を行ったフジドリームエアラインズも新規就航を検討していると明らかにした[60]。8月1日にスカイマークの増便が実施され、3空港懇から3か月足らずで初の規制緩和運用がスタートした[61]


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