社会選択理論
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

[要出典]例えば経済学者ポール・サミュエルソンはアローの一般可能性定理に対するコメントにおいて、アローの研究は数理政治学(mathematical politics)に対して大きな貢献をなしたと認めている[要出典][1]。実際に実証政治理論(positive political theory)と呼ばれる、社会選択理論を摂取した分野が1960年代に確立された。この実証政治理論の中心的な担い手は、ロチェスター大学政治学部の教授を長年務めたウィリアム・ライカーとその門下生であった。ライカー達は自己の効用を最大にするという行動原理に基づいて形成された個人の選好から、個人の集合体としての社会の決定を導くプロセスとして政治を捉えた。このような特徴を持つ政治を分析するための道具としてライカーらは社会選択理論とゲーム理論を中心に据え、この二つを核に実証政治理論を確立した。[要出典][2]。しかし、主流派の政治学においては社会学の影響が強く、主に経済学から発展した社会選択理論は必ずしも高い評価を得ていない。[要出典]従来の政治学は利益団体など集団を基礎に政治過程を捉えてきたが、その方法論は個人を分析の基礎とする、すなわち方法論的個人主義に依拠する社会選択理論ないしは実証政治理論とは全く異なるものであったからだ。従って実証政治理論の政治学に占める地位も、当初はごく小さいものであり、実証政治理論は異端視されていたと言ってよい状況にあった。[3]。また実証政治理論の研究者たちは、その初期の段階において抽象的な理論的研究に力を入れてきた[4]。このことも実証政治理論が異端視される要因となったと考えられる。しかし1980年代以降、実証政治理論やその基礎となる社会選択理論の有意性は認められることとなった。その契機となったのはアメリカ連邦議会研究に代表される、実証政治理論による政治過程の実証的な分析の本格化であった。現在では実証政治理論は政治学における最も有力な分析手法の一つである[要出典][5]
脚注^ Samuelson(1967)[要文献特定詳細情報]
^ 個人の選好を分析の出発点とし、その選好は各個人の効用関数が反映されたものであると考える実証政治理論は、次の二つのことを基本的な仮定としている。第一に政治現象を個人の相互作用の帰結と捉えることである。これは個人の選択・行動の分析の焦点を当て、個人のレヴェルから分析を積み上げるものである。すなわち実証政治理論は方法論的個人主義に基づく理論である。第二に各個人はそれぞれ自己の効用を最大化しようと行動すると仮定することである。つまり実証政治理論は個人の合理性を仮定している。方法論的個人主義と個人の合理性の仮定に基づく分析視角を、政治学では合理的選択理論と呼んでいる。実証政治理論もこの合理的選択理論に分類される。[要出典]
^ 例えばこの状況を裏付けるエピソードとして、ロチェスターで博士号(Ph.D.)を得た研究者の就職状況が挙げられる。彼らはアイビーリーグを筆頭とした政治学の研究の盛んな名門校に就職することは出来なかった。彼らの就職先はカリフォルニア工科大学カーネギーメロン大学など自然科学に重点を置いていた大学、或いは社会科学に関しては新興勢力であった大学に限られていた。その後実証政治理論を含む合理的選択理論が台頭するに連れて、これらの大学の政治学もしくは社会科学部門は高い評価を得るようになる。それだけにとどまらず、実証政治理論を専攻した研究者たちがハーヴァード大学スタンフォード大学プリンストン大学などのメジャーな名門校に職を得る結果をもたらした。[要出典]
^ その代表的な成果がリチャード・マッケルヴィーによるマッケルヴィーの定理の発見であった。マッケルヴィーの定理は一般に争点次元が二次元以上となる場合の決定はかなり不安定で、決定に参与する或る個人が議事操作を行って自分の望む結果を実現することが可能であることを示している。
^ 政治学における最も権威ある学術誌の一つAmerican Political Science Review(APSR)に掲載される論文の約40%は実証政治理論を含む合理的選択理論に基づくものであると言われている。[誰?]

参考文献

Kenneth Arrow: Social Choice and Individual Values,
ISBN 0300013647 ケネス・J・アロー(長名寛明訳)『社会的選択と個人的評価』日本経済新聞社, 1977

Austen-Smith, David; Banks, Jeffrey S. (1999). Positive political theory I: collective preference. Ann Arbor: University of Michigan Press. .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 0-472-10480-2 

ジョン・クラーヴェン(富山慶典・金井雅之訳): 『社会的選択理論』勁草書房, 2005, ISBN 4326502665

A. M. フェルドマン; R. セラーノ『厚生経済学と社会選択論』シーエーピー出版、2009年。ISBN 978-4916092908。 

Gaertner, Wulf (2006). A primer in social choice theory. Oxford: Oxford University Press. ISBN 0-19-929751-7 

Moulin, Herve (1988). Axioms of cooperative decision making. Cambridge: Cambridge University Press. ISBN 0-521-42458-5 

Nitzan, Shmuel (2010). Collective Preference and Choice. Cambridge, UK: Cambridge University Press. ISBN 0-521-72213-6 

Amartya Sen: Collective Choice and Social Welfare, ISBN 0050024345 アマルティア・セン(志田基与師監訳)『集合的選択と社会的厚生』勁草書房, 2000

Suzumura, K?tar?; Arrow, Kenneth Joseph; Sen, Amartya Kumar (2002). Handbook of social choice and welfare, vol 1. Amsterdam, Netherlands: Elsevier. ISBN 978-0-444-82914-6  Kenneth J. Arrow, Amartya K. Sen, Kotaro Suzumura 編 (2006). 社会的選択と厚生経済学ハンドブック, Vol 1. 鈴村興太郎・須賀晃一・中村慎助・廣川みどり監訳, 丸善.

Taylor, Alan D. (2005). Social choice and the mathematics of manipulation. New York: Cambridge University Press. ISBN 0-521-00883-2 

鈴村興太郎『厚生経済学の基礎: 合理的選択と社会的評価』岩波書店、2009年。ISBN 978-4000099165。 

宇佐美誠: 『社会科学の理論とモデル4 決定』東京大学出版会, 2000, ISBN 4130341340

佐伯胖: 『きめ方の論理―社会的決定理論への招待』東京大学出版会, 1980, ISBN 4130430173

坂井豊貴:『多数決を疑う――社会的選択理論とは何か』岩波書店、2015年 ISBN 4004315417

次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:32 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef