磐井の乱
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1970年代半ばになると、継体期前後に国家形成が進展し、大和朝廷が各地域の政治勢力を併合していく過程の中で、磐井の乱が発生したとする研究が鬼頭清明・山尾幸久・吉田晶らによって相次いで発表された。従前、磐井の乱は地方豪族による中央政権への反乱だと考えられていたが、これらの研究は古代国家の形成という点に着目し、乱当時はすでに統一的な中央政権が存在していた訳ではなく、磐井が独自の地域国家を確立しようとしたところ、国土統一を企図するヤマト王権との衝突、すなわち磐井の乱が起こったとした。

1978年に埼玉県の稲荷山古墳から出土した金錯銘鉄剣の発見により、統一的な中央政権の形成時期を5世紀後半までさかのぼらせる議論が有力となっていくと、磐井の乱の意義・位置づけもまた再検討が加えられるようになった。朝鮮半島との関係に着目し、大和朝廷・百済の間で成立した連合に対し、磐井が新羅との連合を通じて自立を図ったとする意見、磐井の乱を継体王朝の動揺の表れとする意見、むしろ継体王朝による地方支配の強化とする意見など、磐井の乱に対する見方は必ずしも一致していない。
磐井の乱は本当に「反乱」だったのか?

磐井の乱が本当に「反乱」だったのかという点については、『日本書紀』の史観によってみるならば、確かに反乱といって良い。

磐井が筑紫国造という地位にあるからである。ヤマト政権下で地方統治を任されたのが国造であり、その地位にある磐井が、新羅に通じ、ヤマト政権に反抗したのであるから、まぎれのない反乱といえる。

だが、国造制の成立をいつと考えるかで、磐井の乱の性格は全く違ったものになってくる。例えば、五世紀後半ごろから施行されていったとする説に従うならば、六世紀前半の段階で磐井が筑紫国造であったと考えることに問題はない。

しかし、最近言われ出した七世紀前半ごろに整備された制度とするならば、磐井は六世紀前半には国造ではなく、九州北部を拠点にしていた地方豪族ということになる。(『日本書紀』では「筑紫国造磐井」と記しているが、『古事記』、『筑後国風土記』は「竺紫君石井」や「筑紫君磐井」としており、ヤマト政権に従属した国造ではなく独立した地方豪族としている。新羅が筑紫国造磐井に賄賂を送って、ヤマト政権に反乱を起こしたというのは『日本書紀』のみが伝える所伝であって、『古事記』、『筑後国風土記』、『三国史記』などの史書からは、ヤマト政権が筑紫君磐井に先制攻撃を仕掛けて征服したことが読み取れる。)つまり、九州の北部を中心に勢力を張り、玄界灘の海上権を支配していた豪族である。ヤマト政権としてみれば、朝鮮半島へのルートとして、九州北部は重要であり、支配下に置くことが出来ない場合には、その地域の豪族たちとの友好関係は不可欠のものであった。

このような友好関係で結ばれていたのが磐井とヤマト政権の実態だとすると、磐井がヤマト政権と対抗するため新羅と手を結んだとしても、それは畿内と九州の氏族がそれぞれの国家形成を目指す戦争であって、反乱とはいえなくなってくるのである[1]
磐井の乱を扱った作品
テレビ番組

題名:英雄たちの選択「スカウトされた大王?地方出身!継体天皇の実像?」

時間:60分(カラー)

放映:2020年4月22日午後8:00?9:00 BSプレミアム/2020年4月29日午前8:00?9:00 BSプレミアム

出演:磯田道史 ほか
アニメ作品

平成25年度日本郵政年賀寄付金の助成を受け、NPO法人科学映像館で磐井の乱のアニメーション作品が配信された。乱の経緯を磐井側から描いている。

題名:筑紫の磐井

時間:30分(カラー)

製作:全国農村映画協会,(株)イージー・フィルム

協力:(株)ぷろだくしょんバオバブ

企画:福岡県八女市

監修:福岡県八女市教育委員会

出演:筑紫の磐井 :銀河万丈

   葛子    :松本保典

   咲花姫   :横尾まり

   新羅人技師 :堀内賢雄

   物部麁鹿火 :笹岡繁蔵

   大伴金村  :西村知道

   男大迹王  :藤本譲

   近江毛野  :大滝進矢

   許勢男人  :喜多川拓郎

   船員    :中博史

   ナレーション:山本博子

スタッフ:

   プロデューサー   :山岸豊吉

   監督・脚本     :萩原敬司

   キャラクターデザイン:本多敏行

   美術設定      :千葉秀雄

   アニメーション原画 :村上勉

   アニメーション動画 :鈴野貴一,照屋裕子,豊里勝彦

   セルワーク・色指定 :照屋美和子

   動画チェック    :金子光隆

   背景        :藤田勉(スタジオWHO)

   撮影        :小山信夫

   編集        :鶴渕允寿

   音響演出      :田中秀行

   音響制作      :大平紀義(E&Mプランニングセンター)

   効果        :伊藤道広(E&M)

   選曲        :栗林秀年(クリプロ)

   録音        :(株)アバコ・クリエイティブ・スタジオ

   現像        :IMAGICA

   タイトル      :アズスタッフ,青木正人,佐伯仁士

   制作進行      :小海雄司
脚注[脚注の使い方]^ 最新古代史論 まほろばの国 ヤマトのあけぼの (歴史群像シリーズ) 2009/4/1学研 P76

関連項目

日本の合戦一覧

筑紫君磐井

大和朝廷

継体天皇

物部麁鹿火

大和国

参考文献

吉村武彦、『継体・欽明朝と「内乱」』「古代史の基礎知識」所載、
角川選書、2005年、ISBN 4047033731

倉本一宏、『大和王権の成立と展開』「新体系日本史1 国家史」所載、山川出版社、2006年、ISBN 4634530104

鬼頭清明、『大王と有力豪族 - 磐井の戦争とは - 』「週刊朝日百科 日本の歴史41 邪馬台国と大王の時代」所載、朝日新聞社、1987年

篠川賢、『磐井の乱』「日本古代史研究事典」所載、東京堂出版、1995年、ISBN 4490103964

水谷千秋、『謎の大王 継体天皇』、文藝春秋、2001年

外部リンク

八女市岩戸山歴史文化交流館 いわいの郷
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