社会性昆虫
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地球全体で考えても、昆虫の種数の2%でしかない社会性昆虫は、現存量では半分を占めるとの推定がある[5]

そのため、これらの昆虫の自然界における役割は非常に大きい。ハナバチ類は顕花植物送粉者として、カリバチ類は昆虫類の捕食者として、シロアリ類は特に熱帯域で植物遺体の分解者として大きな役割を果たしている。アリ類は食性や生活の多様性が高く、小動物の捕食、種子分散、他の生物との共生、土壌の改良など様々な面を持っている[6]
超個体

社会性昆虫においては、その構成員が互いに依存して生活し、単独の個体での生存が考えがたいこと、また生殖するのがその中の単独の個体であり、繁殖する場合、新しい群れを作る形で行われることなどから、群れを一つの個体に当たると見なし、これを超個体と呼ぶ場合がある。この考えを最初に提唱したのはアリの研究家であったウィリアム・モートン・ホイーラー(英語版) で、彼は社会性昆虫全般について集大成した。彼は、これらの昆虫の群れを超有機体(superorganism)と呼んだ。今西錦司は雄蜂の存在を無視しているなどとこれを批判しつつも、やはり群れを一つの個体に当たる単位と見なしている[7]
様々な社会性昆虫
ハチの社会

ハチ目アリを含む。アリはハチ目アリ科に属し、分類学上はハチに含まれる)には、社会性のものから亜社会性のもの、単独生活のものまで、様々である。古典的に社会性昆虫と言われるのは、アリ類、アシナガバチ類、スズメバチ類、ミツバチ類などに見られる。

社会性のハチとアリの社会は、雌のみで運営されている。この仲間は、受精卵からは雌、未受精卵からは雄が生まれる。女王は雄と交尾の後、単独で巣を作る。雄バチは女王と交尾した後に死亡し、巣作りには関わらない。産まれた卵からかえった幼虫を育てながら産卵を繰り返す。幼虫は成長して羽化すると働きバチとなり、巣に残って女王を助け、子守や餌運び、巣作りをし、自らは繁殖しない。ほとんどのハチでは、秋になると女王と雄バチが生まれ、それらは巣から飛び出して交尾ののち、女王は越冬するが、それ以外のハチは死滅する。従って、多くの蜂の巣は1年限りである(ミツバチとアリは複数年にわたって巣を作るものもある)。

アリは、すべてが原則的には社会性昆虫である。例外的に、たとえばアミメアリは女王が存在しない亜社会性であるが、これも二次的なものと考えられている[8]。一部のアリでは、大顎の発達した兵隊アリが分化する。
シロアリの社会

シロアリはすべてが社会性である。シロアリは巣から羽アリが飛び出し、交尾すると、雄雌ペアになって巣を作る。雌雄は王、女王となり、交尾、産卵を繰り返す。生まれた子供は親と同じ姿で、ある程度成長すれば働き蟻として、王、女王を助け、巣を作るなどの作業を行う。子供は雌雄両方があり、それらは成長してゆくにつれ、一部のものが兵隊アリに分化する。兵隊アリは繁殖をしない。残りの働き蟻は、その一部が羽アリとなって巣外へ出て行く。シロアリの群れの多くは年を越して維持される。
群れの運営

社会性昆虫の多くでは、生殖虫(ハチの女王、シロアリの王と女王)は最終的に繁殖のみを行い、それ以外のすべての作業はワーカー(働き蜂や働き蟻)が行う。ただし、生殖虫のみが越冬できるスズメバチなどでは、巣の初期には生殖虫が巣造りから食糧調達まですべて行い、ワーカーが羽化してからは巣に留まって繁殖に専従するようになる。シロアリでは、巣がそもそも餌である材木内に作られるものもあるが、熱帯地方では巣外に餌を求めるものも多い。そのような場合、多数の個体が同一の餌場に出かけ、巣に戻るのには目印として足跡フェロモンを使う例が多い。ミツバチでは、餌の位置を他個体に知らせるために8の字ダンスを踊ることが知られている。

ワーカーの役割としては餌運びの他に、巣の維持管理や幼虫や生殖虫の世話などがある。

生殖個体が巣に1個体(あるいは1ペア)である種では、生殖虫が死亡した場合、巣内の幼虫から生殖虫の候補が出現する例があり、補充生殖虫などと呼ばれる。それらのうちの1個体が新たな生殖虫となると、他のものは殺される。これは、生殖虫がフェロモンを出し、自分以外の生殖虫の出現を抑制しているものである。これらの昆虫の多くでは、口移しに餌を与えあったりする行動が日常的に行われ、それによってフェロモンの伝搬も行われているらしい。なお、トビイロシワアリのように、多雌性(コロニー内にもともと生殖個体が複数居る)かつ多巣性で数万?数十万の大規模なコロニーをつくる種類もある。
社会性の進化詳細は「社会生物学」および「血縁選択説」を参照

社会性昆虫の扱いについては、チャールズ・ダーウィン自身がその説明に困っていた。働きバチは子を産まず、子を産まなければその形質が子孫に伝わらないからである。

これを説明する方法として、まず考えられたのが、“女王による操作”説である。これは、女王がフェロモンで子供を働きバチにしている、その方が子育てがしやすく、多くの子を残せるからで、この、“自分の子を働きバチにする”という形質が女王を通じて選択されたのだ、とする考え方である。しかし、この説では、働きバチの方で反乱を起こす可能性が否定できない。つまり、働きバチの方に、女王の支配を受け付けないような突然変異が起きたとすれば、勝手に自分の子をもうけるのを止められないわけである。

この状況を打破したのが、ハミルトンによる血縁選択説である。この説は、まず、自然選択において、選択されるのが個体ではなく、個体の持つ表現形であるという発想から始まる。ある個体が生き延びたのは、ある性質を持っていたからで、その性質の元になる遺伝子が選ばれたのだと考えるのである。


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