社会主義(しゃかいしゅぎ、英語: Socialism〈ソーシャリズム〉)は、資本主義・市場経済の弊害に反対し、より平等で公正な社会を目指す思想・運動・体制を指す用語[1]で、社会主義は、生産手段の社会的所有を特徴とし、さまざまな経済および社会システムを包含する政治哲学および運動である。広義には、社会を組織化することにより人々を支える制度であり、歴史的には空想的社会主義・社会改良主義・社会民主主義・無政府主義・サンディカリズム・共産主義などが含まれる[注 1]。狭義には資本主義・個人主義・自由主義・私有制などの対語として冷戦時代から使用されている。社会主義と共産主義はほぼ同義の意味として扱われることもある[3]。 「社会」の語源はラテン語の「socius」(友人、同盟国などの意味)である。「社会主義」の語の最初の使用は諸説あるが、「自由、平等、友愛」の語を普及させたピエール・ルルーが1832年に「personnalite」(これはフランス語で、個人化、個別化、パーソナライズなどの意味)の対比語として記した「socialisme」(これはフランス語で、直訳では「社会化する主義」、社会主義)が最初とも言われており[1]、ルルーは1834年には「個人主義と社会主義」と題した文書を発行した。他には1827年のアンリ・ド・サン=シモンなどの説があるが、いずれもフランス革命の流れの中で発生した。「社会主義」の語は、後の近代的な意味では色々な主張により使用された[1]。 「社会主義」にはさまざまな定義や潮流がある。狭義には、生産手段の社会的共有と管理を目指す共産主義、特にマルクス主義とその潮流を指す。広義には各種の社会改良主義、社会民主主義、無政府共産主義、国家社会主義、国家共産主義なども含めた総称である。 歴史的には、市民革命によって市民が基本的人権など政治的な自由と平等を獲得したが、資本主義の進展により少数の資本家と大多数の労働者などの貧富の差が拡大して固定化し、労働者の生活は困窮し社会不安が拡大したため、労働者階級を含めた経済的な平等と権利を主張したものとされる。市民革命と社会主義運動は、啓蒙思想と近代化では共通であるが、初期の資本主義が経済的には自由放任主義(夜警国家)を主張したのに対し、社会主義は市場経済の制限や廃止、計画経済、社会保障、福祉国家などを主張する。 なお、社会主義を含む19世紀の社会改革運動は、生活環境改善などの物質的な側面だけでなく、理想社会(世俗的千年王国)の建設という主題を含む精神運動でもあり、同じ主題を持つ精神運動であった心霊主義と当初から密接な関係を持っていた[4][5]。 第一次世界大戦後にロシア革命が起こり、世界最初の社会主義国であるソ連が誕生した。第二次世界大戦後は社会主義陣営と自由主義陣営の間で冷戦や、朝鮮戦争、ベトナム戦争などの代理戦争が続いた。西側諸国内でも資本主義勢力と社会主義勢力と社会民主主義勢力の対立が生まれ、東側諸国でもソ連型社会主義と自主管理社会主義の対立、中ソ対立などが起こった。一方で非共産主義諸国でも、西側諸国でのニューディール政策など混合経済化が進んだ。 共産党の一党独裁のもとに中央集権型の官僚制が構築されたソ連型社会主義は、ソ連から東欧、東アジア、中東やアフリカの一部に拡大したが、特にブレジネフ指導体制の成立後は停滞する。1989年には東欧革命が勃発、1991年にはソ連が崩壊し、ソ連型社会主義のイメージは世界的に失墜した。現在、共産党一党支配が続く中華人民共和国やベトナムは市場原理の導入を進め、事実上の混合経済体制を築いており、経済発展が著しい。
用語
概要