上記より以前に、2009年の豚インフルエンザの流行時に、世界保健機関 (WHO) は社会距離拡大戦略のことを「他の人から少なくとも腕1つ分の距離を保ち、人が集まることを最小限に抑えること」と表現した[22]。社会距離拡大戦略は、良好な呼吸器官の衛生策や手洗いと組み合わせて用いられるものであり、パンデミックを規模を縮小したり遅らせたりするのに現実的に最も実現性の高い方策と考えられている[22]。 社会距離拡大戦略は、咳やくしゃみなどで飛沫感染する感染症の場合に最も効果的である。性的接触を含む直接的な身体的接触による感染や、間接的な物理的接触による感染、または空気感染する場合にも効果的である[34]。 しかし、感染が主に汚染された水や食物を介して、または蚊や他の昆虫などの媒介者によって伝染する場合、社会距離拡大戦略はあまり効果的ではない[35]。 この戦略の欠点としては、不安・抑うつ・フラストレーション、もしくはスティグマ化といった心理的・社会的問題が発生することが挙げられる[9]。
効果
具体例「流行曲線の平坦化(英語版
病気が社会の中を循環しているということが認知されれば、人々が公共の場や他の人から離れていることを選択するという行動変容(英語版)のきっかけとなる可能性がある。社会距離の拡大策が伝染病のコントロールのために実施される場合、便益をもたらしうる一方で経済的コストを伴う。社会距離の拡大策が有効に機能するためには、対策を即座に厳格に適用しなければならないことを、研究結果は示している。[39] 伝染病の拡大抑制を目的とした社会距離の拡大策がいくつか実施されている[4][24][26]。
身体的接触の回避社会距離の拡大には、典型的には握手・ハグ・ホンギ (マオリ族で用いられる、鼻と鼻、額と額を触れ合う挨拶) の時に起こるような、身体的接触を行わない、ということが含まれる。
互いに最低2メートルの距離を取り、直接身体を触れ合うようなハグやジェスチャーを行わないことによって、インフルエンザのパンデミック(広範囲の流行)や2020年のコロナウイルスのパンデミックのような感染症の感染リスクが減少する。[4][40] 個人で衛生上の予防策を取ったうえで、上記の離隔距離を保つことは、職場においてもまた推奨されている。[41] 可能であれば、テレワークが推奨される場合もある。[23]
握手という伝統に替わるような様々な方法が提案されている。手のひらと手のひらを合わせ、指を上に向け、その手を心臓のところに引きつける、ナマステのジェスチャーは、身体的接触を伴わない代替手段のひとつである。2020年におけるイギリスのコロナウイルス感染症の流行時にチャールズ3世(当時皇太子)がレセプションでの来賓との挨拶にこのジェスチャーを使い、世界保健機関 (WHO) のテドロス・アダノム・ゲブレイェソス事務局長やイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がこのナマステのジェスチャーを用いることを推奨している。